餃子
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餃子(ギョウザ、ギョーザ)とは、小麦粉に水を加えて薄くのばしてつくった皮で肉やエビなどで作った具を包み、茹でたり焼いたり蒸したりした食べ物である。
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[編集] 歴史
歴史は古く、中国の春秋時代(紀元前6世紀頃)にはすでに食べられていた遺跡が見つかっている。敦煌の唐代の墳墓では、副葬品として壺に入った餃子が乾燥状態で発見されている。
餃子は中国の華北の料理で、北京語の発音では「チャオヅ(ピン音: jiǎozi)」といい、中国東北部で特によく食べられる。それとは別に華南で発達した点心として食べられる蒸し餃子がある。
日本で食べられる餃子は、戦後満州を経由して流入してきたものが主流であるが、一部には朝鮮半島から流入してきた餃子もある。日本の餃子の特徴は、水餃子は少なく薄目の皮を使い焼いて食べる焼き餃子が主流であることと、具にニラやニンニクを入れることである。また具材に白菜の代わりにキャベツを用いることがある。大衆的な中華料理店やラーメン店などのメニュー、家庭の手軽な惣菜として定着している。
[編集] 名称の由来
日本語での発音として一般的な「ギョーザ」という呼び方は、山東方言の発音「ギァオヅ(giaozi)」に由来しているという説のほか、朝鮮語の「キョーヂャ」、満州語に由来するという説がある。山東方言説は、煙台周辺で硬口蓋音のjが軟口蓋音のgに近く発音されることによると思われるが、煙台周辺では「古飵(クーチャ、guja)」という言い方のほうが普通であり、「餃子」の発音も「キャオタ(giaoda)」や「キャオラ(giaora)」なので正しくなさそうである。主要都市の方言では、安徽省合肥で「チオザ」と発音しているのが比較的近い。
[編集] 中国での餃子
中国の華北で食べられる餃子は主食を兼ねたものが多く、皮は厚めにして湯に入れて茹でる食べ方の水餃子が主流であり、焼き餃子はあまり食べられない。もともと焼き餃子は残り物の餃子を焼いて食べるものであって、鍋貼(クオティエ、guōtiē)と呼ばれ、あまり上品な食べ物とは思われていない。鍋貼はむしろ華南で、点心の一種として出されることが多い。
中国で点心として食べられる餃子には皮や具や形に工夫を凝らし、皮に小麦粉ではなく米粉を使ったりなどさまざまなバリエーションが存在する。陝西省西安などには「餃子宴」と称する、違う種類の変わり餃子を次から次へと出すフルコースがある。
餃子は、その発音が交子(子を授かる)と同じであることや、清代の銀子の形に似ていることにより、縁起の良い食べ物としても珍重される。
[編集] 中国での餃子の具
中国では豚肉、白菜、ニラなどを使った一般的なものの他に下記の様な具のものがある。
[編集] 餃子の種類
- 焼餃子
- 基本的には、一度茹でた(あるいは蒸した)餃子を最後に焼く。
- 家庭で作る場合はフライパンや中華鍋、専門店では鉄板などを用いる。フライパンに並べた餃子に少量の油と水を加え蓋をして蒸して、水分が蒸発したら蓋を取り焼いて焦げ目をつける。
- 油で焼いて焦げ目をつけてから水を加えて蒸し焼きにする方式もあれば、それが誤りだという人もいる。
- 蒸す時の水に片栗粉や小麦粉を少量加えることもある。焼き上げたあとパリパリした薄皮ができ、これを羽根餃子(羽根付き餃子)と呼ぶ。
- これはおもに満州族(第二次世界大戦後の中華人民共和国では満族と呼ぶ。)の調理法で、現在の日本では最も幅広く浸透している。これは第二次世界大戦後に満州からの引き上げ邦人が日本に広めたためである。日本式の焼き餃子では肉の臭みを消すためにニンニクを入れることが一般化しているが、中国ではニンニクを入れることはほとんどない。
- 中国の焼き餃子は油たっぷりで焼くため、底面は揚げ餃子に近い仕上がりになっていることもある。
- 水餃子
- 現在中国での一般的な食べ方。焼き餃子よりも厚めの皮で作られた餃子をお湯で茹でたもの。タレを付けて食べる。皮が強くないと茹でる時に中の具がバラけて台無しになる。ゆえに作りおきが難しい。
- 日本国内で流通している家庭用の餃子の皮の多くは焼き餃子で作った際に最適の食感となる様に作られている為、水餃子には向かないものが多い。水餃子を作る場合は『厚手』や『水餃子用』と明記されているものを使用した方が無難である。
- 蒸し餃子
- 中国でも華中、華南の点心ではもっとも普通の食べ方。味が水に逃げず、皮の食感が楽しめる。タレは付けてもよいが、中国ではそのまま食べられる味付けになっている。変わり餃子もこのタイプが普通。
- 揚げ餃子
- 揚げ焼売も同じだが、日本ではなじみ深いが、中国で見かける機会は多くない。ただし、この調理法による料理は確かに中国にも存在している。
[編集] 関連する料理
- 棒餃子
- 近年、日本では、春巻きに似た形で鉄板焼きにしたものを棒餃子(ぼうギョウザ)または焼き棒餃子(やきぼうギョウザ)と称して出す店が増えている。しかし、中国では餃子とは呼ばず、「褡褳火燒(ターリェンフオシャオ、dālián huǒshāo)」と呼ばれている。着物の袖口に似ている焼き物という意味の名で、北京の下町のスナックであり、レストランで食べられることは少なかったが、近年は出す店も現れている。
- エビ餃子
- 粉果
- 豆腐の夾み蒸し
- 中国語で「醸豆腐(ニヤンドウフ、niàngdòufu)」と呼ぶもので、華南に移住した客家の人たちが、入手困難となった小麦粉の皮の代わりに切込みを入れた豆腐を用い、肉を入れて作ったといわれる。
- 卵餃子
- 中国語で「蛋餃子(タンジャオズ、dànjiǎozi)」と呼ぶもの。小麦粉の皮の代わりに、薄焼き卵を使ったもの。中国で冷凍食品として売られ、鍋料理の具として広まっている。
- 餃子巻き
- 手羽先餃子
- 鶏の手羽先に具を詰めて揚げたもの。
- 糖餃
[編集] 餃子と同様に小麦粉の皮で具を包んだ中華料理
[編集] 餃子の有名な街
餃子で知られる街には、宇都宮市や静岡市が代表的であり、特に宇都宮が有名である。
宇都宮市の餃子の始まりは、補充担任を宇都宮師管区とする陸軍第14師団が、昭和15年8月以降、衛戍地を満州としたことから、宇都宮出身の将兵が、帰国に際して本場の餃子の製法を持ち込んだのが始まりといわれる。宇都宮は総務省統計局の「家計調査年報」において「餃子消費量」で都道府県庁所在地中の常に上位にあがっている(調査はあくまでスーパーでの購入金額のみであり、専門店などで食べるものは含まれていない)。
市内には餃子専門店と餃子を扱う料理店が合わせて約200軒あり、1991年に業者団体として「宇都宮餃子会」を発足させ、観光PRに力を入れてきた。これが功を奏し、かつては日光・鬼怒川への通過都市といわれた宇都宮にとって、餃子は通過客だった人々を立ち寄らせる大きな観光資源となっている。 テレビ東京で放映されていた番組「おまかせ!山田商会」とタイアップしPR作戦をしたときに、山田邦子がデザインし地元の石材屋によって地元産出の大谷石で作られたオブジェがJR宇都宮駅東口広場に設置されている。また、「宇都宮餃子駅弁」などが作られた。JR宇都宮駅構内の立ち喰いそば屋には餃子そばというメニューがある。
また宇都宮市内に本店を持つ餃子専門店には、宇都宮市内だけではなく栃木県内各地に店舗展開をしているものもある。
ちなみに、2005年3月に廃止、翌年3月に閉場された宇都宮競馬場に、「宇都宮餃子会長賞」なる冠レースがあった(廃止直前は「宇都宮餃子会長賞リーディングジョッキー賞典」)。
静岡市は「隠れ・餃子の街」であり、宇都宮と餃子消費量日本一をここ数年間争っているが、市民には余り意識されていない模様である。歴史的経緯から静岡の餃子は満州経由ではなく、朝鮮半島から伝わった物ではないかと考えられている。昭和30年代後半から、静岡市内のいくつかの製麺業者が、家庭向けに餃子の皮を小分けにしたパックを製造している。
浜松市は餃子専門店が多く、浜松の餃子はモヤシを必ず添えるなど独特のスタイルを持つ。
神戸市では、 メニューが餃子と飲み物だけという専門店も多く存在する。
福島市では、餃子専門店を中心に「ふくしま餃子の会」が結成され、餃子の町としての観光PR活動を始めている。福島市内にある飯坂温泉では、餃子専門店の無料招待券が付いている旅行会社のパック商品もある。客層が勤め帰りのサラリーマンであるため、営業時間が夕方からの店が多い。全てというわけではないが、野菜が多い具を厚い皮で包み、円盤状に並べて焼き、それをそのまま皿の上に載せて出す餃子が多い。このようなタイプの餃子を出す専門店は、にんにくを入れず、薬味として使う店が多い。
餃子に関するテーマパークも作られている。