南海22000系電車
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南海22000系電車(なんかい22000けいでんしゃ)とは、南海電気鉄道に在籍していた通勤形電車の一系列で、「ズームカー」の一系列。「通勤ズーム」「角ズーム」とも通称される。なお、本稿では本系列の改造により派生した系列である2200系電車、2230系電車、2270系電車についても記載する。
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[編集] 概要
高野線の山岳区間直通運行用(大運転)高性能車としては、21000系を1958年~1964年に新製した。大運転は急行として運行するために、当時宅地開発の進行で乗客数が急激に増加していた河内長野以北で、4両編成の車内は相当な混雑を呈していた。そこで21000系に河内長野以北で2両増結し6両編成で運行することで混雑緩和を図るのを目的に、本系列の1次車2両編成4本を1969年に導入した。
その後大運転急行は橋本以北の乗客増に伴い、更に編成長を長くする歴史をたどり、1995年~2003年の間は河内長野以北で朝ラッシュ時に10両運転を実施するまでに至っている。
元来増結用が目的であったため、本系列は全て2両編成で新製されている。製造は22028までは東急車輛製造大阪製作所が担当したが、帝国車両から継承したこの工場での鉄道車両製造は1971年で打ち切られたため、それ以後に発注された22029~22032については東急車両横浜製作所が担当した。
車体は普通鋼製で、客用ドアは1.3m幅の両開き扉と、一枚下降式の側窓を採用した。前面は21000系の非貫通型に対し貫通型となった。7100系を17m2扉車にしたようなスタイリングで、座席も全席ロングシートである。
制御方式は抵抗制御で21000系と同一性能だが、電装品は1973年の架線電圧1500Vへの昇圧に対応して複電圧仕様とされ、制御器も21000系は4個の電動機を制御する1C4M方式から南海としては初採用の1C8M方式に変更されている。
1970年に大運転に一部残っていた旧型車の1251形を全て置き換える目的で2次車10本20両を新製し、極楽橋直通にも編成を2本併結して充当するようになった。最終増備車である1972年度の3次車2本4両は新製時から分散式の冷房装置を搭載し、パンタグラフは下枠交差式となった。1・2次車も後に冷房搭載し、パンタグラフも菱形から変更している。
そして21000系の代替として2000系が新製されると、本系列は21000系に加えて2000系とも併結するようになる。その併結運用時代の1992年11月ダイヤ改正で高野線急行が金剛に停車するようになり、これに伴い高野線のダイヤ乱れが常態化するようになった。このダイヤ改正時点で本系列は、支線区に残っていた吊り掛け非冷房車1521系等の置換え用と、一部は大運転で継続して使用するために更新・改造の上全車両を車号変更する計画であったが、その後の計画変更により大運転用は2000系に統一する方針に変更され、大運転からは離脱することになった(2005年よりこの大運転には2300系も充当されている)。
本系列は1993年以降の更新により2006年現在、以下の系列番号を与えられている。
- 2200系
- 2230系
- 2270系
2006年4月現在は、2200系、2230系が高師浜線などの支線運用についている。2270系は2006年4月に和歌山電鐵に譲渡された。
また、22003-22004の編成は熊本県の熊本電気鉄道に譲渡され、200系電車として運用されている。
[編集] 2200系
3編成6両が在籍する。
当初から支線運行用に更新改造した2230系と異なり、大運転で継続使用する目的で車体内外装を更新し、同時に車椅子スペースも設置している。しばらく高野線で使用されていたが、2000系の追加新製によって、支線用に転出した。
支線転出時にワンマン運転対応改造を施工している。
[編集] 2230系
3編成6両が在籍する。
本系列は、1521系非冷房車が運用されていた各支線の冷房化及び経営合理化に伴うワンマン運転化を目的として改造されている。
上記の2200系との違いは、2両編成単独運用を前提としているために正面貫通路の幌枠及び貫通幌を撤去、電気連結器の撤去、各駅のホームとの兼合いから床面高を6cm上げていることなどである。
[編集] 2270系
本系列は老朽化した1201形の置換え用として、貴志川線での運用に対応した改造を施工した。スタイルは2200系・2230系とかなり違う印象を受ける。6編成12両が在籍していた。
- 改造内容は下記の通りである。
- 前面の非貫通化。
- 列車無線を貴志川線用に交換し、周波数が異なるため列車無線アンテナも変更。
- ワンマン運転化改造。
- 扉の一部改造。
- 運転室直後に移設の上、片開き扉に変更。車端側は両開き扉を存置。
- 貴志川線の架線電圧は600Vの為、1500V対応から1500/600Vの複電圧対応化。
- 複電圧仕様にしているのは、南海本線内での自力回送を可能にするためである。ただし、南海線内の走行は直列段のみ使用の運転となるため、運行速度に制限がある。
- 600Vの貴志川線では、モーターの端子電圧が1500V時の375Vから300Vに下がるため、出力も90kW→70kWに下がる。
貴志川線は2006年4月1日に和歌山電鐵へ営業譲渡され、それに伴い本系列は全車が無償譲渡された。
今後、4色のパターンの新カラーリングに変更のうえ、内装のリフレッシュも行われる予定である。更新のプロデュースは九州旅客鉄道(JR九州)の特急車両を始めとする各車両や、岡山電気軌道の「MOMO」や「KURO」のデザインを手がけた水戸岡鋭治によるものである。
第一弾として、2271Fが伊太祁曽車庫でリニューアル工事(大阪車輌工業による出張工事)を実施し、2006年8月6日から「いちご電車」の愛称で運行を開始している。
南海電気鉄道の車両 |
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現用車両 |
南海線:50000系・10000系・7000系・7100系・9000系・1000系 高野線(大運転):31000系・30000系・2000系・2300系 高野線(区間運転):11000系・6000系・6100系・6200系・6300系・8200系・1000系 支線・鋼索線:2200系・2230系・コ11・21形 |
過去の車両(昇圧後在籍) |
南海線:旧1000系・1521系・キハ5501・5551形 高野線:20000系・21000系・22000系・8000系 貴志川線:2270系・モハ1201形・クハ21201形 |
過去の車両(昇圧前在籍) |
南海線:電7系・モハ2001形(電9系)・簡易半鋼車・モハ1551形・11001系・12001系・2051系・サハ4801形 高野線:モハ1251形・クハ1900形 |
電気機関車 |
ED5105形・ED5121形・ED5151形・ED5161形・ED5201形 |
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