出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アゴヒゲアザラシはアザラシ科アゴヒゲアザラシ属に属する海棲ほ乳類。北半球最大のアザラシ。2002年頃首都圏の河川に出没し世間を騒がせたタマちゃんはアゴヒゲアザラシのオスである。
[編集] 分布
[編集] 形態
- 北半球最大のアザラシで体長は200-260cm・体重200-360kg。
- 体表に模様はなく体色は淡灰色~暗褐色。体の大きさに比べ頭部が著しく小さい。
- 名前の通り他のアザラシに比べヒゲがよく発達しているが、ヒゲは名前に含まれる顎からではなく上唇付近から生えている。
- 日本近海に生息するアザラシ5種のうち4種(ゼニガタアザラシ・ゴマフアザラシ・クラカケアザラシ・ワモンアザラシ)はゴマフアザラシ属に属するが本種のみがアゴヒゲアザラシ属に属する。
[編集] 成熟と繁殖
- 性成熟年齢はメスで5-6歳、オスで6-7歳。4月に氷上で一子を産む。交尾は5月でこの時期になると水中で発声する。
- 寿命は25-30年。
[編集] 生態
- 単独性で流氷野が移動する比較的浅い沿岸域を好む。流氷とともに春~夏は北へ、秋~冬は南へ移動する。北海道では流氷域に小数の子供が見られるが成獣は稀である。ゆえに日本の首都圏にアゴヒゲアザラシのタマちゃんが現われたことはきわめて稀なケースである。
[編集] 食物
- 潜水に適したアザラシであり、水深50-200mの海底で各種のカニやエビ、貝などの底性無脊椎動物やタラなどの底性魚を吸引し採食する。
[編集] 日本人との関係
- 20世紀の初頭、オホーツク海には23万頭生息していたといわれるが、旧ソ連が捕獲し減少した。獲頭数に規制を設けた結果1980年代の初めには19万頭にまで回復したとしている。
- 2002年東京都の多摩川にオスのアゴヒゲアザラシが出没し、タマちゃんと名付けられブームが起こった。2005年11月頃から徳島県阿南市の那賀川にアゴヒゲアザラシのナカちゃんが現れブームになっていたが、2006年8月末に中州で死んでいるのが見つかった。
[編集] 日本で見られる施設
[編集] 参考文献
- Ronald M. Nowak " Walker's Mammals of the World(Walker's Mammals of the World)" Baltimore : Johns Hopkins University Press(1999). ISBN 0801857899
- 和田一雄・伊藤徹魯 『鰭脚類 : アシカ・アザラシの自然史』東京 : 東京大学出版会 、1999年、284頁。 ISBN 4130601733
- 和田一雄編著 『海のけもの達の物語 : オットセイ・トド・アザラシ・ラッコ』東京 : 成山堂書店、2004年 172頁。 ISBN 4425981316
- 斜里町立知床博物館編 『知床のほ乳類』斜里町 : 斜里町教育委員会、 2000年。 ISBN 4894530813