ミョウバン
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ミョウバン(明礬)とは、1価の陽イオンの硫酸塩 MI2(SO4) と3価の金属イオンの硫酸塩 MIII2(SO4)3 の複塩の総称である。
MIMIII(SO4)2・12H2O または MI2MIII2(SO4)4・24H2O, MI2(SO4)・MIII2(SO4)3・24H2O などで表され、陽イオン 1 mol あたり 24 mol の結晶水を含む。
結晶構造は [MI(H2O)6]+, [MIII(H2O)6]3+ 及び2個の SO42− から構成され、等軸晶系に属する。
溶解度が温度によって大きく変わるため温度によっては水によく溶け、水溶液は弱酸性である。
単にミョウバンといった場合、硫酸アルミニウムカリウム12水和物 AlK(SO4)2・12H2O を示すことが多いが、このほかにも鉄ミョウバン、アンモニウム鉄ミョウバンなどがあり、混同を避けるためにしばしばカリミョウバンまたはカリウムミョウバンと呼ばれる。カリミョウバンの無水物を特に焼きミョウバンという。
[編集] 用途
染色剤や防水剤、消火剤、皮なめし剤、沈殿剤などの用途があり、古代ローマ時代から使われてきた。上質の井戸がない場合、質の悪い水にミョウバンを入れて不純物を沈殿させて飲用に使うこともあった。また、脇の制汗・防臭剤としても使用されていた。天然のミョウバンは白礬(はくばん)とも呼ばれ、その収斂作用、殺菌作用から、洗眼、含嗽に用いられることがあった。
甘露煮などを作る際に、細胞膜と結合して不溶化することで煮崩れを防ぎ、またナスの漬物では色素であるアントシアニンの色を安定化して、紫色を保つ働きがある。ウニ(雲丹)の加工時の型崩れ防止・保存のための添加物としても使用される。多量に用いるとミョウバン独特の苦みを呈する。
温度の変化により溶解度が大きく変わる性質があり、溶解度曲線や単結晶生成の化学実験によく使用される。