窒素中毒
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窒素中毒(ちっそちゅうどく)とは、高分圧(通常3~4気圧程度以上)の窒素を摂取すると発症する一種の中毒症状。一般的に窒素酔い(ちっそよい)と呼ばれる。特にスクーバダイビングなど、空気あるいは混合ガスを用いての潜水時に起こりやすい。
[編集] 症状
窒素中毒の典型的な症状は、多幸感と総称される精神の高揚状態である。窒素中毒の影響が強くなるに従って、楽観的あるいは自信過剰といった傾向が強くなり行動に慎重さが失われる。窒素酔いという名は、この症状が酒に酔っている状態に似ていることからつけられたものである。いったん窒素中毒を発症すると窒素分圧が高くなるほどその症状は強くなるが、窒素分圧が十分に下がればとくに後遺症もなく回復することが他の高気圧障害にはない特徴である。
[編集] 潜水と窒素中毒
窒素中毒そのものは、よほど症状が重くならない限りただちに生命に危険を及ぼすものではない。しかし、基本的な運動機能などはあまり影響を受けないものの、潜水中にもっとも必要とされる計算力や判断力など高次の知的機能が著しく影響を受けることにより潜水事故の危険性が増加する。とくにスクーバダイビングにおける事故の大半は何らかの形で窒素中毒が関係していると考えても過言ではない。
窒素中毒は通常窒素分圧が3~4気圧程度に達すると発症するため、空気潜水(呼吸ガスとして空気を使用する一般的な潜水)の場合、窒素分圧3気圧に相当する水深約30mまでが窒素中毒に対して安全な範囲とされており、一般レクリエーショナルダイビングの潜水深度をこの程度までに制限するよう推奨している潜水指導団体が多い。
しかし、窒素中毒を発症する窒素分圧や症状の程度は体質や熟練度による個人差が非常に大きいため、水深30m(窒素分圧3気圧)以下の空気潜水であっても絶対に安全とは言い切れない。実際、窒素中毒が要因になったと考えられる事故事例は水深20m以下のスクーバダイビングでも数多く報告されている。それとは反対に、水深40m(窒素分圧約4気圧)を超える空気潜水で窒素中毒の影響をあまり受けないダイバーもけっして珍しくはない。また、軽度の窒素中毒を繰り返し経験することで窒素中毒に対する耐性をある程度までは高められるともされている。そのため十分な訓練をしながら徐々に潜水深度を増していくことで、正常な判断力を保ったまま空気潜水で水深50m(窒素分圧約5気圧)以上まで潜水可能なダイバーもそれほど稀ではない。
ただ、訓練によって耐性が向上するといっても計算力や判断力などの低下は避けられず、減圧症や酸素中毒に対する危険性もあるため、これらを考慮して、とくに作業潜水で水深30~40m程度を超える潜水では各種の混合ガスを使用することが一般的となっている。