経験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
経験(けいけん)とは、想像や、情報を知識として知っているだけではなく、実際に単一あるいは複数の行為に参加あるいは行動を実践することによって、物事を理解したり、技術を習得したりすること。
目次 |
[編集] 概要
経験は、知識の前駆として習得する物である。それらは体験を通して培われる。経験を通じて得た知を、人は言葉ですぐに表すことはできない。経験によって知っている知識のことを、経験知または暗黙知という。このことを慣用句では、「肌で知っている」などという。更に経験の積み重ねによって、一定の範疇で物事の判断がつくことを「経験則(けいけんそく)」という。経験則が形成されるためには、成功・失敗を問わず膨大な経験をつむ必要があるだろう。
経験して得た情報でも単純な物は、脳の機能の中でも、知能を司る大脳の前頭葉で理解する以前に、反射を司る脊髄や大脳の運動野といった他の部分に関連していると考えられている。これら経験によって得た能力は、軽度の意識障害を起こしていてもある程度は発揮でき、認知症や記憶喪失といった物に関わり無く利用できる場合が見られる。
ただし経験は過去の体験を通して大きく失敗していない物でしかないため、絶対的に間違いが無いとは言い切れない。しばしば人は、自身の経験を過信した結果、失敗をする。この失敗を通して学ぶ事も肝要である。
[編集] 仕事・職業において
就労・労働(作業)において、経験は重要な位置を占めている。経験を積むことによって、その人の技術が向上したと見なされるため、未経験者よりも経験者の方が賃金の面で優遇されることがある。アルバイトなどの試用期間などもこの例にあたる。
しかしながら、経験を積むことが弊害を生むこともある。経験を積むことで、楽に物事をこなすことを習得してしまい、その結果として手抜きをするなど、経験が粗雑さを生むことがある。こうした慣れは、初心を忘れさせるので、注意が必要になる。
[編集] 匠の技
なおこの経験であるが、経験則になるほどに経験をつんでいる場合に、恐るべき効率を発揮する事がある。これらは非言語的な脳の活動によって行われると考えられており、また当人にとっても説明不可能な事が多い。
- 例えば熟練した木工職人は、作業する日の気温や湿度を肌で・木の性質を見た目や触れた感触で感じ取って、微妙に作業精度を変化させ、湿度によって変化の生じやすい、あるいは各々の材木によって千差万別な性質を生かしたまま、常に安定した製品(または工芸品)を作ることができると言われている。
この経験による効率の向上は、所謂「職人の勘」とも評され、製造業では機械加工(産業用ロボットなどによる)を凌ぐ工作精度を発揮したり、あるいは高性能な分析器を凌ぐ分析能力を発揮する事がある。日本の宇宙開発分野でも、この「職人の勘」や「匠の技」が生かされているのは有名な話である。
近年ではこれら職人の勘を科学的に分析する事で、より高精度の加工技術・分析技術を発展させようと言う工学上のプロジェクトも見られる。