集団思考
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
集団思考(groupthink)とは集団で合議を行う場合に不合理あるいは危険な決定が容認されること。。集団浅慮と訳されることもある。集団思考という言葉はウィリアム・ホワイト(William H. Whyte)が1952年に雑誌フォーチュンの中で用いたのが最初であるが、集団の特殊な状態を表す語として提唱したのはアメリカの心理学者のアーヴィング・ジャニスである。ジャニスは真珠湾攻撃、朝鮮戦争、ベトナム戦争、ピッグス湾事件、ウォーターゲート事件などの事件の起きたときの議事録を調べて集団の意思決定の際に生ずる傾向についてモデル化した。
[編集] 集団思考の性質
集団思考に入り込みやすい素因としてジャニスは以下を挙げている(実際の字句はこれと大きく異なる)。
- 集団が外部の脅威にさらされていたり時間が切迫したりしている
- 集団の団結が強い
- 集団のリーダーの権限が強い
- 集団が孤立したり情報が少なかったりして外部から隔離した状況にある
- 決定の道筋や規範がはっきりしていない
- 成員の思想や社会的な立場が同質である
- 成員の集団に関する自省や疑念が薄い
また集団思考の状況として以下の8つを挙げている。
- 成員の殆どの間で根拠のない過剰な楽観的観測が共有される(完全性への幻想)
- 自集団が共有する倫理観についての疑問を持たない傾向(倫理性への幻想)
- 過去の実績を理由に自己正当化し、自集団に対する批判的な評価を行う傾向にある。(自己正当化)
- 自集団以外の者(特に敵対する集団)を否定的なステレオタイプ的認識で見る(共有されたステレオタイプ)
- 集団の意見に同調するように圧力がかかる(同調圧力)
- 集団の結束を乱さないために成員が集団の意見に対して異論を唱えなくなる(自己検閲)
- 自己検閲および「意見が無いことは賛成を意味する」という誤った認識から表面上集団の全員が同じ意見であるという共通認識が生まれる(全会一致の幻想)
- 集団の意見に反対する議題が出ないように働きかける成員が現れる(自薦の用心棒〔マインドガード〕)
また集団思考による決定の性質として以下の7つを挙げている。
- 代案や他の意見の検討の欠落
- 決定の意義・目標の欠落
- 決定による影響・結果の検討の欠落
- 一度否認された決定の再検討の欠落
- 情報量の欠落
- 都合のいい情報しか考慮しない偏り
- 緊急時の対策の欠落