消防組織法
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消防組織法(しょうぼうそしきほう;昭和22年12月23日法律第226号)は、日本の消防の任務範囲、消防責任を市町村が負うこと、消防機関の構成、などについて規定する日本の法律。消防基本法と呼ぶべき内容を有する。これに対し、消防法は主として消防の規制に関する法律である。
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[編集] 主要項目
[編集] 消防の任務
第1条では、消防の任務の範囲が規定されている。
- 第1条 消防は、その施設及び人員を活用して、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、水火災又は地震等の災害を防除し、及びこれらの災害に因る被害を軽減することを以て、その任務とする。
本条において、消防は火災の防御だけでなく災害の防除もその任務とされている。本条を根拠として、火災以外の救急や救助、又は行方不明者の捜索などが消防任務の範囲に含まれることとなる。行方不明者の捜索において注意すべきは、あくまで生存者のみが対象となることである。遺体収容などは消防任務とはならない。また、例えば日本航空123便墜落事故の際に、消防が救助へ向かおうとしたところ、警察がその必要なしとして消防の出動を止めているが、生存者の可能性があったことから、本事故において一義的に救助責任を負うのは警察でなく消防である。消防は警察の指示を無視すべきであったし、警察の指示は明らかな越権行為だったと言うべきである。
[編集] 自治体消防
消防責任を負うのは市町村とされている(第6条)。そして、消防は市町村長が管理し(第7条)、消防機関(消防本部・消防団)は市町村が設置する(第9条)が規定されている。消防関係の一部事務組合を設置した場合は、当該一部事務組合を市町村と読み替える(第26条の3)(消防団の任務等については消防団員#消防組織法(関連規定のみ)参照)。
国や都道府県は消防責任を負うことはなく、よって市町村消防を管理することもない(第19条)。戦前、消防は警察の一部門とされていたが、戦後は、消防の重要性や警察の必要以上の肥大化防止などが勘案された結果、GHQの指導に基づいて消防組織法上に自治体消防が規定された。自治体消防の発足を記念して、消防組織法施行日(1948年3月7日)である3月7日を消防記念日とし、消防功労者に対する消防庁長官表彰など様々な消防関係行事がとりおこなわれている。
国(消防庁)における消防関係事務は第2条~第5条、道府県における消防関係事務は第18条の2において規定されており、市町村消防への関与は指導・助言等にとどめられている。ときに消防庁や道府県により、指導・助言の名目で市町村消防に対する介入が行われることもあるが、強制力を伴わないため、最終的な判断は市町村消防が行うこととなる。この辺りが警察と大きく異なる点で、警察の場合は警察庁が自治体警察へ介入することは法的にもある程度認められている。
また指揮系統・人事・給与上も自治体警察は国家警察たる警察庁に依存しており、警察庁が警視庁・道府県警本部へ指導・監督という名目で警察活動の指揮に介入することは頻繁に発生している。そして警視庁・道府県警本部はさらに下の所轄署へ直接命令権を有すので、結果的に警察庁の命令が警視庁・道府県警本部→警察署→交番・駐在所レベルにまで影響を持つこととなる。また警察内で指揮を執る警視正以上の警察官は警察法上、全員国家公務員となり身分は警察庁警察官である。つまり事実上、警察庁に所属する警察官が自治体警察に出向して直接支配している状態にある。
消防の場合は消防庁に所属しているのは全員総務省事務官であって消防吏員ではない。身分も立場も権限も総務省事務官と消防吏員では異なるので総務省事務官が自治体消防へ出向することも無い。
[編集] 消防広域応援
大規模・特殊災害に備えて、市町村消防同士で相互応援協定を締結することと定められている(第21条)。また、全国的な消防応援組織である緊急消防援助隊についても規定されている(第24条の4)。
参考:*第4出場出動
[編集] 消防の教育訓練
消防職員・消防団員の消防技術向上のため、都道府県及び一部の政令指定都市は消防学校を設置し、教育訓練を行うこととされている(第26条)。また、国においてはより上級の教育訓練機関(消防大学校)が設置されている(第26条の2)。
[編集] 構成
- 第1章 - 総則(第1条)
- 第2章 - 国家機関(第2条~第5条)
- 第3章 - 自治体の機関(第6条~第18条の2)
- 第4章 - 雑則(第19条~第26条の3)