交響詩
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交響詩(こうきょうし)とは、管弦楽によって演奏される単一の楽章からなる標題音楽のうち、作曲家によって交響詩(独:Sinfonische Dichtung、英:symphonic poem)と名付けられたものを言う。音詩(英:tone poem)や交響幻想曲(英:symphonic fantasy)などと名付けられた楽曲も、交響詩として扱われることが多い。標題つきの単一楽章の交響曲の一部には、交響詩と名付けても差し支えないようなものがある(リヒャルト・シュトラウスの『アルプス交響曲』など)。ロマン派を特徴づける管弦楽曲である。
原則として単一楽章で切れ目なく演奏される。楽曲の形式は全く自由である。
[編集] 歴史
古典派以前の歌劇や劇付随音楽の序曲に、交響詩の起源を見ることができる。これらの序曲は普通、歌劇全体の粗筋や雰囲気をあらかじめまとめて伝えるように作られる。この意味で序曲はストーリー性があり、一種の標題音楽となっている。後に、序曲が歌劇などの本体から独立して、単独で演奏会などで演奏されるようになる。ここから、序曲だけを独立して作曲することが19世紀に起こった。このような序曲を演奏会用序曲と呼ぶ。
一方、古典派の交響曲は、タイトルを持たないかニックネーム的なタイトルしか持たない絶対音楽として書かれたものがほとんどであったが、ベルリオーズは『幻想交響曲』においてイデー・フィックス(固定楽想)の手法や色彩的な管弦楽法を用い、標題交響曲を成立させた。
19世紀中頃、フランツ・リストはこれらの動きをさらに推し進めて、音楽外の詩的あるいは絵画的な内容を表現する楽曲として、新たに「交響詩」(Sinfonische Dichtung)の名を付けた。これが交響詩の始まりである。交響詩は後期ロマン派、とりわけ国民楽派の作曲家に好まれ、形にとらわれない民族主義的な音楽表現の形態として、自国の事物や伝説などに基づいた重要な作品が作られた。
現代音楽においては、ロマン派的な描写表現が重要でなくなり、交響詩の意味は失われた。しかしながら新ロマン主義の作曲家は、この題名とは相性がよかったようである。
[編集] 主な作曲家と作品
- リスト - 『前奏曲』、『マゼッパ』 など
- リヒャルト・シュトラウス - 『ドン・ファン』、『マクベス』、『死と変容』、『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』、『ツァラトゥストラはかく語りき』、『ドン・キホーテ』、『英雄の生涯』
- シェーンベルク - 『ペレアスとメリザンド』
- サン=サーンス - 『オンファールの糸車』、『ファエトン』、『死の舞踏』、『ヘラクレスの青年時代』
- フランク - 『呪われた狩人』、『プシシェ』、『魔神(ジン)』、『アイオリスの人々』
- ドビュッシー - 『海』
- デュカス - 『魔法使いの弟子』、舞踊詩『ラ・ペリ』
- ボロディン - 『中央アジアの草原にて』
- ムソルグスキー - 『禿山の一夜』(リムスキー=コルサコフの編曲による)
- ラフマニノフ - 『死の島』
- ストラヴィンスキー - 『うぐいすの歌』
- スメタナ - 連作交響詩『我が祖国』(全6曲、第2曲『モルダウ』が有名)
- ドヴォルザーク - 『水の精』、『真昼の魔女』、『野鳩』など
- シベリウス - 『フィンランディア』、『伝説』(エン・サガ)、『ポヒョラの娘』、『タピオラ』 など
- レスピーギ - 『ローマの噴水』、『ローマの松』、『ローマの祭』(ローマ三部作と呼ばれる)
- バルトーク - 『コッシュート』
- バックス - 『ティンタジェル』『ファンドの庭』『11月の森』『松の木が知る物語』
- ホルスト - 『惑星』、『エグドン・ヒース』
- ケクラン - 『ジャングルの掟』『ル・バンダール=ログ(おしゃべりな猿たち)』『燃ゆる茂み』
- ショーソン - 『詩曲』『ヴィヴィアーヌ』『祭りの夕べ』
- ラヴェル - 舞踊詩『ラ・ヴァルス』
- ファリャ - 交響的印象『スペインの庭の夜』
- グリフス - 『フビライ汗の悦楽宮』
- チャドウィック - 『アフロディーテ』『タモシャンター』
- コンヴァース - 『神秘のらっぱ吹き』『大衆車1000万』
- ツェムリンスキー - 『人魚姫』
- ラッグルズ - 『太陽を踏む者』
- ヴァレーズ - 『アメリカ』
- カーペンター - 『海流』
- ディーリアス - 『パリ、大都市の歌』『春初めてのカッコウの声を聴いて』『夏の庭』
- カルウォーヴィチ - 『寄せては返す波』『永遠の歌』『悲しい物語』
- ヴィーチェスラフ・ノヴァーク - 『永久なる憧れ』『パン』『トマンと森の精』
- 山田耕筰 - 『曼荼羅の華』