ワイシャツ
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ワイシャツ("shirt" あるいは "dress shirt"、フランス語では"chemis")は、主に男性の背広の下に着用するシャツである。英語に倣い「ドレスシャツ」とも呼ばれる。前開きで、襟とカフスがついている。一般的に、このシャツの上にネクタイを装着する。
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[編集] 歴史
元々は、男女共用下着シュミーズ(フランス語 chemise、ラテン語 camisiaの変化。麻シャツの意)であった。16世紀~17世紀頃に服の切れ目で下着を見せることが流行し、白色の麻のシャツになった。なお、ヨーロッパの男性は1930年代にブリーフ、トランクスができるまで下着はcombination(下の長いワイシャツ)のみであった。その当時は長い下で股をおおっていたという。ワイシャツの両脇が短く、前と後ろだけが長く垂れているのはこの名残である。
[編集] 種類
ドレスシャツは、部位のスタイル毎にいくつかの種類に分類することができる。
[編集] 素材
通常、ドレスシャツには織布を用いる。最も一般的なのは、綿、麻、ポリエステル、ポリエステルブレンドなどで、絹が用いられたりもする。フォーマルなシャツの生地としては、ブロード織り、オックスフォード織りといった綿生地やポプリンといった生地が用いられる。よりフォーマルでないラフなシャツの生地には、コーデュロイやデニム、フランネルが用いられる。
[編集] 襟
- レギュラーカラー:最も標準的な襟の開きのシャツ。正装としてふさわしい。
- ナロースプレッドカラー:両襟の開きが狭い(60°程度)シャツ。
- ワイドスプレッドカラー:両襟の開きが広い(100〜120°程度)。ウィンザー公にちなんで、「ウィンザーカラー」とも呼ばれる。伝統的な英国風スタイルで、もちろんタイの結び方も「ウィンザーノット」が似合う。
- ボタンダウンカラー:襟の先端を前身頃にボタンで留めるシャツ。ポロの競技中に襟が風でバタバタと動かないようにボタン止めしたのが始まりと言われている。セミ・フォーマルなスタイルで、典型的なアメリカン・スタイルである。
- タブカラー:両側の襟をタブとよばれる紐でつなげた襟。タブの上からネクタイを通すので、ネクタイが浮き上がる。正装としてふさわしい。
- ピンホール:両側の襟をピンで止めた襟。タブカラーと同じような形状となるが、ピンがアクセントになる。
- ラウンドカラー:襟の先が丸くなったスタイル。
- ウイングカラー:襟の先が前に折れた立衿。「並衿」ともよばれる。タキシードやモーニングなどとともに正装用として用いられる。蝶ネクタイにちょうど良い。
- デュエボットーニ:イタリア語で2つの(デュエ)ボタン(ボットーニ)という意味。ボタン2つが入るため、襟が高くなる。ノーネクタイでも襟が映えるので、クールビズのアイテムとしてもてはやされている。ボタンダウンもある。
- オープンカラー:衿が開いた開襟シャツ。夏の暑い時期のために涼しさを求めた比較的ラフなシャツ。学生服の夏服などにも用いられる。
- クレリック:シャツの生地が白無地以外で、襟とカフスだけ白無地の生地を用いたシャツ。
[編集] カフス
- シングルカフス:最も一般的なカフス。片側がボタン、片側が穴がとなっていて、穴にボタンを通す。
- ダブルカフス(フレンチカフス):カフスを折り返して2重にし、両側の穴を重ねて、カフスボタンで止める。礼装用のシャツによく見られるスタイルである。
[編集] 日本語での呼び名について
[編集] ワイシャツ
「ワイシャツ」という言葉は、white shirt(白いシャツ)から生まれたといわれている。紳士服売り場で偶に「カラーワイシャツ」なる表示が出ている事があるが、この用法は当然ながら誤りと言える。
[編集] カッターシャツ
1918年に洋服メーカーの美津濃(現:ミズノ)が、「カッターシャツ」という名前のスポーツ用シャツを売り出した。ちょうど第一次世界大戦で「勝った」ことにかけて、美津濃の創業者・水野利八が名付けた。この商標が一般化し、とくに関西を中心とする西日本で用いられている呼び名である。特に学生服用のワイシャツの呼び名というイメージが強いとされている。
[編集] ドレスシャツ
英語の"dress shirt"をそのまま日本語読みにした呼び名。英語での"dress shirt"は、日本語でいうところの「ワイシャツ」とほぼ同じ意味合いであるが、日本語の「ドレスシャツ」という呼び名を一部の人々は「礼装用のシャツ」というイメージで捉えている。ただし、実際には英語で、礼装用のシャツは"boiled shirt"という。多くの人にとって「ドレスシャツ」のほうが「ワイシャツ」よりも洒落た響きがすることから、特に紳士服店で用いられる呼び名である。
[編集] サイズ
ワイシャツは体系の違いやデザインの趣向の違いにより、様々なサイズの既製品が発売され、またオーダーメイドによる販売も行われている。既製品を購入する場合、基本的には「首周り」と「裄丈」(背中の中心から袖の先端までの寸法)によりサイズを判別する。
[編集] その他
[編集] ホンコンシャツ
日本をはじめとする東アジアでは、夏の蒸し暑い気候に合わせて、半袖のワイシャツがよく用いられる。1960年代、「ホンコンシャツ」という名前で石津謙介が製作し、ヒットして日本に定着した。