北海道国際航空
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北海道国際航空(ほっかいどうこくさいこうくう)は、北海道札幌市中央区に本社を持つ日本の航空会社である。
愛称・通称はAIR DO(エア・ドゥ)。
「国際」とあるが、国際線の運航はしていない。2002年6月に東京地方裁判所に民事再生法適用を申請し、全日本空輸(ANA)の支援を受け再建中であったが2005年3月に再建完了した。
目次 |
[編集] 概要
社名 | 北海道国際航空株式会社 Hokkaido International Airlines Co.,Ltd. |
設立 | 1996年11月14日 |
本社住所 | 北海道札幌市中央区北1条西2丁目9 オーク札幌ビル8階 |
従業員数 | 490名 |
資本金 | 2,325,000,000円 (企業再建ファンド96.07%他) |
航空会社コード | ADO / HD |
無線呼出名称 (コールサイン) |
AIR DO(エア・ドゥ) |
拠点空港 | 新千歳空港 |
[編集] 沿革
[編集] 発端
北海道と東京との間はかつて(1960年代まで)、鉄道(東北本線、函館本線など)と青函連絡船を乗り継ぐなどしてまる一昼夜以上かけて往来していたが、航空機の普及後はそれが第一選択肢となった。 千歳と羽田を結ぶ航空路は年間輸送人員1千万人に届こうとする世界一の路線となり、北海道の経済は航空路に極度に依存する状態になっていた。
1970年代以後、日本の航空業界がJAL、ANA、JASの大手3社の寡占状態にある中、運輸省は1995年12月、標準的な原価を上限として、他社との競争や季節、時間帯、路線の特性等を踏まえて、航空会社が一定幅の中で自主的に運賃を設定できる「幅運賃制度」を導入することとし、1996年6月から移行した。
養鶏業の「北海スターチック株式会社」を経営する浜田輝男は、この動きを期待を持って見ていたが、実際に移行してみれば各社間の価格差は300円ほどしかなく、さらには往復割引制度が廃止されたために実質的には5000円程度の値上げ状態にあった。浜田はこれに憤慨し、地元紙に投稿したり、異業種交流の会合で、「道内経済界で結束し新規航空会社をつくって参入し、大手航空会社に主導権を掌握されている状態を打破して北海道経済の安定化と活性化につなげよう」と北海道内のベンチャー企業などの若手経営者を中心に呼びかけた。
[編集] 設立
行政改革委員会の規制緩和小委員会で、航空業界が実質的な参入規制状態にあったことに批判の声があり、羽田空港の新規発着枠を新規参入事業者に優先的に配分するよう要請するなどの追い風も吹き、浜田のアイディアは急速に脚光を浴びた。
大学教官、医師、弁護士、印刷会社経営者などの若手29名が集まって出資しあい、航空会社設立を目指す調査企画会社として、1996年11月14日、北海道国際航空株式会社を資本金1430万円で札幌市に設立した。 将来的に、サハリンなど、北海道や札幌市が交流を進めている『北方圏』諸都市への近距離国際線の就航を目指すとし、社名に「国際」の名を入れた。 この時点では北海道経済連合会、経営者協会などの各団体や北海道電力などの大手企業をはじめとする道内経済界はこの構想に懐疑的な立場だった。 また、旅行会社「株式会社エイチ・アイ・エス」も、規制緩和にビジネスチャンスをとらえ、新規参入を目指しており(後のスカイマークエアライズ(SKY 現スカイマーク))、浜田らの動きとの合流もしくは共同関係を模索していたが、利益が中央に流れる本州資本ではなく、あくまでも道民主導による内発的な会社によって運営されることで利益が地元に還流される構造と、それによる地域振興を目指す立場のため、これに合流しなかった。
その後も地道に支援を取り付ける活動を進め、やがて、1996年12月の登別市議会をはじめ、1997年7月には北海道議会、最終的に北海道内の8割を超える自治体から支援決議を受けたほか、趣旨に賛同する個人や自治体、道内企業から多くの出資や融資を得た。 1997年5月に元ヴァージン・アトランティック航空日本支社長の中村晃を代表取締役社長に迎え、1998年7月には公募により愛称を「AIR DO(エア・ドゥ)」に決定。1998年6月には定期航空運送事業の路線免許を運輸省に申請、受理され、1号機が納入された。1998年7月、中村が会長に、浜田が社長に就任した。1998年10月26日に路線免許が交付され、11月から予約受付を開始した。
[編集] 運航開始~破綻
1998年12月20日、新千歳-羽田間に第1便を就航した。 大手の半額の運賃を目指していたが、まだ基盤が弱く、大手の6~7割程度の運賃でスタートした。就航直後は搭乗率で一時優位に立ったが、大手各社も同程度の価格まで実質運賃を引き下げて対抗し、1999年のADOの搭乗率は40~60%程度と低迷。また就航前の機体リース料などの初期投資、日本航空(JAL)に支払っていた整備委託費などの負担が解消しきれないなど、なかなか軌道に乗せることができなかった。
低迷が続く中、カリスマ的存在だった浜田が2000年に急死して以降は深刻な経営状況が続いた。このため、北海道庁が巨額の税金を投入し道庁幹部を社長に派遣、北海道電力など道内大手企業も出資に応じた。だが、立ち上げ当初に主力となった日本航空からの転籍組が去り、航空業界のプロも不在で経営はさらに迷走。新千歳-羽田線はADOの就航後幾度となく値上げされたうえ、新千歳以外の道内路線就航がなかったため求心力は低下。さらなる道庁への融資を北海道議会に拒否され、政府への空港着陸料の滞納、海外航空機リース会社とのリース料減額交渉の不発も重なり、2002年6月に債務超過に陥ったため自力再建を断念し、民事再生手続を開始した。
[編集] 民事再生~現状
民事再生計画の中でANAが整備、販売システム提供を支援。さらに、すべての便をANAとの共同運航(コードシェア)便にすることで一定の座席販売を肩代わりしてもらい搭乗率向上を図った。かつては道民有志による持ち株会が株主だったが、全額減資し、新たに日本政策投資銀行が組成する匿名組合ファンドがANAや石屋製菓、北海道新聞などから出資を募っている。共同運航を含むANAの支援と、搭乗率が良好な数値で推移したことから、当初2006年までの予定であった民事再生計画を1年前倒し、2005年3月に再生を終了した。
なお、民事再生中に、同じ新規航空会社のスカイマークエアラインズ(現スカイマーク)から経営統合の提案を受けたが、ADOはこれを拒否した。その結果、SKYは2006年4月に単独で羽田-新千歳線に参入する方策を選び、真っ向から対立することになった。初めて新規航空会社同士が同一路線で激突することから、大手二社を含む価格競争が注目されたが、道内での認知度に大きく差があること、就航前にSKYに運航トラブルや機体整備不良等の不祥事が発覚したことから、SKYの搭乗率は伸び悩む一方で、ADOの搭乗率はSKY就航前と同等の水準を保つ結果となっている。また新千歳~伊丹・中部国際便などへの参入によって羽田空港の発着枠確保に制約されない路線の構築も模索している。
[編集] 特徴
[編集] サービス
- 当初は搭乗券はゲート(改札)でグランドホステスが手でちぎる形態だった。現在はANAの自動改札機、自動チェックイン機を利用可能。(自動チェックイン機は証明書等の提示が必要な割引運賃利用時を除く)
- ビール、ワインなどアルコール飲料は有料。ジュース・コーヒー類は一部を除き無料。
- 機内誌は「ラポラ」という30ページほどのものと、手作り感あふれるつくりの「ようこそAIR DOへ」という、簡単なものと2バージョンあり。
- ヘッドホンは大手他社のように座席ポケットに入っておらず、音楽を聞きたい場合は客室乗務員(CA)から受け取る。B767でのみ対応し電気式ではなく、空気式。B737では音楽サービス無し。
[編集] 低価格な航空券
他社が運賃を下げたと言っても、ADOが羽田-新千歳路線の最安航空会社であることは変わっていなかった。しかし、2006年4月28日に同路線に新規参入したスカイマークは、ADOよりも低価格で航空券を販売(6月2日まで大人普通運賃10,000円、6月30日まで大人普通運賃16,000円~7日前予約で最低10,000円)する事を発表している。よって、ADOの価格面での優位が将来まで続くかどうかについては未知数であるが、スカイマークは一連の整備不良問題や、機内誌や飲料の配布が無いなどサービスを簡略化しているため、利用客がどちらを選ぶかは微妙なところである。(2006年10月現在、スカイマークの方が搭乗率の面で不振なのに対して、AIR DOの搭乗率はさほどの影響を受けていない。)
- AIRDOスペシャル:最安価格。45日前までに予約の事前購入割引運賃。通常期運賃が片道10,000円と非常に低価格。多客期には設定されないことが多かったが、2006年8月には12,000円で実施、9月以降は路線や条件によって若干値上げしている。
- DOバリュー28:28日前までに予約の特定便割引運賃。AIRDOスペシャルの次に低価格な航空券。ただし多客期には設定されないことが多い。DOバリュー28の設定により、事前購入割引運賃のDOバリュー21は2006年3月31日に設定が終了された。
- DOバリュー7、DOバリュー1:特定便割引運賃で、他社の特割と似ている。前者は7日前まで、後者は前日までに予約した場合の運賃。
- DOきっぷ6:無記名式6回回数券。
- 道民割引:「北海道に在住、本籍を有している方、または本社所在地が北海道の企業の方」のための割引。購入時および搭乗手続きの際、「道民カード」の提示が必要。道民カード所持者と配偶者および道民カード所持者の二親等以内の者も、同一便の場合のみ利用できる。ANAの自動チェックイン機は使用できない。
- 身体障害者割引運賃:身体障害者(第1種・第2種)と、戦傷病者手帳・療育手帳に「航空割引」の証明印が押印されている人が対象で、第1種身体障害者に同伴する介護人(同一便の場合)も利用可能。予約の際にその旨を申し出、購入時および搭乗手続きの際、前述の手帳の提示が必要。ANAの自動チェックイン機は使用できない。
- DOシルバー:搭乗予定日に65歳以上の乗客が対象。購入時に、満年齢が65歳以上であることを証明できる公的証明書か、他航空会社のシルバーカードの提示が必要。
- DO学割:予約可能な学生向け割引。ただし、設定のない期間がある。スカイメイトよりは高い。学校教育法(昭和22年法律第26号)第一条の規定による幼稚園を除く小学、中学、高校、大学、専修、各種学校等の学生および生徒、または国際学生証を持つ者が対象。購入時および搭乗手続きの際、「学生証」、「国際学生証」の提示、または在学証明書の提出が必要。ANAの自動チェックイン機は使用できない。
- AIRDOスカイメイト:予約不可、空席待ちのスカイメイト。「満12歳以上26歳未満」という点が22歳未満の他社と異なる。また、スカイメイトカードは不要。免許証、保険証、学生証、他社のスカイメイトカード等で発券可能。
◎DOマイル:AIR DOのマイレージサービス。同一人名義の搭乗半券8枚(最近18ヶ月以内、無料航空券、団体運賃・包括旅行運賃を除く)を郵送することで、片道分の無料航空券引換証(90日間有効)と引き換えることが可能。
[編集] 路線
2006年2月現在。運航便数は夏季と冬季で異なる路線もある。予備機材がないため、定期点検時に機材変更や運休便が出ることもある。
基本的にドル箱の東京-北海道間のみを結ぶ路線のみを開設し、他県と北海道を結ぶ路線は開設していない。こうした一路線集中の運行形態が経営危機をまねく遠因となったとの指摘も一部にはあるが、将来的には新千歳空港と大阪や名古屋を結ぶ路線の開設も視野に入れているという報道もある。
[編集] 使用機材
2006年1月現在。
- ボーイング767-300ER×2(JA98AD, JA01HD)
- ボーイング767-300(全日本空輸からのリース機、JA8258)
- ボーイング737-400×2(エアーニッポンからのリース機、元「アイランドドルフィン」。JA391K, JA392K)