ドイツ・メルヘン街道
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ドイツ・メルヘン街道 (Deutsche Märchenstraße)は、ドイツ中部の街ハーナウから北部の都市ブレーメンを結ぶドイツ観光街道の一つ。グリム兄弟とその童話や伝説にゆかりの地を結ぶ観光街道で、全長約600km。始点のハーナウはグリム兄弟の生誕の地、終点ブレーメンは、彼らの童話『ブレーメンの音楽隊』で名高い街である。元々、この2つの街を結ぶ街道が古くからあったわけではなく、途中の70以上の街がこの街道に参加し、断片的な道路を結び合わせ観光街道として整備したもので、1975年に組織された。
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[編集] 行程(主な観光地)
- ハーナウ (Hanau)
- グリム兄弟生誕の地。旧市庁舎前のマルクト広場に兄弟の銅像があり、その基台の銅板にここがドイツ・メルヘン街道の起点であると記されている。
- シュタイナウ (Steinau an der Straße)
- グリム兄弟の祖父が教会の牧師を務め、兄弟の誕生後、父が判事となり赴任した町。兄弟は1791年から1803年までこの町で過ごした。当時の地方裁判所(父が亡くなる1796年までグリム一家はその1階に住んでいた)がグリム記念博物館として残されている。ハーナウからシュタイナウまではゲーテ街道と共通の行程である。また、この街はドイツ木組み建築街道にも組み込まれている。
- アルスフェルト (Alsfeld)
- グリム兄弟と直接の関係はないが、木組家屋が数多く残る美しい町。
- マールブルク (Marburg)
- グリム兄弟が通った大学の町。兄ヤーコプは1802年から、弟ヴィルヘルムは翌1803年からこの地のマールブルク大学に通った。兄弟が入学したのは法学部であったが、教師のサヴィニー助教授はゲルマン法を学ぶ過程でドイツの民間信仰や伝説、民謡に興味を持ち研究していた。また、この教師を介してアヒム・フォン・アルニムとクレメンス・ブレンターノの2人の詩人に出会った。彼らはこの直後(1805年)に『少年の魔法の角笛』を上梓している。これらの出会いがグリム兄弟のその後を決定づけたともいえる。また、マールブルクは、1529年にマルティン・ルター、フルドリッヒ・ツヴィングリ、フィリップ・メランヒトンらによる宗教問答が行われた場所としても知られている。市内には聖エリーザベト教会をはじめ見所も多い。
- シュヴァルムシュタット (Schwalmstadt)
- ツィーゲンハイン、トライザといった小さな町を中心にいくつかの村が点在する森に囲まれた地方である。この地方の女性は、頭に鶏冠のような形の飾りが付いた帯を頭巾のように身につけるケプフェレという伝統衣装があり、未婚女性は赤のケプフェレをつけていた。フランスから「赤ずきん」の話が伝わった時、このケプフェレと結びついて、この地が「赤ずきん」の里となった。このほかにも、『こわがることをおぼえるために旅にでかけた男』などいくつかのグリム童話がこの地方に由来しているといわれる。
- ホムベルク (Homberg)
- アルスフェルト、シュヴァルム地方、ホムベルク、さらにこの先のフリッツラーまで、この付近では「ドイツ木組み建築街道」と多くの街を共有している。特にこの町では美しい木組みの民家がよく保存されている。
- カッセル (Kassel)
- グリム兄弟はシュタイナウで少年時代を過ごした後、この地で女官長をしていた伯母のヘンリエッテに引き取られ、中等高等学校に進んだ。1805年にはグリム兄弟の母親ら一家もカッセルに移り住んでいた。この年にパリから戻ったヤーコプは、この地でいくつかの仕事につき、最終的には公立図書館の副館長を長く務めた。市内にはヴィルヘルム・ヘーエ宮殿やヘーヴェン・ブルク城が遺されている。
カッセルからヘクスター (Höxter) までメルヘン街道は2つのルートに分かれる。東よりのゲッティンゲンを経由するのが『ホレおばさん』ルート、西よりのハン=ミュンデンを経由するのが『いばら姫』ルートと呼ばれている。
『ホレおばさん』ルート
- ゲッティンゲン (Göttingen) 『ホレおばさん』ルート
- 兄ヤーコプは1830年にゲッティンゲン大学の教授兼図書館司書となった。弟ヴィルヘルムも同時に図書館副司書となり、ついで翌年からは教授として文学の講義を受け持つようになった。だが1837年、二人は他の有力教授5人とともにハノーファー王の大学運営への介入に反対して、教授の職を追われ、一部の人はハノーファー王国からの退去処分となった。ヤーコプもハノーファー王国から追放された一人で、隣国ヘッセン侯国に属するカッセルへと帰った。ヴィルヘルムも翌年カッセルに戻っている。この事件はゲッチンゲン七教授事件と呼ばれ、ドイツ全土を挙げてこの7人の教授を称え、記念メダルが制作されたり、一大ブームとなった。また、市の中心、旧市庁舎前の広場にはグリム童話『ガチョウ番の娘』にちなんだ可憐な「ガチョウ番の娘リーゼル」の像がある。
『いばら姫』ルート
- ハン・ミュンデン (Hann. Münden) 『いばら姫』ルート
- ラインハルトヴァルト (Reinhardswald) 『いばら姫』ルート
- 森の中の小高い丘に建つザパブルクの城こそが『いばら姫』が眠っていた城の舞台であるとされている。城の壊れていない部分がホテル・レストランとして営業している。
合流後
- ボーデンヴェルダー (Bodenwerder)
- ドイツの有名な物語『ミュンヒハウゼンのほら男爵』の主人公ミュンヒハウゼン男爵の故郷がこの地とされている。ミュンヒハウゼン男爵の博物館があり、その前には男爵のユーモラスな像が建っている。
- ハーメルン (Hameln)
- 『ハーメルンの笛吹き男』で有名な町。この話は、メルヘンではなく史実に基づく伝説だが、街道の途中にある有名な伝説の残る町として人気が高い。
- フェルデン (Verden)
- メルヘンの森遊園地があるほか、競走馬の調教地としても有名。ドイツ唯一の馬博物館がある。
- ブレーメン (Bremen)
[編集] 参考図書
小澤俊夫、石川春江、南川三治郎 『グリム童話のふるさと』(新潮社、1986年) ISBN 4106019353
[編集] 関連項目
[編集] 外部サイト
- メルヘン街道公式サイト英語版