人道
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人道(じんどう)とは、人として従うべき道(倫理)を指す。人道主義(ヒューマニズム)にも含まれる同語であるが、近年では価値観の多様化に伴い、価値観の異なる他人と協調する上で重要視される概念である。儒教思想では天道に対比させられる概念であり、同義語には人倫がある。なお類義語である博愛主義との境界は、人道の概念が広域に及ぶに至って曖昧になりつつある。
[編集] 概要
道徳は、社会通念上に於いて守るべき規範(ルール)であるが、一定の価値観を共有する社会において普遍的に運用されており、特に価値観の異なる社会の中では通用しないケースも見られる。しかし人道は、ヒトという枠の中で用いられる事も有り、社会通念として以上に、ヒトという存在の有り様を問う概念といえよう。
そもそもヒトという概念は、人類の主観的な視点に基いた物で、古く家畜扱いされた奴隷は、所謂ヒトの範疇に含まれなかった。しかし奴隷制度の上で家畜扱いを被った奴隷が種族としてのヒトである以上、彼等もまたヒトとして享受できる権利を有すると考えられるようになった。(人種差別の項を参照の事)
現在では更に人道的な精神は拡充され、ヒトは動物の一種である以上、動物に対しても一定の権利があるという論調もあるが、それはさて置いても動物を扱う上でもヒトとして恥ずかしくない規範があると考えられるようになっている。(動物虐待の項を参照の事)
その一方で、戦時中に戦争行為を逸脱して自身の思想や嗜好・政治的判断により、他の人に対し人として許されざる行為を成したとされる個人に対し、人道上の見地から処罰が下される事がある。また使用される兵器に関しても、一定の倫理が求められ、(核兵器の扱いでは、戦勝国の論理がまかり通っていると非難も多いが)人道上にて使用が禁じられた殺傷力の強い兵器は少なくない(古くはダムダム弾や化学兵器等)。近代より戦争捕虜に対して、一定の「人間らしい扱い」が求められている。しかし戦時捕虜に対する虐待は近年でも発生しており、度々問題視されている。これらに関しては戦争犯罪を参照の事。
[編集] 人道支援
第二次世界大戦から半世紀以上経過した現在(2005年)においても、世界各国では紛争や災害による社会基盤の崩壊により、人としての生活が損なわれている人々が居る地域は少なくない。これらの地域に対して国際社会を先導する国際連合は人道的な見地から、その地域を援助する活動を行っている。これらの活動では、政治や宗教といった社会基盤となっている思想の異なる様々な国から、様々な価値観を持つ人々の手による支援が行われている。