手術
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手術(しゅじゅつ、英Operation)とは、用手的に創傷あるいは疾患を制御する治療法で、生体に侵襲を加えるものをいう。医療関係者間ではドイツ語Operationを省略してオペとも呼ばれる。
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[編集] 手術の目的
手術の目的は、病態の制御および失われた機能の回復である。直接的ではなく間接的に治療に繋がる手術もある。
- 切除する
- 形成する
- 移植する
- 検査する
- 内視鏡や画像診断などの非侵襲的方法で診断が確定できない場合に行われる。
[編集] 手術の適応
近年、医療技術の進歩に伴い、疾患ごとの治療が多様化しているため、患者に対し手術を行うべきかどうかは、外科医のみならずや内科医や関連科の医師も含めて、主に以下の点に対し十分な検討がなされる。手術による治療効果と、手術による身体的負担やリスクを比較し、治療効果が上回らなければ手術は行わないのが原則である。手術が適切と判断したなら、どのような手術が適しているかを検討する。
- 患者の全身状態を含めて手術の適応があるかどうか
- 手術以外の治療法との相対効果はどうか
- どのような手術が適しているか
以上の点が検討され、最終的に患者にその検討結果をすべて伝え、自らの意志で選択してもらう。インフォームド・コンセントの原則により患者自身が納得しない治療は行われない。
[編集] 手術の種類
[編集] 拡大手術と縮小手術
医療技術の発達に伴い、周術期管理は格段の進歩を遂げ、侵襲の大きい手術を比較的安全に行うことが可能になってきた。そのため、治療成績の向上を目的として、手術はこれまで拡大の一途をたどってきた。しかし、近年の臨床研究により、必ずしも拡大手術が治療成績の向上に寄与しないことが明らかになり、拡大手術に対する反省の声が挙がった。またQOL重視の風潮や患者意識の高まりもあり、2004年現在では手術は全体として縮小化の流れにある。
[編集] 低侵襲手術
内視鏡手術や血管内手術を代表とする、従来よりも侵襲の少ない手術のこと。近年の手術用器械の発達はめざましく、従来よりはるかに安全かつ容易に手術が行えるようになった。また、コンピュータの目覚しい発達とともに、コンピュータを手術中に活用するコンピュータ支援外科も登場している。ただし、鏡視下手術に関しては、体表の切開創こそ小さいものの、手術の内容自体は従来の手術とほぼ変わらないため、本当に低侵襲であるかどうかは議論のあるところである。また従来より容易になったとはいえ(すべての手術に言えることではあるが)技術に習熟せず安全な手術ができるわけではなく、未熟な執刀医による医療事故も発生している。
[編集] ポリープ切除術(ポリペクトミー)
ポリペクトミーは、内視鏡手術の一つ。胃や大腸などの太い内視鏡が入る消化管にできるポリープ等の隆起性病変を、内視鏡下に切除する手術である。
[編集] 姑息的手術
根治が望めない病態において、症状の緩和もしくは延命を目的として行う手術をいう。腹腔内のがんによる腸閉塞に対し、食物が通過できるように行うバイパス術などがこれに当たる。
[編集] 単開胸術、単開腹術
治療目的で開胸または開腹したものの、病変が思いの外進行しており手術適応がないと判断されたなど、外科的治療を実施することなく手術を終了したものをいう。
そもそも治療目的でなく、診断を確定するために開胸・開腹する手術は試験的開胸術、開腹術という。直接的にはまったく治療目的はなく、外科的治療を行うことなく手術を終了することもある。
[編集] 手術の流れ
[編集] 術前管理
手術前には十分な全身管理が必要となってくる。近年白内障や腹腔鏡手術など比較的手術侵襲の小さい手術においては「日帰り手術」が多く、当日来院して当日帰宅ということも増えたが、一般には手術予定日の前に入院し、全身状態の管理を行うのが原則である。
- 手術による侵襲に耐えられる全身状態を維持
- 輸血が必要だと予めわかっている場合、数ヶ月前より患者の自己血を採取しておき手術時にはこれを使う。(自己血輸血)
- 患者の常用薬に関して、手術侵襲に対して悪影響のある薬の投与の一時中止
[編集] 術前計画
手術前に一般には手術を行う医師と、術中管理を行う麻酔科の医師によって患者と手術に対する評価が行われ手術方法が決定される。
[編集] 術前処置
病棟または手術室に入る前に、気道分泌の抑制、鎮痛、手術に対する緊張をなくしたりする目的に、一般に抗コリン薬、鎮痛薬、鎮静薬の前投薬の投与が行われる。最近では、なるべく行わない方向へと進んでいる。
[編集] 入室
一般に日本の手術室は中央集中型の手術室であることが多く、欧米のようにそれぞれの科に手術室セクションがあるのではなく、全ての科の手術は一つの中央手術室で行われている事が多い。
手術室に入室する際は外界からの付着菌等をなるべく少なくする目的から、スタッフは手術着に着替え、シューズは履き替え、帽子とマスクを装着する。手術着の色は術野の赤色ばかりを見て色残像が生じることを考慮して一般に「緑」ないしは「青」がほとんどである。
患者は病棟のストレッチャー(担架)から手術室内のストレッチャーへ移し変えられる。
[編集] 周術管理
執刀に先立って麻酔が施行される。麻酔の主な目的は、手術中の全身状態の管理と疼痛のコントロールであり、局所麻酔以外の場合麻酔科の医師が術者とは別に1人以上付くのが原則である。手術において進行のすべてをコントロールするのは術者ではなく麻酔を行う医師であり、仮に麻酔を行う医師によって手術の中止などが指示された場合は術者の医師もそれに従う。
麻酔には局所麻酔・脊椎麻酔・硬膜外麻酔・全身麻酔等があり、目的によって選択される。
- 局所麻酔:体のある部分のみに効く麻酔。通常は神経の伝達を遮断する薬剤が注射される。目的の部位に直接麻酔薬を注射する(浸潤麻酔)こともあれば、目的の部位を支配する神経に麻酔薬を効かせる(伝達麻酔)こともある。
- 全身麻酔:全身に効く=意識がなくなる麻酔。通常は鎮痛・鎮静・筋弛緩の3つを得る麻酔を指す。麻酔をかけられるとまず意識がなくなり、やがて自発呼吸も止まる。すると麻酔担当医によって気管内挿管され、人工呼吸器に接続される。手術中は継続的に薬剤が投与され、麻酔が維持される。
[編集] 手洗い・ガウン
手術に関してその術野に関わる全てのスタッフは、術者である医師、手術介助(器械出し)の看護師等全員が、念入りな手ないし腕の洗浄を行い、滅菌ガウンを着用し、滅菌手袋を装着する。一般に「手洗い」と呼ばれ、洗浄の仕方は各病院ごとに若干個性はあるが、ある程度は決まっている。そして、これを行った後は如何なる場合をもってしても滅菌処置を行ったものしか触れてはいけない。
この際、麻酔管理の医師や、外回りの看護師、ME(メディカルエンジニア)等は術野に直接関わらないため手洗いは行わない。
手洗いの後、滅菌処置の行ったガウンを着る。「手洗い」の後であるため、この着方も決まっている。
ガウンを着てその後に滅菌手袋を装着する。手袋には一般手袋とヨード配合の抗菌手袋が存在する。
[編集] 消毒・術野作成
手術を行う場所に対し、イソジンないしはアルコールによる十分な消毒が行われる。消毒が終わると、消毒した部分以外を滅菌処置を行ったシーツで覆い「術野」を形成する。
[編集] 執刀
手術を行う環境が整った後に執刀が開始される。手術に参加する人数は手術によっても多少異なるが、普通の開腹や開胸手術の場合、大学病院や大病院であると術野に入れる人数は大体医師4~5人程度までで、人手の少ない病院の場合だと2人程で行うこともある。また一般に必ず手術介助の看護師が参加する。
まず術者(執刀医)によって皮膚にメスが入れられる。術者は術前の計画に沿って手術を進行する。術前の予想と術中の所見が異なる場合があり(がんが予想より広がっていた、など)、術中の判断で計画が変更されることもある。ただこの場合別の疾患による病変の治療については偶然発見されたとしても、最近ではインフォームド・コンセントの観点から絶対に行われない。
予定された手術が終わるとまず温水の生理食塩水によって十分に術野の洗浄が行われる。これが簡素であると術後の癒着が生じやすくなることがある。帝王切開などでは癒着防止のシート等を付着する場合も多い。また皮膚を閉鎖する前には、主に手術補助の看護師によって、必ず手術で使われた器具やガーゼ、針の数等の数合わせが行われる。これが合わない場合は絶対に閉鎖しないのが原則である。また人的ミスも考慮して、一般には術後すぐ手術部分のポータブルX線を撮影し、確認することも多い。
術野が取り外され麻酔薬の投与が中止され、患者は麻酔から回復する。
[編集] 術後の説明
術中の所見や手術の内容が患者と家族に告げられる。手術後の見通しが告げられることもある。
[編集] 術後管理
術後、手術のダメージから回復するまで治療は継続される。手術創の処置が行われ、点滴や投薬で全身状態の改善が図られる。術後合併症の予防には細心の注意が払われるが、不幸にも発症した場合には対症療法が行われる。
[編集] 手術の器具
手術器具は診療科により、施設により、さらには術者により多彩を極め、その呼び名も様々である。ここでは最も基本的な器具につき解説する。
- メス:手術といえばメスというくらい認知度が高い器具。大小様々な形状のメスがあり、術者の好みにより使い分けられる。先のとがったメスを尖刃刀と呼び、刃の丸いメスを円刃刀と呼ぶ。
- 電気メス:高周波電流により組織を焼き切る機器。止血と切開が同時にできるので最も頻繁に使われる機器である。そのほか、刃先の微振動で切る超音波メスや、医療用レーザで焼き切るレーザメスなどがある。
- 剪刀(せんとう):はさみのこと。刃先の曲がった曲剪刀が好んで使われる。切るだけでなく、組織をはがしていく剥離操作にも活躍する。代表的なものはクーパー剪刀、メーヨー剪刀、メッツェンバウム剪刀など。
- 鑷子(せっし):ピンセットのこと。把持する組織に合わせて様々な形状の鑷子があり、呼称も様々である。スウェーデン鑷子、ドゥべーキー鑷子、アドソン鑷子、マッカンドー鑷子など。
- 鉗子(かんし):組織を把持する器具。はさみのような外見で、手元にストッパーがついており挟んだままにできる。挟む、牽引する、つぶす、開く、すくう、遮断する、など様々な用途に用いられる。コッヘル鉗子、ペアン鉗子、ケリー鉗子、モスキート鉗子など。
- 針:糸をつけて縫合に用いる。通常は弯曲のついた曲針が用いられる。縫う組織によって大きさ、太さ、弯曲具合、断面の形状が異なる。一般に腸管等の組織結合には丸針、皮膚縫合には角針を用いる。裁縫の縫い針のように糸を通して使うものや、針のうしろに糸が付いている針付き縫合糸がある。
- 持針器(じしんき):針を持つ器具。組織を縫い合わせる時に用いる。マチュー持針器、ヘガール持針器など
- 鉤(こう):先がカギ状に曲がっている器具。組織を引っかけて牽引するのに用いられる。筋鉤、神経鉤、腹壁鉤(ザッテル)など。
- 開創器(かいそうき):手術創を広げておく器械。
[編集] 関連項目
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