8トラック
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8トラック(8トラック・カートリッジテープ)は、カートリッジ式の磁気テープ再生装置および媒体の一種を指す名称である。2トラックのステレオチャンネルが4つあり、合計8トラックの信号が録音されていたため、この名前がある。日本では略して俗に「8トラ」(ハチトラ)とも呼ばれた。
アメリカのRCAビクター社が1965年にカーオーディオ用のメディアとして開発した。当時広く普及していたオープンリール式のテープレコーダーは自家用車で気軽に使うには取扱いが不便であり、また1962年に開発されていたコンパクトカセット(カセットテープ)は、テープ幅の小ささなどから当時は音楽用メディアとして認識されていなかったことが背景にある。
本来の用途であるカーオーディオのほか、日本ではカラオケ装置での音楽再生や、バスの車内放送など業務用途に用いられた。
構造面から再生専用に特化した傾向の強いメディアで、おもにミュージックテープとしてレコード会社から録音済みのカートリッジが発売されていた。据え置き型の録音再生機も一部メーカーから発売されていたが、一般化しなかった。
[編集] カートリッジの構造
媒体は幅6.35mmのテープの始端と終端をつないだエンドレステープで、1個のリールに巻かれており、リール最内周から引き出されたテープが、カートリッジケースの再生用の窓部分を経てリール最外周に巻き取られる構造になっている。リールはテープの引き出しによって受動的に回転し、カートリッジ外部からは直接駆動されない。その構造上、逆回転は不可能である。
構造上早送りによる曲の頭出しができずトラックを切りかえることで曲を選択する発想から、テープの長さは楽曲1曲分であり、4曲が1本のテープに平行して録音されている。カーステレオ用8トラックデッキの場合、再生ヘッドは2トラックのみであるが、テープをつなぐアルミ箔製のセンシングテープを検出して、再生ヘッドを自動的にテープ幅方向に移動する機構により、全トラックを連続的に再生する。
欠点として、エンドレス構造ゆえにテープに負荷がかかりやすく、テープ切断が発生しやすい点があげられる。カートリッジ開封後にテープをリールへ正しくセットすることが難しいため、レコード会社などが8トラックテープを補修する業務を請け負っていた時期もあった。
[編集] 衰退
1970年代後半以降、メディア・デッキとも8トラックより安価で長時間録音可能なコンパクトカセットが、音質や耐久性の向上で広く普及した背景もあって、カーステレオ用としては衰退した。それでも、巻き戻し不要(一方向回転のみで巻き戻し不可能)の特徴は、カラオケ用や業務用自動アナウンス(路線バスなどの車内放送)等に適していたことから、1980年代後半までは8トラックはまだ広範囲で用いられていた。
しかしその後、リピート再生が容易なコンパクトディスクやレーザーディスクといった代替メディアが普及、またアナウンス用途では音声合成による自動放送も出現するに至った。その結果8トラックの用途はほとんど廃れ、業務用の一部を除き現在では生産されていない。