日産・マーチスーパーターボ
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マーチスーパーターボ(MARCH SUPER TURBO)は、日産自動車が生産していた3ドアハッチバック、K10型マーチの車種のひとつである。
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[編集] 概要
1988年に発売された競技専用車「マーチR」をベースに1989年に発売開始された一般向けモデル。型式はEK10GFR(5MT)とEK10GAR(3AT)。国際モータースポーツ規約の過給係数レース規約1.7倍/ラリー規約1・4倍を掛けた際に1600ccクラス内に収まるよう、敢えて自然吸気MA10S型(987cc)エンジンモデルよりも排気量をダウンさせて930ccとなっている。
「マーチR」と同じMA09ERT型エンジンを搭載し、最高出力110ps/6400rpm、最大トルク13.3Kgm/4800rpmを発生するエンジンは、量産車には珍しくターボチャージャーとスーパーチャージャーの2種類の過給機、ダブルチャージシステムを搭載していた。
これにより低回転域ではスーパーチャージャーによる瞬発力を、高回転域では余裕のある最高出力を得る事に成功しているが、それがフロントヘビーの原因ともなっている。
ビスカスカップリングLSDを標準で搭載。
K10型マーチの自然吸気エンジンMA10Sでは日産・ECC(EGR)、電子制御キャブレターによる気化器が採用されていたが、スーパーターボでは全電子化されたEGI(日産・ECCS)制御のインジェクター仕様であった。
補機類装着スペースの関係でマーチR/ST(スーパーターボ)はパワーステアリングが省略されている。
[編集] 主要諸元/エンジン/特記/解説
- 生産時期 1989年---1991年
- (型式E‐EK10)略通称、EK10ST
- ミッション、5MT(GFR)3AT(GAR)
[編集] 主要緒元
- 全長 : 3735mm、全幅 : 1590mm、全高 : 1395mm
- 室内寸法、長×幅×高 1715×1305×1145mm
- ホイールベース、2300mm・トレッド前/後、1350/1335mm
- 最低地上高、120mm
- 車重、770kg
- 乗車定員、5名
- 最小回転半径、4・7m
- 燃料消費率 : 10モード 16・0km/L、60km/h定地走行 26・5km/L
- ステアリングギア方式、ラック&ピニオン
- 懸架方式前/後、独立懸架ストラット/4リンクコイル
- ブレーキ前/後、ベンチレーテッドディスク/リーデリングトレーリング
- タイヤ前/後、175/65R13
- ビスカス式LSD、F/RスタビライザーΦ26/Φ18
- トランクアクスル、5速MT、3速AT
[編集] エンジン
- MA09ERT型、OHC水冷直列4気筒
- シリンダー内径×行程、66・0×68・0
- 総排気量、930㏄・圧縮比、7・7
- 最高出力 : 110/6400PS/rpm、最大トルク : 13・3/4800kgm/rpm
- 燃料供給装置、ニッサンECCS
- 使用燃料・タンク容量L、無鉛レギュラーガソリン・40
[編集] ボディカラー
- ♯531 クリスタルホワイト、#FH1アクティブグリーン、♯TH9トワライトブルー、♯539ブラックメタリック
オプション
- ガラスサンルーフ(メーカーオプション)、5-J×13インチアルミロードホイール(N11-9029)
[編集] 特記
- STのヘッドランプは60/55wのイエローバルブ標準装備
- リフレクター可動式フォグランプ55wは無色バルブ装備
[編集] 解説
- MA09ERTエンジン:基本構造はMA10ET(987ccターボ)と同じ水冷直列4気筒OHC、V型弁配置クロスフロー吸排気ポート、半球型燃焼室。燃料噴射システムはシーケンシャルインジェクション。最大の特徴はその過給システムにある。スーパーチャージャー+ターボチャージャーの「ダブルチャージ」。この複合過給機システムは市販車として日本初である。低回転域から高回転域まで全域にわたり、高トルク、ハイレスポンスが得られる究極の過給システムといえる。即ち、TCが効きにくい低回転ゾーンで主にSCが過給、低速トルクとレスポンスを向上させタイムラグなしの加速性能を引きだす。一方、TCは高回転ゾーンでの過給を受け持ちハイトルクとハイパワーをもたらす。この両者はバイパス制御弁によって滑らかに繋がり、過給効果を最大に発揮。圧倒的な動力性能でドライバーを魅了する。最高出力110ps/6400rpm(NET値)、最大トルク13・3kgm/4800rpm。リッター当たり出力は実に118psをマークする。またパワーウエイトレシオ(注、車重÷出力での数値でその数値が小さい程、高い高性能車。スポーツカータイプで約8.0くらい)は7.0(STの5MTフロア車。Rは6.72)。このデータを比較してみても、ポテンシャルの高さと優れた運動性能を知る事であろう。
- フロントビスカスLSD : STの5MT車は、フロントデフにビスカス・カップリングを用いたLSDを標準装備。ビスカス・カップリングは多数の薄いプレートと高粘度シリコンオイルで構成、このオイルの粘性によって、トルクの伝達度合いを最適に制御する。例えば、ハードなコーナリングを強いられた時、フロントの左右輪に回転差が生じても回転差に応じ、ビスカストルクを低回転側に伝達。トルクは再配分され路面をしっかりグリップ。パワーオン時のコーナリングもドリフトアウトしにくく、限界性能を高める。又、低μ路でも(雪道や濡れて滑りやすい路面)走行でも左右輪の回転が急変しないので、ステアリングをとられることがなく姿勢は安定。リニアな操舵感覚で駆け抜ける事が可能。
- スタビライザー付きサスペンション : STはその高度な動力性能に応えるポテンシャルの高いサスを用意している。フロントストラット式独立懸架、リアは、4リンク式である。前後輪共にスタビライザーを装着(Rとターボはリアのみ)スタビライザーは車体の揺れや傾斜を制御する装置で、コーナリング時にはボディのロールを防ぎ又、高速走行時には操縦安定性を高める働きをする。更にバネ定数やブッシュ類を最適にチューニング。あらゆる走行状況下で軽快なフットワークを発揮するサスペンションである。