P進数
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素数 p に対する p-進整数(p-しんせいすう、p-adic integer)は整数の p-進展開を利用した整数の拡張概念で、可算無限桁の整数と考えることができる。それに有限桁の小数部分をつける事を許したものが p-進数(p-しんすう、p-adic number)である。
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[編集] 定義
有理数体 Q の p-進付値が定める距離(p-進距離) dp(x, y) による完備化を Qp と表し、その元を p-進数と呼ぶ。Qp は Q における四則演算と距離空間の位相とを自然に拡張した演算と位相構造とを持つ。この四則演算に関して Qp は体をなし、演算はこの距離位相に関して連続である。この両立する演算と位相を持つ位相体 Qp を p-進数体という。
p-進数 x は、その付値 vp(x) が 0 以上であるとき、p-進整数とよび、p-進整数の全体の成す集合
を Zp であらわす。Zp は環を成し、p-進整数環と呼ばれる。
[編集] 概要
実数体 R を構成するには、距離関数として絶対値の定める距離 d∞(x, y) = | x - y | を採用して有理数体を完備化した。p-進数体は p-進距離によって有理数体を完備化のしたものである。p-進数と実数は大変異なる特徴を持つ別々の数体系である。一方で、数論などにおいて両者は極めて関係の深い仲間であることが知られ、実数体と全ての素数 p にわたる p-進数体をひとまとまりにしたアデールの概念が扱われることもある。
p-進数は素粒子物理学の理論などで使われることもある。
[編集] 性質
Ap = {0, 1, 2, ..., p−1} とする。 任意の x ∈ Qp に対し、整数 N と Ap における数列 {an}(ただし、添え字 n は N から始める)が存在して、
と一意的に展開される(N は x の p-進付値 vp(x) に一致する)。これを x の p-進展開という。逆に、Ap における数列 {an} があたえられたとき、和 ∑n = N∞ an pn は p-進距離に関して収束して、p-進数を一意的に定める。この展開は、整数環 Z の pn を法とする剰余環 Z / pnZ を n ≥ 1 の各値で考えたものたち(とそれらの間の自然な射影たち)の成す射影系 {Z / pnZ}n=1,2,... の射影極限として Zp が得られることを示している。このことから、極限として Zp を定義し、その商体として Qp を定義する流儀もある。{Z / pnZ}n=1,2,... の全ての元の共通部分は {0} なので、この展開は完備化の操作を具体的に記述したものと見ることができる。
Zp の単数群(可逆元全体の成す乗法群)は Zp× = {x ∈ Qp | vp(x) = 0} となる。Zp は局所環であり、その唯一の極大イデアルは
と表される。これは p で生成される単項イデアル (p) = pZp である。Zp の pZp による剰余体 Zp / pZp (これを通常は p-進数体の剰余体などと呼ぶ)は p-元体 Fp = Z / pZ に同型であり、上で用いた展開の係数の集合 Ap は、しばしばこれと同一視される。
Qp の任意の元 x に対し、x = upn (n = vp(x)) となる u ∈ Zp× が一意的に存在する。したがって、Zp は単項イデアル整域であり、その任意のイデアルは (pk) = pkZp の形である。
p-進数体は離散付値である p-進付値に関して完備で、剰余体が有限であるので局所体のひとつである。p-進距離の定める位相に関して Zp は Qp の開かつ極大コンパクトな部分集合である。同様に、Zp の任意のイデアルは開かつコンパクトとなる。さらに、これらのイデアルたちは 0 の基本近傍系を成す。特に、Qp は完全不連結 (totally disconnected) 局所コンパクト (locally compact) な位相体 (topological field) になる。
[編集] 関連項目
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