明日のナージャ
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『明日のナージャ』(あしたのナージャ)は、東映アニメーションにより制作された主人公ナージャの母親探しの旅と恋愛を描いた少女向けアニメ。朝日放送(ABC)・テレビ朝日系で、2003年2月2日から2004年1月25日まで、全50話が放送された。
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[編集] 作品の概要
『キャンディ・キャンディ』や『はいからさんが通る』などの、1970年代の少女向け歴史大河アニメを模した作風を特徴とする。放映当時(2003年)から約100年前、20世紀のヨーロッパとエジプトを舞台に、主人公ナージャの母親探しを物語の縦糸に据え、双子の少年フランシスとキースとの恋愛劇を横糸として絡めた意欲作。ヨーロッパを巡る母親探しの旅には世界名作劇場からの、フランシスとキースとの恋愛模様には少女漫画からの影響が多分に見られる。また、作中でナージャが関わるエピソードの多くは、貴族と平民、資産家と貧乏人などの、社会的な身分格差に関わるものである。こうした作品内容は子ども達には難解すぎたためか日本ではあまり評価されなかったが、後に放映されたヨーロッパでは大いに支持された。
『明日のナージャ』では、ヨーロッパの様々な都市が物語の舞台となっている。チロリアンダンスやフラメンコなど、ナージャは各地で覚えこんだダンスを作中で披露する。番組途中までは冒頭で舞台となる都市名が読み上げられており、ヨーロッパ各地の風俗描写もこの作品に彩りを添えている。また、大勢の美青年・美少年が登場するのも、この作品の特徴である。
劇中に登場するナージャのバトンやドレス、ブローチ、万華鏡、ミシン、タイプライター、傘などの小道具の玩具がバンダイから発売されたが、売り上げは同じ放映枠で前後シリーズとなった『おジャ魔女どれみ』や『ふたりはプリキュア』には及ばず、商業的には苦戦を強いられた。そのため、前・後番組に比べ人気が思わしくない地味なイメージが付いてしまっている事は否めない。不振の要因としては先述の身分格差などを軸に進むストーリーの難解さ、「魔法」「変身」といった女児向けアニメの人気要素がなかった事が挙げられる。
この作品の放送期間に合わせて、あゆみゆいが手がけた漫画版がなかよしに連載された。詳細は漫画の項を参照。また、サイドストーリーとしてドラマCD『明日のナージャ 音的挿話シリーズ』がある。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] ストーリー
[編集] 第1~5話 イギリス編
イギリス、ロンドン近郊のアップルフィールド孤児院で育った少女ナージャは、13歳の誕生日を迎えようとする頃に母親が生きていることを知らされ、母が初めての舞踏会で身に着けたドレスと、家紋の入ったブローチを譲り受ける。孤児院を飛び出したナージャは、踊り子として旅芸人のダンデライオン一座に加わる。旅の途中でナージャは彼女のブローチを付け狙う2人組の探偵ロッソとビアンコ、ナージャが「星の瞳のナイト」と名付けたハーコート侯爵家の令息フランシス、そして世間を騒がせている仮面の怪盗黒バラと遭遇する。
[編集] 第6~12話 フランス編
パリへ巡業に訪れたナージャとダンデライオン一座は、送られてきた日記を手掛かりにナージャの母親を捜し求める。ばあやに連れられて使いに行った際、モンテルラン夫人の舞踏会で、ナージャは会場に紛れ込んだ怪盗黒バラと再会する。一方、ナージャはますますフランシスへの想いを強めていく。
[編集] 第13~16話 スイス編
ダンデライオン一座が慰問公演に訪れた孤児院で、ナージャはフランシスと再会する。孤児院のための寄金活動を行う理由を尋ねられたフランシスは、貴族にはその身分に伴う義務があるという、ノブレス・オブリッジをナージャに教える。しばしの逢瀬を楽しんだ後、ナージャはフランシスと朝日の中で初めてのキスを交わす。
[編集] 第17~22話 イタリア編
ヴェネツィアの篤志家カルロが怪盗黒バラに狙われる。実はカルロに横領されていた寄付金を盗み出し、貧しい人々に施す黒バラの姿に、黒バラを悪人だと思い込んでいたナージャは戸惑う。
また、本編ではこの辺りからナージャの出生の秘密と、彼女を取り巻く陰謀の詳細が明らかにされる。かつてオーストリア貴族の娘コレットは、平民レイモンとの結婚を父親のプレミンジャー公爵に許されず、駆け落ち同然にしてナージャを産んだ。レイモンが事故で死んだ後、本人も重病から回復したばかりのコレットに、ナージャは死んだとプレミンジャー公爵は嘘を教え、ナージャは乳母の手でアップルフィールド孤児院に預けられたのだった。
その後、放蕩息子のヘルマン(ナージャの叔父)を勘当したプレミンジャー公爵は、行方不明のナージャを探偵のロッソとビアンコに捜させていた。一方、プレミンジャー家の爵位と財産を狙うヘルマンは、ロッソとビアンコを買収し、母娘の証であるブローチをナージャから取り上げようとしていた。
[編集] 第23~29話 スペイン編
グラナダでしばしの休暇を楽しむダンデライオン一座。夏の暑い天候の最中、1人で街を散策しに出掛けたナージャは、フランシスと再会する。再会を喜ぶナージャに、フランシスはよそよそしい態度を取り続ける。そして別れの間際に、グラナダの人ごみの中に、もう1人のフランシスがいるのをナージャは見つける。「どちらのフランシスが本当のフランシスなのか?」そんな疑問を心で繰り返しながら、スペインでの公演を続けるナージャ。闘牛士ホセとフラメンコダンサーのカルメンの恋模様にも絡みながら……
そんなある日、ナージャはアップルフィールド孤児院で親友だった少女、ローズマリーと顔を合わせる。幼い頃はナージャをナイト役に据え、プリンセスになることを夢見ていたローズマリーは、今はゴンザレス男爵家のメイドとして下働きの日々を送っていた。パーティ会場にドレス姿で賓客として招かれたナージャの姿に、ローズマリーは嫉妬の心を激しく燃やす。これ以降、ローズマリーは、ロッソとビアンコ、ヘルマンらと手を組み、ナージャの母親探しを妨害するようになる。一座がスペインを去るころのホセの死は、今後のストーリーの暗雲を暗示するかのようである。
[編集] 第30~31話 ギリシャ編
ミコノス島でフランシスと出会ったナージャは、思い切ってグラナダでの事を尋ねてみる。動揺したフランシスは、双子の兄キースの存在をナージャに打ち明ける。フランシスの兄キースは、金持ちから盗んで貧しい人々に施すため、怪盗黒バラとして悪事を働いていた。一方、フランシスは自分が行った寄付が原因で潰されてしまった孤児院のことを知らされる。裏目に出た善意を償うために、廃墟となった孤児院でフランシスはレンガを積み続ける。泥まみれのフランシスを、ナージャは複雑な気持ちで見守る。
[編集] 第32~34話 エジプト編
ナージャの母親の日記に書かれていた考古学者ハリソン教授を訪ねて、エジプトを訪れたダンデライオン一座。ハリソン教授は既に亡くなっていたが、教授の教え子で、イギリスでナージャの知り合いになったクリスチャン・ストランドから、ブローチの中の指輪の紋章が、プレミンジャー公爵家の紋章であることを教えてもらう。しかし、ようやく母親への手掛かりを掴んだ矢先に、ピラミッドの中でナージャはブローチをロッソとビアンコに盗まれてしまった。ブローチを手に入れたヘルマンは、ローズマリーを、ナージャだと偽ってプレミンジャー公爵に引き合わせる。
[編集] 第35~50話 オーストリア編
プレミンジャー公爵家を訪ねて、ナージャとダンデライオン一座はオーストリアまでやってきた。ナージャに同情した新聞記者のハービーは、盗まれたブローチについての記事を書く。辛うじてヘルマンの手からブローチを取り戻したキースは、ブローチをナージャに手渡して力尽きる。しかし、ローズマリーの演技とヘルマンの奸策によって、ハービーの記事は、ローズマリーが黒バラによってブローチを盗まれた記事に差し替えられてしまう。
母親のいるウィーンで母の形見であるドレスに身を包み、シュトロハイム伯爵夫人のパーティに潜り込んだナージャは、ナージャの名を騙るローズマリーと出会う。詰問するナージャを巧みに欺いてドレスを取り上げたローズマリーは、ナージャをパーティ会場から追い出し、ナージャの目の前で母親の形見のドレスを引き裂く。ローズマリーによりウィーン警察に追われる身になったナージャは、疑いを晴らし身の証を立てるため、1人でイギリスへ旅出つ。
最後にナージャは自分に掛けられた疑いを晴らし、母親との再会を果たす。しかし、ナージャはプレミンジャー家の後継者として彼女を教育しようとする公爵の目論見をはねつけ、再びダンデライオン一座と共に世界に旅立っていく。
[編集] 主要なキャラクター
- ナージャ・アップルフィールド(声優:小清水亜美)
- この作品の主人公。アップルフィールド孤児院で育った、プラチナブロンドと青い瞳が特徴の12歳(作中で13歳の誕生日を迎える)の少女。フランス生まれイギリス育ち。特技の歌とダンスでダンデライオン一座の踊り子になる。赤ん坊の頃に生き別れた母親を探すために、形見のブローチを持って旅を続ける。天真爛漫かつ行動的な性格で、旅の途中で出会った男性達を惹きつける。
- 主人公の名前「ナージャ」は、フランスのシュルレアリスム作家アンドレ・ブルトンの小説『ナジャ』に登場するヒロインの名前から取られている(ただし、このアニメと小説『ナジャ』に直接の関係はまったく無い)。「ナージャ」は「希望」を意味するロシア語「ナディエージダ」に由来し、ロシア語圏ではありふれた女性名である。
- フランシス・ハーコート(声優:斎賀みつき)
- ナージャが憧れるイギリスの貴族ハーコート侯爵家の令息。16歳。亡き母の意志を引き継ぎ奉仕活動に専念する日々を送っている。
- 怪盗黒バラ(キース・ハーコート)(声優:斎賀みつき)
- ナージャの前にたびたび姿を現す仮面の怪盗。フランシスそっくりな素顔を持つ(実は双子)。
- アンナ・ペトロワ(声優:京田尚子)
- 通称おばば。年齢不詳。帽子製作と占いの名手。水晶玉占いでナージャの不思議な運命を予言した。
- ゲオルグ・ハスキル(声優:一条和矢)
- ダンデライオン一座の団長を務めるドイツ人の大男。怪力の持ち主で、ダンデライオン一座の大黒柱。からくり(メカ)にも強く、ダンデライオン一座のからくり自動車は彼の作品である。生きがいのトレジャーハンティングはいつも不発に終わっている。
- シルヴィ・アルテ(声優:折笠冨美子)
- ダンデライオン一座の歌姫。美しい歌声と美貌の持ち主のフランス人。ナージャにとっては姉のような人。吟遊詩人のラファエルに思いを寄せられている。
- アーベル・ガイガー(声優:山崎たくみ)
- ダンデライオン一座でピエロを担当する初老の男。もとは医者であったためか言語に詳しく、ナージャの母親の日記を翻訳したりするなど、ナージャの母親探しを知識の面からサポートした。
- クリームとショコラ(声優:クリーム:甲斐田ゆき、ショコラ:木内レイコ)
- ダンデライオン一座のマスコットの双子のライオン。2匹とも白い体をしているが、ショコラの方は体を黒く染められている。
- リタ・ロッシ(声優:大谷育江)
- クリームとショコラを使ったショーを繰り広げるダンデライオン一座の幼いイタリア人少女。世界一小さなライオン使い。火事で両親をなくし、そのショックで言葉を話せなくなった。しかしある事件をきっかけに声を取り戻す。
- ケンノスケ・ツルギ(声優:木内レイコ)
- ナージャの後からダンデライオン一座に加わった居合い抜きが得意な日本人のサムライ少年。ナージャに憧れている。
- コレット(声優:安原麗子)
- プレミンジャー公爵の娘。ナージャが幼い頃に別れた実の母親。
- プレミンジャー公爵(声優:丸山詠二)
- ナージャの実の祖父。オーストリアの貴族。家門の存続を第一の命題として最重要視している。
- ヘルマン(声優:二又一成)
- プレミンジャー公爵の不良息子でコレットの弟。父とは折り合いが悪く、成年の当主がいなくなったコロレード男爵家の当主に出されてしまっている(つまり、プレミンジャー家の相続権はなくなっている)。プレミンジャー家の財産を手に入れるため、ロッソとビアンコを使いナージャのブローチを付け狙う。最終的にプレミンジャー公爵に勘当され、破滅する。
- ロッソとビアンコ(声優:ロッソ:乃村健次、ビアンコ:小嶋一成)
- プレミンジャー公爵に雇われてナージャを探す二人組の探偵。裏でヘルマンと内通しているが、内通はあくまで金のためであり忠誠心は全くなく、ヘルマンを脅迫するシーンも多々見受けられる。
- ローズマリー(声優:宍戸留美)
- ナージャと同じアップルフィールド孤児院で育った女の子。幼い頃からプリンセスとなることを夢見ている。終盤ではヘルマンと組み、ナージャになりすましてナージャを苦しめたが、貴族社会の実態を鋭く見抜き、ナージャに全てを返して去る。
- メリーアン・ハミルトン(声優:岬風右子)
- ハーコート兄弟の幼馴染でフランシスの婚約者。
- アントニオ(声優:堀川りょう)
- イタリアの平民出身の企業家。ダンデライオン一座のお得意様で、よくシルヴィーを誘いに来る。貴族という地位に対する執着心が強く、貴族を陥れて財産を奪い取るなど、儲ける為なら手段を選ばない非情な面を持つが、年老いた母親を思う親孝行な一面もある。終盤ではヘルマンに借金の返済を迫り、それがきっかけでヘルマンを破滅に追いやる。
[編集] スタッフ
- プロデューサー:西澤萠黄(ABC)、高橋知子(ADK)、関弘美
- 原作:東堂いづみ
- シリーズ構成:金春智子
- 音楽:奥慶一
- 製作担当:坂井和男
- 美術デザイン:ゆきゆきえ、カルロス・ユキ(途中から)
- 色彩設計:辻田邦夫
- キャラクターデザイン:中澤一登
- 総作画監督:佐藤雅将
- シリーズディレクター:五十嵐卓哉
- 脚本:金春智子、影山由美、成田良美、K・Y・グリーン、ルージュ・ドゥ・ルーン
- 演出:五十嵐卓哉、伊藤尚往、岩井隆央、岡佳広、葛西治、中尾幸彦、長峯達也、細田守、矢部秋則、山内重保、山吉康夫
- 作画監督:中澤一登、佐藤雅将、稲上晃、青山充、河野宏之、川村敏江、桑原幹根、高橋任治、永島英樹、生田目康裕、東美帆
- 美術:ゆきゆきえ、カルロス・ユキ(行信三)、いでともこ、塩崎広光、下川忠海、田中里緑
[編集] スタッフの変名
この作品は海外を舞台にした作品のせいもあってか、スタッフにも洋風の変名がいくつか散見される。
原画などにクレジットされている日本語ではない名前は、東映アニメーションのフィリピン法人TAP(TOEI ANIMATION PHILIPPINES)のスタッフのものである。
[編集] 音楽
[編集] 主題歌
- オープニングテーマ『ナージャ!!』
- 作詞・作曲:茅原万起 編曲:大谷幸 歌:本田美奈子
- エンディングテーマ『けせら・せら』
- 作詞:うえのけいこ 作曲:小杉保夫 編曲:大谷幸 歌:小清水亜美
[編集] BGM
劇中のBGMは、前シリーズ『おジャ魔女どれみ』に引き続いて奥慶一が担当した。「約100年前のヨーロッパ」という本作の設定を受けて制作スタッフからはクラシックを基本とした方向性が要請され、中にはプロデューサーの関の意向で実在するクラシック楽曲を奥が編曲したものも含まれる。そのため、同じく奥による『おジャ魔女どれみ』シリーズのBGMが打ち込みと生楽器を活用したものであったのとは対照的に本作ではほとんどがアコースティックな楽曲となった。BGM録音は10時間以上に及び、約90曲の音楽およびそのバリエーションが用意された。
本作のBGMの特徴として、主人公ナージャの踊り子という設定や貴族の舞踏会などの場面のための現実音楽としての楽曲や、ダンデライオン一座が世界中を旅するという物語に合わせたさまざまな国の民族音楽を意識した楽曲などが豊富に用意された点などが挙げられる。
また本作では、ナージャの母が遺したオルゴールとフランシスとのダンスのメロディーなど音楽が物語の中で鍵として重要な役割を担った例も多い。
このほか「étoile」や「飛べない天使」など劇中で登場人物が歌う形で使用されたいくつかの挿入歌も、奥自身が作編曲を手がけた。
[編集] 関連作品
[編集] 漫画
前半はアニメに忠実だが、後半はフランシスと怪盗黒バラの関係がアニメ本編と異なるなど、独自のオリジナルストーリーになっている。なお、ローズマリーなど一部のキャラクターは、漫画版に登場しない。
[編集] ドラマCD
マーベラスエンターテイメントより、サイドストーリー及び本編の後日談を収録したドラマCDが発売されている。
- 明日のナージャ 音的挿話シリーズその1「勝手にナージャ」(2003年10月22日発売)
- 明日のナージャ 音的挿話シリーズその2「明後日のナージャ」(2003年12月21日発売)
- 明日のナージャ 音的挿話シリーズ その3「明後日のナージャ」2(2004年1月21日発売)
[編集] 外部リンク
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