ペンテコステ
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ペンテコステ(Pentecoste)は、聖霊降臨(せいれいこうりん)または聖神降臨(せいしんこうりん)とも呼ばれる新約聖書にあるエピソードの1つ。イエスの復活・昇天後、祈っていた使徒たちの上に神からの聖霊が降ったという出来事のこと、およびその出来事を記念するキリスト教の祝祭日。教派により訳語は異なり、聖霊降臨祭、聖神降臨祭、五旬節(ごじゅんせつ)、五旬祭(ごじゅんさい)ともいう。
東方正教会では聖神降臨祭として十二大祭のひとつ。
復活祭と並び、教会暦での日付の起算日のひとつでもある。
[編集] 概説
聖霊降臨に関する記事は新約聖書の『使徒行伝』2章1節~42節にみられる。それによれば、復活したイエスは弟子たちに「近いうちに聖霊が降る」ことを告げて天に上っていく(キリストの昇天)。それから10日後、ユダヤ教の五旬祭の日に使徒とその他の弟子たちが集まって祈っていると、激しい風のような音が聞こえ、天から炎のような舌が降った。使徒たちは聖霊に満たされ、さまざまな国の言葉で語り始めた。地中海世界全域からディアスポラのユダヤ人たちがエルサレムに集まっていたが、使徒たちが自分の地域の言葉で語っているのを聞いて驚いた。ペトロが中心になってイエスの死と復活の意味について語ると多くの人が洗礼を受け、使徒たちのグループに加わった。これが聖書が語る聖霊降臨の出来事である。
歴史的にはペンテコステという名前はギリシャ語の"Pentékosté"(50の意)に由来しており、本来はユダヤ教の祭日シャブオット(Shavuot)のギリシャ語訳である。シャブオットは過越祭の50日後に祝われる祭りであり、もともとは春にえられる最初の収穫に感謝する農業祭であった。
シャブオットがキリスト教徒によって聖霊降臨の出来事と結び付けられ、後者が重視されたことから、宗教上は収穫感謝の意味は失われた。しかし農業祭としての色彩は、ドイツ、ギリシアなどの民俗に残っている。
キリスト教の聖霊降臨の日は、復活祭から(その日を第一日と)数えて50日後に祝われる移動祝日(年によって日付が変わる祝日)である。日付は毎年異なるが、西方では五月初旬から六月上旬の日曜日、東方では五月初旬から六月下旬の日曜日に行われる。
各国によって聖霊降臨の日の祝い方はさまざまである。たとえばイタリアでは炎のような舌を象徴して式中にバラの花びらをまく。フランスでは激しい風のような音がしたことをあらわして式中にトランペットがふかれる。ドイツでは牝牛に花冠をつけ引き回す。
また、ペンテコステ教会というキリスト教の一派は個人個人における聖霊の働きを強調し、その重要性ゆえ自らの教会にペンテコステを冠している。多くのキリスト教諸派において聖霊降臨が教会がたてられた日であるという認識がなされている。
聖霊降臨を描いた芸術作品は多いが、特に有名なものとしてエル・グレコの絵画『聖霊降臨』がある。
なお、ユダヤ教のペンテコステに関してはシャブオット、七週の祭り、五旬節を参照のこと。
[編集] 各年における聖霊降臨の祝日
西方教会(カトリック、プロテスタント等)での各年のペンテコステ | |
2002年 | 5月19日 |
2003年 | 6月8日 |
2004年 | 5月30日 |
2005年 | 5月15日 |
2006年 | 6月4日 |
2007年 | 5月27日 |
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