阪急810系電車
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810系電車(810けいでんしゃ)は、かつて京阪神急行電鉄→阪急電鉄に在籍していた通勤形電車である。
神戸線用として1950年(昭和25年)に登場し、厳密には810形と814形に分けられる。
[編集] 概要
810形は、架線電圧600Vの神戸線と1500Vの京都線との直通特急用として建造された。その為複電圧車であり、車内は2箇所の客用扉間に固定クロスシートを採用した。車体は、阪急全線共通規格を採用した為、同時期に登場した京都線用の710系と同一であるが、床下機器は東京芝浦電気製を使用している。但し、直通特急はすぐに廃止された為、その後は神戸線用として使用された。
814形は、宝塚線の線路規格向上による大型車投入の第一弾として登場した。床下機器は600V用である為に京都線乗り入れは不可能であり、810形とも連結出来ず、また車内の座席は全てロングシートを採用した。その後神戸線用としても増備されたが、最後に建造されたC#822-872は、元は710系として建造していたのを、急遽神戸線用に変更した為、主電動機は東洋電機製造製を使用していた。
810形と814形は、後に全車神戸線所属となったが、運用は分けられていた。神宝線の1500V昇圧時も、810形は複電圧車のまま昇圧された為、1500V専用として昇圧改造された814形とは引き続き混結出来ず、今津線で使用されたが、1970年(昭和45年)頃までに814形と同様の制御装置に更新され、ようやく同一運用可能となった。その後、1971年(昭和46年)から1973年(昭和48年)に客用扉の3ドア化が実施された。
昇圧後は、全車宝塚線で使用されたが、1975年(昭和50年)頃から支線運用中心となり、1977年(昭和52年)を最後に宝塚線から撤退した。また、1977年(昭和52年)より車体更新が行なわれ、前照灯のシールドビーム化・車内化粧板更新等が行なわれた。
その後は今津線・伊丹線・甲陽線で使用されていたが、1983年(昭和58年)より廃車が始まり、1985年(昭和60年)のさよなら運転を最後に全車廃車され、これをもって阪急から吊り掛け駆動方式の電車は消滅した。