出入国管理
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出入国管理(しゅつにゅうこくかんり)とは、人が異なる国家間を出入りする場合に、当該国(政府)がその出入国を管理・情報把握することを言う。物品の出入りについては、手荷物検査などが出入国検査に付随して行われるが、貿易など物品の出入りのみを目的とする場合は、「出入国」とは言わず「輸出入」と言うのが普通である。
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[編集] 出入国管理の目的
[編集] 防犯
- テロリストや指名手配中の犯罪者が国境を越えて移動するのを防ぐため。現代的な主権国家では、主権域外に出た人間に対して警察権を行使できないため、国外逃亡されると犯人を逮捕できない。このため出入国管理が検問の役割を果たしている。
なお、人の国家間移動に際しては一定量の物品の携行が認められるが、これに関して税関検査、検疫などの手続きがある。
[編集] 防疫
- 現代では地球の裏側など生態系の大きく違う地域間で人や物資の移動が可能になったため、生態系を大いに擾乱する可能性のある生物(特に病原体)の移動を水際で阻止することは、出入国管理の重要な目的の一つである。特定の感染症が流行している地域との間では、渡航制限が敷かれたり、感染の疑いがある場合が上陸不許可となることがある。
[編集] 経済保護
上記の必要項目3つをCIQ(Custom・Immigration・Quarantineの略)と呼ぶ。
[編集] 出入国手続き
[編集] 旅券
旅券(パスポート)は、旅行者の国籍のある国の政府が発行する、出入国管理の際に提示を要求される国籍・身分証明書であり、出入国管理記録帳としての性格ももつ。ほぼ全ての国において旅券の所持は出入国の際に必須である。日本においては、旅券は各都道府県の旅券窓口ないし在外公館で申請して取得する。
- なお、国際条約などに明文があるわけではなく、したがって全ての国で適用されるとは言えないものの、国際的な慣例として、おおむね国家元首(原則各国1人)は出入国審査の対象外(国王はもともと旅券を作成しておらず、大統領は旅券を携行するが使わない)とされている。しかし、王族や閣僚(首相も含む。)の場合は、元首でないため、公用渡航であっても旅券への許可記載等の手続を必要とする(ただし、本人はいわゆるVIPルートを通るため(また、首相の公用渡航の場合は、通常羽田から政府専用機が使われる)同行の官吏が事後に代理申請する)例が多いとされる。日本においても天皇以外の皇族(皇后も含む。)は旅券の発給を得て渡航している。
[編集] 査証
査証は、渡航先の国に入国する際に必要となる証明書で、渡航前に渡航先の国の在外公館に申請して取得する。査証は通常、旅券に押印または貼付される。査証を事実上の入国許可とみなして入国審査時にほとんど拒否処分をしない制度の国(出入国管理の法令をいわゆる大陸法方式で定めた国に多い)と、査証を入国の「推薦文書」に過ぎないとして改めて厳格な入国審査を行う制度の国(出入国管理の法令をいわゆる英米法方式で定めた国に多い。日本もこちらに含まれる)があり、後者の国に渡航する者にとっては査証取得は必ずしも入国の保証とはならない。
- 入国審査の許否は建前上は法令に基づいて行われるが、現実には「挙動が不審である」等々その時に担当した審査官の心証がきっかけとなって、不法入国や不法就労が目的であると判明、入国不許可=国外退去となるような例も少なくない。
国際的な往来が増えた現代にあっては、各国間で査証相互免除協定が結ばれる例が増えており、その場合は前もって渡航予定先国の在外公館で査証を取得していなくても(入国審査まで免除とはならないが)短期間の滞在希望者に限り入国許可が可能となる。
[編集] 出国手続き
渡航制限
[編集] 入国手続き
検疫、上陸許可
[編集] 滞在許可と外国人登録
滞在許可は、ほとんどの国でいくつかの種類に区分されている。
- 通過 - 航空機・船舶の乗り継ぎ、国際列車の経由などのため、その国の領域を通過(宿泊も含む)するときに与えられる滞在許可。通常数日。
- 短期滞在(旅行、短期ビジネス) - 短期間その国に滞在する場合に与えられる滞在許可。入国審査は比較的簡略である。通常3か月以内。
- 長期滞在(就学、就労) - 就学や就労など、長期間にわたって滞在する必要がある場合に与えられる滞在許可。審査基準は厳しく、受入れ証明(入学許可書、雇用契約書など)のほか、特に就労の場合は一定以上の実績(業務上の経歴・スキル等)がなければ与えられない。通常3か月以上4年以内。
- 永住 - 国籍は異動しないが、渡航先の国に永久的に居住することが認められた場合に与えられる滞在許可。長期間の婚姻・就労など、渡航先の国で安定した生活基盤を持っていて、一定以上の犯罪歴がないなどの条件が必要になる。滞在許可の期限を過ぎてなおその国に滞在しようとする場合は、滞在許可を更新しなければならない。滞在中の実績によっては、滞在許可の更新が拒否されることがあり、この場合はその国から出国しなければならない。
[編集] 関連項目
出入国管理機関
在外公館 (大使館, 領事館) - 税関 - 入国管理局
不法な入出国
不法滞在 (不法残留, 不法出入国) - 密輸
[編集] 外部リンク
- 外務省
- 法務省入国管理局フロントページ
- 法務省入国管理局ホームページ
- 第3次出入国管理基本計画
- 特定非営利活動法人グローバル人材育成協会 - 「ヒトの移動」(専門的,技術的分野における外国人労働者の受入れの推進、人口減少時代への対応、留学生,就学生の適正な受入れ、研修・技能実習制度の適正化、長期にわたり我が国社会に在留する外国人への対応)に関する民間レベルの提言、会議、支援、提案等を行う。
- 日本経団連「第三次出入国管理基本計画における主要な課題と今後の方針」に対する意見ならびに要望