イチゴ
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イチゴ | ||||||||||||
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イチゴ(苺、Fragaria)はバラ科の多年草。栽培種の茎は短縮茎であり、葉の縁には卵形で粗い鋸歯がある3枚の小葉が集まって複葉を成している。花期は春から夏で、花弁は白く5-8枚。
現在の栽培種はオランダイチゴであり和名になっている。一般にストロベリーといえばオランダイチゴを指す。オランダイチゴはオランダの農園でバージニアイチゴとチリイチゴの交雑によってつくられた。一方で栽培種と区別するために、野生種をヘビイチゴやワイルドストロベリーと呼ぶこともある。
可食部は花托の発達したものであり、表面に分布する粒粒がそれぞれ果実である。このような形態をとるものをイチゴ状果という。 独特の良い香りがあり、属名の由来にもなっている。属名の Fragaria はラテン語で「香る」の意。ビタミンCが豊富である他、抗酸化物質として知られるポリフェノールの一種であるアントシアニンを含む。生食の他、ジャムに加工されることも多い。 受精すると花托の肥大が始まるが、一部受精していない雌しべがあるとその部位の肥大が弱くなる。したがって形の整った果実をつくるためには、全ての雌しべが受粉するようにすることが大切である。最近の受粉の作業はビニールハウス内にミツバチを放して行わせる。流通しているイチゴの多くはハウス栽培によるものである。
また、粒の大きさを揃えるなどの見た目や収穫時期を考慮しなければ家庭菜園でも比較的に容易に栽培できる。地方によっては、自家用に畦道の脇に栽培していることもある。
目次 |
[編集] イチゴの品種
- 2倍体品種
- Fragaria daltoniana
- Fragaria iinumae (ノウゴウイチゴ)
- Fragaria nilgerrensis
- Fragaria nipponica (シロバナノヘビイチゴ)
- Fragaria nipponica f. rosea (ベニバナヘビイチゴ)
- Fragaria nipponica var. yakusimensis (ヤクシマシロバナヘビイチゴ)
- Fragaria nubicola
- Fragaria vesca (エゾヘビイチゴ)
- Fragaria viridis
- Fragaria yezoensis (エゾクサイチゴ)
- 4倍体品種
- Fragaria moupinensis
- Fragaria orientalis
- 6倍体品種
- Fragaria moschata
- 8倍体品種と雑種
- Fragaria × ananassa DUCHESNE (オランダイチゴ )
- Fragaria chiloensis (チリイチゴ )
- Fragaria iturupensis Staudt
- Fragaria virginiana (バージニアイチゴ )
- 10倍体品種と雑種
- Fragaria × Potentilla
- Fragaria × vescana
[編集] 日本における商業栽培品種
- とよのか
- 九州を中心に広く栽培される。酸味が少なく大粒で甘い。(粒が多いほうが甘い)
- 女峰(にょほう)
- 主に東日本で栽培される、甘酸っぱい味が特徴。うどんこ病に弱い。
- とちおとめ
- 栃木が原産。女峰より粒が大きく甘さも強い、日持ちが良い新品種。
- 章姫(あきひめ)
- 女峰の酸味、病害抵抗性などの問題点を解決するため育成された。休眠が浅く、暖地での施設栽培に向く。
- アスカウェイブ(あすかうぇいぶ)
- 久留米促成3号、宝交早生、ダナー、神戸1号を素材として育成された系統を両親とする品種。奈良県農業試験場が開発し、アスカルビーが開発されるまで、同県での主力品種。赤みが強く、甘みと酸味のバランスがよい。
- アスカルビー(あすかるびー)
- アスカウェイブと女峰を掛け合わせて2000年に登録された新品種。果実は円錐形で赤く艶があり甘みも強い。宝石のように見えることからこの名が付いた。登録前の名称は「奈良7号」。奈良県内の他、近年は全国各地での生産も多いが、別のブランド名になっているものが多い。
- アイベリー
- 普通のイチゴの2・3倍の大きさがある。愛知県で育成されたことから、この名前が付いた。
- とちひめ
- 中まで色が赤く甘さが強い、果実が軟らかいため観光イチゴ狩り用。
- レッドパール
- とよのかとアイベリーの交配種。両者の特徴に加えとちひめ同様中まで赤い。生産量が少ない種。ケーキ、高級菓子用。
- さちのか
- とよのかとアイベリーの交配種。糖度、ビタミンC含量が高く、果実は硬めで日持ちがよい新品種。
- あまおう
- 「あ」かい、「ま」るい、「お」おきい、「う」まいの頭文字をとって名づけられた新品種。福岡では栽培品種がとよのかから急速にあまおうに置き換わっている。
- 宝交早生
- 休眠打破のための低温要求量が多く、寒冷地の露地栽培に向く。甘みが強く、果実が柔らかい。果実が柔らかいため、輸送性・棚もちが悪いため、現在ではほとんど流通していないが、一部の観光いちご園では栽培されている。うどんこ病に強いが萎黄病に弱い。
- 紅ほっぺ(べにほっぺ)
- 章姫とさちのかの交配種。章姫と比較、果心の色が淡赤・花房当たりの花数が少ない。さちのかと比較して、小葉が大きい・果実が大きい・花柄長が長い。
[編集] 雑学
- 英名のStrawberry(ストロベリー)の語源は「Straw(麦わら)を敷いて育てた」や「散らかす、一面を覆う、を意味するstrew(strawの古語)」などいろいろな説がある。
- 本来は夏の果物であるが、出荷量が最も多くなるのはクリスマスケーキの材料としての需要が高まる12月である。
- 秋口は、露地物とハウス物の端境期になるので、生食用のイチゴはほぼ全量を輸入に頼ることとなる。この時期、ケーキの材料には乾燥物や冷凍物のイチゴが用いられるため、味が極端に落ちる傾向がある。生鮮イチゴの主な輸入元はアメリカで、ついで韓国、ニュージーランド、オーストラリアである。冷凍イチゴの主な輸入元は中国で、ついで韓国、その他タイ、メキシコ、オランダ、チリなどから輸入されている。