依存症
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依存症(いぞんしょう)とは、精神に作用する化学物質の摂取や、ある種の快感や高揚感を伴う特定の行為を繰り返し行った結果、それらの刺激なしにはいられない状態。 この状態のことを「依存が形成された」と言う。依存症の原因になる行為はさまざまであり、それぞれその原因を冠して、アルコール依存症、ギャンブル依存症などの名称で呼ばれる。俗には中毒と言う場合もある(アルコール中毒、ギャンブル中毒など)。
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[編集] 診断基準
次の条件のうちいくつかを満たすとき、物質依存は精神疾患の可能性がある。
- 耐性が形成されている。
- 離脱症状がみられる。
- はじめの心積もりよりも大量に、またはより長期間、しばしば使用する。
- その行為を中止または制限しようとする持続的な欲求または努力の不成功がある。
- その物質を得るために必要な活動、物質使用、または、その作用からの回復などに費やされる時間が大きい。
- 物質使用のために重要な社会的、職業的、または娯楽的活動を放棄、または減少させている。
- 精神的または身体的問題がその物質によって持続的または反復的に起こり、悪化しているらしいことを知っているにもかかわらず、物質使用を続ける。
[編集] 病態
依存症は、中枢神経に作用する薬物依存症によるものと、それ以外によるものに大別できる。後者では、特定の行為を行ったとき内因性の快楽物質(ドパミンと考えられている)が生成されて脳内報酬系が賦活されて強い快感を生じ、それが一種の条件づけ刺激になると考えられている。前者では、この作用に加えて、摂取される薬物そのものが一種の快楽物質の代わりに働いたり、薬理的な作用で内因性の快楽物質の生成に関与すると考えられており、特に薬物依存症と呼ばれる。薬物依存症では、条件づけによる常習化以外にも、神経細胞が組織的、機能的に変質して薬物なしでは正常な状態が保てなくなる場合があり、この現象も薬物依存の形成に大きく関与していると考えられている。
[編集] 耐性
- 薬物依存の重要な要素として耐性がある。依存性薬物の中には、連用することによってその薬物が効きにくくなるものがあるがこれを薬物に対する耐性の形成と呼ぶ。薬物が効きにくくなるたびに使用量が増えていくことが多く、最初は少量であったものが最後には致死量に近い量を摂取するようになることすらある。このため、薬物の依存性の強さにはこの耐性の形成も大きく関わっているとされる。耐性が形成されやすい薬物として、アンフェタミン類、モルヒネ類(オピオイド類)、アルコールなどが挙げられる。
[編集] 離脱
- 離脱症状も、依存の重要な要素である。依存に陥った者は、不愉快な離脱症状を軽減したり回避したりするため、同じ物質(または関連物質)を探し求め、摂取する。離脱症状のため、依存は強化される。
- 依存物質の多くは脳内報酬系(ドパミン系)を賦活するが、物質連用によりドパミン受容体がダウンレギュレーションして物質に対する耐性が形成される。このため体内の物質濃度が低くなると、不愉快な気分を含む離脱症状が現れる。多くの依存性物質の離脱症状には、物質の種類に関係なく、不安症状やイライラ感が共通して含まれるのは、ドパミン系の抑制のためと言われる。
- 離脱症状が、著しい苦痛、または社会的・職業的または他の重要な領域における機能の障害を引き起こす場合、精神疾患として扱う。
[編集] 依存の分類
依存はその症状によって精神依存と身体依存に分類される。
[編集] 精神依存
- 使用のコントロールができなくなった状態。使用を中止すると、精神的離脱症状として強い不快感を感じる。該当物質(例えば酒)を探すなどの行動がみられる。
[編集] 身体依存
- 使用を中止することで痙攣などの身体的離脱症状(退薬症状、いわゆる「禁断症状」)が出現する。
- 精神依存はあらゆる物質(カフェイン、糖分など食品中に含むものも含め)や行為にみられるが、身体依存は必ずしも全ての依存に見られるわけではない。例えば、薬物以外による依存では身体依存は形成されないし、また薬物依存の場合も身体依存を伴わないものがある。
[編集] 社会への影響
依存性の強い物質の商取引は、消費者が商品を続けて購入せざるを得ないため安定して高値で売り続けることができる。そのため依存症患者を破産に追い込んで身体的にも経済的にも破滅に追いやることが多く、社会的な影響が大きいため、依存性の薬物のほとんどはあらゆる国で非合法化されている。他方、アルコールやニコチンなど比較的強力な依存性を持っていることが明らかでありながら合法的に売買されているものも存在する。また、法の規制をかいくぐるためにまだ規制リストに入っていない新規の薬物が脱法ドラッグ(時に合法ドラッグともいう)として流通している。