俗語
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俗語(ぞくご)は、教養として扱われない言葉一般のこと。
- 公式に用いられる言語体系ではない言語体系のこと。(中世ヨーロッパではラテン語が公用語であったが、ダンテは俗語(イタリア語)で『神曲』を書いた)
- 本来の表現が別に存在する非公式の語であり、正式な場所・公的な文章には用いられない単語あるいは言い回しの総称。(以下、本項で記述)
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[編集] 概要
隠語と重なる場合もあるが、往々にして限られたコミュニティでしか通じない隠語とは異なって、俗語は誰でも知っている言葉も多く含まれる。例えば英語のファック(fuck)という語や日本語のバカなどは、むしろ知らない方が珍しくすらある極めて一般的な語だが、公式な場面で用いられることはあり得ない。
[編集] 用途・用法
公式な場面、文語、公文書、学術文書などでは通常用いられないが、くだけた場面のみ用いられることの許される言葉のことであり、品のない言葉遣いとされる。また、対応する改まった言葉がある場合とない場合がある。
使い分けに関しては、まさに「状況に応じて」としか云えない部分もあるが、誤って用いると「学が無い」や「品性に欠ける」等の誹りを受ける以外に「信用が置けない」や「不誠実である」とされる事がある反面、用いない事で「頑な」や「親しみ難い」、更には「考え方が柔軟では無い」や「応用力・適応力が無い」とまで評される場合がある。
[編集] 主な起源や変化
略語や比喩表現、古語・方言などを元とする語も多いが、かつては地域的な表現という側面が強く、サブカルチャーなどが密接に関係する表現も多く見られる。今日のマスメディア発達に伴い、地域差は次第に薄れつつあるが、世代的な感覚語が含まれ、時代の流行に因っても変化する。所謂流行語もこれら俗語の範疇に含まれるが、流行語は数年でその存在が忘れ去られる事も珍しくないものの、俗語の中には半世紀以上の歴史を持つ物も珍しくない。流行語のように時代時代で注目を集めた人が作った造語も存在する。
流行語が誤用(?)のまま定着した例もあり、幾つかの感覚的な意味合いを含む物も多く、限定的な形容詞ながらも、広範囲で用いられる事もあるため、否定的な表現だったものが、時代的な変化を経て、肯定的な表現に用いられる事もしばしばである。
[編集] 主な例
[編集] 対応する改まった言葉がない俗語
- おなら
- 「お鳴らし」に基づく俗語。別な言い方に「屁」「放屁」「ガス」などがあり、英語ではおならをすることを"pass gas"という。しかし、屁(へ)というのは卑語であり、放屁というのは文章的な堅苦しい言い方である。
- もつ料理
- 主に牛・豚・鶏の臓物を味付けした上で煮たり焼いたりして食べるホルモン焼き、もつ鍋など。辞書では「ホルモン料理(焼き)」「もつ(料理)」「焼肉」「焼き鳥」などは俗語と注釈してあることが多く、また対応する改まった表現もない。このためこれらの料理が一般化した際に一般語として扱う場合もあり、たとえばNHKのきょうの料理では腸のことを「もつ」と呼んでいる。
[編集] 若者言葉・流行語から来ている俗語
- 最高・最低
- 「最底」は俗語でも間違いとされる。
- 締まらない
- 「締まりがない」の短縮形。
- 振る・振られる
- 好意を抱いていた異性に絶交される。→大抵は「フラれる」の形で使う。
- ムカつく
- 本来の意味は「胃に違和感を覚える、吐き気がする」の意だが、現代では「腹が立つ」の意。「ムカッとくる」の変形。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 林四郎・相澤正夫・大島資生・篠崎晃一(編著) 「例解新国語辞典」(第七版)、三省堂、2006年1月10日
- 山本麗子 「大根とモツのみそ煮込み」、日本放送協会、2005年