雑煮
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
元来は武家社会における料理であり、餅や野菜、乾燥食品などを一緒に煮込んだ野戦料理では無いかと考えられている。この料理が次第に武家社会において儀礼化していき、やがて一般庶民に普及したものとみられる。本膳料理においては最初に雑煮が出され、武家社会における饗宴には欠かす事のできない料理であったと見られる。
雑煮の料理法は地域ごとに特色がある。例えば名古屋では餅と小松菜の一種のもち菜を入れて醤油仕立ての汁にし、鰹節をかけたものに対し、富山ではそれに加えて魚や蒲鉾などを入れて食べる。島根や鳥取では汁粉を雑煮として食べる。
目次 |
[編集] 代表的な具材
具材の代表的なものは、餅・魚・鶏肉の切身または肉団子にしたもの・青味(小松菜、三ツ葉、 ほうれん草)に加え、彩りを添えるために蒲鉾や鳴門巻き(なると)や人参、香り出しに柚子(ゆず)の皮を薄く切ったものを載せる。また、土地の特産物を入れるなど、地方によって特色がある。
[編集] ダシの種類
だしについては地域によって種類がいろいろある。例えば昆布、鰹節、カタクチイワシの煮干(瀬戸内海沿岸など)、スルメ(岡山県県北地域など)などである。
[編集] 汁の種類
雑煮の汁は、澄まし汁では塩仕立て・淡口醤油*仕立てがあり、味噌汁では麦味噌仕立て・米味噌仕立て・白味噌仕立て・赤味噌仕立てがある。また小豆汁仕立てもある。主として関東及び九州は澄まし汁が多く、関西は白味噌仕立てが多い。
(* 「淡口醤油」は味が薄いのではなく色が薄いだけであり、味の濃さ(塩分濃度は淡口醤油のほうが高い)は変わらない。また「薄口醤油」という表記は誤りであるので注意。)
[編集] 餅と餅無し雑煮
雑煮に入れる餅の大きさや形は地域ごとに差異がある。主として東日本では四角形の切り餅(角餅)、西日本では丸餅に大別されるが、香川県や岡山県真鍋島のように砂糖と小豆の餡(あん、餡子)を入れた餡餅(あんもち)を入れる地域もある。雑煮に入れる餅は、関東のように汁に入れる前に焼いて香ばしさを意図したものと、関西以西の生のまま汁に入れて煮るものとに細分される。なお、近年は切り餅を使うエリアが徐々に西へと広がっている。交通手段が進歩し、容易に広範囲への流通が可能となったためと思われる。
地域においては餅を用いない雑煮を作る地方もあり、こうした場合はサトイモや豆腐が餅の代替となる。こうした雑煮の存在は稲作の盛んでない山間や島嶼に見られ、いわゆる芋正月と関連することが多い。米が貴重品であった時代からの風習ともいわれるが、特にサトイモの雑煮は、日本において米が主食になる以前における主食としてのサトイモの存在の名残ではないかとする説もある。
[編集] 継承
同じ地域・地方であっても、家庭によってその作り方や具材が大きく異なる場合がある(例えば、名古屋では冒頭で触れた醤油仕立ての汁のほか、豆味噌(八丁味噌)ベースの汁を用いる家庭も多い)。この理由は調味する者の育った地域・家制度や家長制度による風習が残っている場合は姑や姑から嫁を経由して味の継承の有無・調理者の味へのこだわり・風習の継承の有無・料理の上手い下手に因るところが大きい。一方で、核家族化し且つ風習や出身地が異なる者同士の家庭では平均化することもある。また、昔はたくさんの具材を入れるのが通例であったが、今日では数種類で簡単に済ませることも多い。