要介護認定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
要介護認定(ようかいごにんてい)とは、介護保険制度において、介護サービスの利用に先立って利用者が介護を要する状態であることを公的に認定するものである。
一般に、要介護認定は、介護保険法による介護を要する状態を意味する要介護認定と、日常生活に見守りや支援を必要とする状態を意味する要支援認定を総称した、要介護等認定を意味する。 (以下の解説において、要介護認定を要介護等認定の意味で用いる。)
目次 |
[編集] 要介護認定の流れ
- 要介護認定を受けようとする介護保険被保険者は、市町村(または特別区)に対し、要介護認定申請を行う。
- 申請を受けて、市町村は被保険者宅(あるいは、入院・入所先)に調査員を派遣し、認定調査を行う。
- 同時に、市町村は申請書で指定された医師(主治医)に対し、意見書(医師意見書)の作成を依頼する。
- 訪問調査結果と医師意見書は、あらかじめ国の定めた基準により、介護にかかる時間(要介護認定基準時間)に評価される。(一次判定)
- 訪問調査結果、医師意見書及び一次判定介護結果は、医師を含む5名以上(更新申請の場合は3名以上)により構成される介護認定審査会で最終的に判定される。(二次判定)
- 市町村は、介護認定審査会の判定結果を受けて、要介護認定の結果を被保険者に通知するとともに、介護保険被保険者証に要介護認定の結果を記載する。
- 現実の運用においては、要介護認定申請と要支援認定申請を兼ねた様式により申請し、二次判定により要介護の状態に至らない場合は、自動的に要支援認定の申請があったものと見なされている。
[編集] 要介護度
被保険者の介護を必要とする度合いを表す。 最も軽度の要支援から、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、最も介護を要するとされる要介護5の6段階に分けられる。 要介護認定の結果においては、自立を意味する非該当の結果が出ることもある。
[編集] 要介護
要介護状態とは、身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、一定期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態。
介護を要する度合いに従って、要介護1~要介護5の5段階に分けられ、要介護5がもっとも介護を必要とする状態を意味する。
[編集] 要支援
要支援状態は、要介護状態に至らないが、身体上又は精神上の障害があるために、一定期間にわたり継続して、日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態。
支援を要する度合いに従って、要支援1~要支援2の2段階に分けられる。
[編集] 非該当
要介護認定の二次判定において、要介護、要支援に該当しないと判断される場合、自立を意味する非該当と判定される。
[編集] 認定調査
要介護認定申請を受けた市町村は、被保険者宅(あるいは、入院・入所先)に調査員を派遣し、認定調査を行う。
認定調査は、市町村の職員が行うこととなっている。また、調査を指定居宅介護支援事業者等(介護保険施設を含む)に委託することができることとなっている。 実際には、市町村の調査担当職員の不足により、居宅介護支援事業者または介護保険施設に認定調査を委託することも多い。
調査内容は、心身の状況、置かれている環境、その他厚生省令で定める事項となっており、平成12年4月の介護保険制度施行時には85項目であったが、平成15年4月の改定では79項目となっている。
[編集] 特記事項
認定調査において、定められた調査項目では被保険者の状態を十分表せない場合、特記事項として調査員が文章で状態を記録する。
[編集] 医師意見書
要介護認定申請を受けた市町村は、認定申請書で指定された医師(主治医)に、障害の原因である疾病又は負傷の状況等についての意見書(医師意見書)の作成を依頼する。
長期間医師の診察を受けていないなど、意見書を作成する医師がいない場合は、市町村が医師を指定する(指定医。)
[編集] 一次判定
認定調査の結果と医師意見書は、市町村でコンピュータに入力され、一次判定として、全国一律の基準により介護にかかる時間(要介護認定等基準時間)が算出される。
[編集] 介護認定審査会資料
一次判定により、認定調査結果と一次判定結果は介護認定審査会資料というA4大のシートにまとめられる。
[編集] 二次判定
介護認定審査会資料、特記事項と医師意見書は、被保険者名、調査員名、医師意見書作成者名等が覆い隠され個人が特定されない状態で、介護認定審査会において介護の必要度(要介護度)及び認定有効期間が判定される。これを二次判定という。
基本的には、一次判定の結果による(要介護認定等基準時間により、要介護度が定められるが、医師意見書や特記事項の記述により、一次判定の結果が実態とかけ離れていると判断できる場合は、介護認定審査会は介護度を変更することができる。
二次判定において、感染症に感染していて、医療施設でないと管理が難しいという場合など、例外的にサービスの指定ができる。 また、サービス提供上の留意事項については、認定審査会として意見を付すことができることになっている。
[編集] 介護認定審査会
介護認定審査会は、介護認定の審査判定を行う機関として、市町村に設置されている。
市町村が共同で介護認定審査会を設置することも可能であり、委員の確保が困難であるため共同設置の例は多い。
介護認定審査会の委員は、保健・医療・福祉の学識経験者を市町村長が任命する。任期は2年。委員には守秘義務が課せられている。
実際の認定においては、委員のうちから会長が指名する者をもって構成する合議体で、審査及び判定の案件を取り扱う。 実際の現場では、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、介護支援専門員、精神保健福祉士、社会福祉士、介護福祉士など5名で構成され、医師が議長を務めている場合が多い。
[編集] 要介護認定等基準時間
要介護認定等基準時間は、介護護の必要度を示す指標を、介護にかかる時間であらわしたもの。単位は分。
要介護認定等基準時間は、認定調査の結果及び医師意見書の一部項目に基づいて、以下のの5つの分野ごとに推計された時間の合計を用いる。
- 入浴、排せつ、食事等の介護
- 洗濯、掃除等の家事援助等
- 徘徊<はいかい>に対する探索、不潔な行為に対する後始末等
- 歩行訓練、日常生活訓練等の機能訓練
- 輸液の管理、褥創(じょくそう)の処置等の診療の補助等
[編集] 要介護認定等基準時間の推計方法
一分間タイムスタディ・データを元に、統計処理ソフトS-PLUSの樹形モデル作成機能により、樹形モデル化されている。
この樹形モデルを国によりソフトウェア化されたものが市町村に備えられており、訪問調査の結果(2003年度以降は、医師意見書の一部項目も)をソフトウェアに入力すれば、その高齢者の介護に要する時間(要介護認定等基準時間)を推計できるようになっている。
[編集] 一分間タイムスタディ・データ
旧厚生省(現厚生労働省)が全国の特別養護老人ホーム、老人保健施設等に入所・入院している約3,400人の高齢者について、48時間にわたり、分刻みで、どのような介護サービスがどのくらいの時間にわたって行われたかを調査した結果を一分間タイムスタディ・データという。
[編集] 認定有効期間
要介護認定の標準有効期間は、新規申請の場合は6ヶ月、更新申請の場合は1年である。
被保険者の状態が安定しない場合は、認定審査会の行う二次判定において、短期の期間指定を行うことがある。 また、更新申請において被保険者の状態が安定している場合には、二次判定において、最長2年の認定有効期間を指定することができる。