SCore
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SCoreとは、経済産業省による超並列処理研究推進委員会である新情報処理開発機構(RWCP)にて開発されたクラスター計算機用超並列プログラム実行環境のこと。
実行環境とは、並列プログラムが動作するための共通API(アプリケーションプログラムインタフェース)仕様に基づいたライブラリ群や補助ツール群といったプログラムを動作させるための基盤のことで、当初はUNIXをベースに設計されていた。
現在は、RWCPが解散したため、これらの実行環境を作成していた有志の会社/メンバによるPCクラスタコンソーシアム(PCCC(ピートリプルシー))が開発/普及活動をしている。
同様のLinux向けクラスター実行環境として、NASAの支援によるBeowulfがある。
[編集] 概要/経緯
OpenMPやMPI(Message Passing Interface)、MPC++といった並列プログラミング環境をサポートし、対話型実行環境、ギャングスケジューリング(管理者権限で、他のプログラムの実行を停止し、独占的に特定プログラムを実行させる事ができるスケジューリング機能)を含むマルチスケジューリング、マルチユーザ環境を持つ。 1992年に通商産業省(現経済産業省)により始められた、RWCP(Real World Computing Partnership)プロジェクトの専用コンピュータRWC-1用の実行環境として作成されていたが、汎用サーバでの同環境の提供が必要となり、1995年移植テストとして、まずSUNのSS20に移植された。 同年後半より汎用的且つ低価格化を目指してPentium/NetBSDに移植され、翌年にはLinuxへと移植されている。2001年のSCore5.0リリースを最後にRWCPプロジェクトチームは解散した。
その後、PCCCが活動を引き継ぎ、多くのPC-Linux系のクラスタに使用されている。
ノード間通信にはファイバーチャネル、Myrinet、InfiniBand、イーサネットなど、その時点で最新のネットワークを使用し、高速化を図っている。 RWCPで実証用に作成されたクラスターにおいては、RWC SCore Cluster IIが2000/11のTOP500リストで395位にランクインし、RWC SCore Cluster IIIが2001/6のTOP500リストで36位にランクインしている。
DNA解析など、比較的データ数が少なく計算量が多い処理において使用される事が多い。
本クラスター実行環境の各種情報及び、派生パッケージがオープンソースとして公開(特許は取得されている)されており、Beowulfと共に日本・アメリカでの比較的低予算なクラスター構成において多用されている。 日米以外の国によるLinuxクラスターの多くは、Beowulf/SCoreの何れかの資産を利用したものと言われている。