益虫
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益虫(えきちゅう)というのは、何らかの形で人間の生活に役に立つ、昆虫など小動物のことを指していう言葉である。害虫の反対の意味を持つ。
人間の役に立つとはいっても、様々な形があり得るが、直接に役に立つのは、食える場合であろう。世界各地に昆虫を食料として利用する例は存在する。日本でも、昆虫食の伝統はあり、現在でもイナゴや蜂の子、ザザムシなどは珍味として一定の人気がある。しかし、これは余りに直截すぎるのか、こういうものは益虫とは呼ばない。
普通、益虫といえば、人間に利用できる資源を供給するものか、害虫退治をするものに対して用いられる。
前者は、絹糸がとれるカイコや、蜂蜜を生産するミツバチなどを指して使う。また、直接資源を提供するわけではないが受粉を促す昆虫もそれである。後者は、田んぼのクモがイネの害虫を食べてくれるとか、トンボやゲジがカを食べてくれるとか、そのような場合に使う。ただし、クモが益虫であるミツバチを食ベたならば害虫になるし、クモが家の中を出歩けば不快害虫扱いされる場合もある。
害虫を食べるものは、天敵とも呼ばれ、害虫駆除のために積極的に利用される場合もある。中には生物農薬として市販されているものもある。
益虫害虫のカテゴリーはあくまでも個々の人間活動と生物の相互作用で決まる相対的なもので、絶対的なものではない。例えば田植えによる水稲栽培を行う日本の稲作において、カブトエビは田植え後の水田において効率的に芽生えたばかりの雑草の実生を掘り返すので益虫として扱われる。ところが航空機などによる直播きによって水稲栽培を行うアメリカ合衆国では、カブトエビはイネの発芽直後の苗を掘り返して枯らす害虫として認識されている。また害虫の天敵であっても、例えば乾物の害虫であるタバコシバンムシの天敵であるキイロアリガタバチはその針で人の皮膚をも刺傷するため、害虫として認識されている。