説明責任
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説明責任(せつめいせきにん、アカンウンタビリティー(Accountability)の日本語の訳語)とは、政府・企業・団体などの社会に影響力を及ぼす組織で権限を行使する者が、株主や従業員といった直接的関係を持つものだけでなく、消費者、取引業者、銀行、地域住民など、間接的関わりをも持つ全ての人・組織(ステークホルダー:stakeholder、利害関係者)にその活動や権限行使の予定、内容、結果等の報告をする必要があるとする考えをいう。
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[編集] 由来
元来はアメリカにおいて1960年代-1970年代に政府のような公共機関が税金の出資者でかつ主権者である国民などに会計上の公金の使用説明について生まれた考え方である。後に公共機関のみならず株式会社が出資者で株式所有者である株主に対し資産の使途について説明するように拡大された。さらに、(1)説明が求められる主体が、広く社会に影響を持ちうる活動を行う団体に拡大し、(2)説明する内容が、金銭の使途に限られず、活動の予定、権限行使の合理的理由などに拡大し、(3)説明が求められる対象も広く利害関係者(ステークホルダー)まで拡大されている。その結果、現在の日本では定義のように理解されている。
[編集] 説明義務
弁護士、税理士、医師などの専門家が業務を受任するにあたって、その内容について顧客等に十分に説明する責任(説明義務)も、2000年前後以降から重要性を増しており、これに違反した(説明義務違反)として損害賠償の支払いを命じる裁判が急増している。
[編集] ウィキペディアにおける説明責任
- ウィキペディアでは、ガイドライン(Wikipedia:説明責任)において、大きな変更を伴う記事の編集を行う際に、説明責任を果たすために、アカウントを取得してログインした上で編集することが推奨されている。
- ノートでの発言等に署名が推奨される規定(「ノートでは署名をする」)も、同様の理由からである。
- 編集方針に関する議論となっている場合に、議論を拒否したり妨害したりすることは説明責任違反とみなされ、それにもかかわらず独自の方針での編集を強行すると、投稿ブロック(8.1項 議論の拒否や妨害)の原因となる場合がある。
- 編集に関して論争が生じた際の論争の解決として推奨されている方法として、リバートではなく編集を改善する際に、要約で説明することは、説明責任から求められるものである。
- 議論が順調に進まないにもかかわらず、相手が去ってしまった場合に、その相手にコメントを求める際に、コメント依頼を行うことができるとする規定も、去ってしまった相手に説明責任を果たすよう求めるものである。
- これまで管理者は、コミュニティの合意に基づく権限を行使する役割(「ボタン押し係」)にすぎないとされていたため、権限行使に関する説明責任について、明確に規定した基本方針は作成されていなかった。しかし、「荒らし」を繰り返す一部の不正な利用者(「いつもの荒らし」)への対応を強化することなどを目的として、管理者の裁量による投稿ブロックを認める「改定案」が作成され、2006年7月1日から試験施行されている。「改定案」には、投稿ブロックを受けた利用者に異議がある場合に、ブロックを行った管理者との協議を行うべき旨が定められているほか、論争の的となるブロックについては、コミュニティに有害な影響をもたらすことを避けるために、ブロックした管理者が正当だと考えたブロック理由について、他のウィキペディアンとの議論を忌避してはならない(「厭わず」)旨が定められている。これらの規定の趣旨は、管理者が独自の裁量による権限行使を行うことによって、コミュニティでの合意形成を最も重視するウィキペディアの基本理念を損なわないために、管理者に対して説明責任を課したものである。
[編集] 説明責任が問題となった事件
- シンドラーエレベータ死亡事故(2006年6月)