死牛馬取得権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
死牛馬取得権とは、死亡した牛馬の遺体を取得する権利のことである。処理・解体し、皮革などを生産した。斃牛馬取得権(へいぎゅうば-、たおれぎゅうば-)、草葉株、旦那株などともいう。江戸時代においては、えた(穢多)身分の者がこの権利を独占した。牛馬が死ぬと、持ち主の身分や幕府領・大名領などの支配の違いを問わず、この権利者に無償で譲渡しなければならなかった。えた身分が死牛馬を加工して貴重な収入源としており、武具などに不可欠な皮革生産を独占していた。えた身分の上層の中には、皮革を取り扱う問屋と婚姻関係を結ぶ者もいた。
具体的なあり方は、地域によって大きな違いがある。関東などの弾左衛門支配下では、えた身分は場日(ばにち)という日割りの権利としてこの取得権を持ち、実際の処理・解体は配下の非人の者が担当した。対して畿内近国では、処理・解体までえた身分が担った。これは、弾左衛門支配下の地域では非人集団がえた配下として編成されていたのに対し、畿内近国ではえたと非人は全くの別組織だったことに由来する。
明治4年(1871年)の「斃牛馬勝手処置令」という太政官達により廃止され、部落民の生計に大打撃を与えた。