国鉄キハ66系気動車
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キハ66系気動車 | |
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最高速度 | 95km/h |
最大寸法 (長/幅/高) |
20,800×2,900×4,077(mm) |
定員 | 98名(キハ66形) 100名(キハ67形) |
機関出力 | 440PS(DML30HSH×1)*1 420PS(DMF13HZA×1)*2 |
駆動方式 | 液体式 |
変速段 | 変速1段・直結1段 |
ブレーキ方式 | |
保安装置 | |
備考 | *1:製造時 *2:現在 |
国鉄キハ66系気動車(こくてつきは66けいきどうしゃ)は、旧・日本国有鉄道(国鉄)が1974年(昭和49年)から北九州地区の輸送改善を目的に設計・製造した一般形気動車のグループである。
同一形態を備えるキハ66形とキハ67形の2両で1ユニットを組む。キハ67系、あるいは両形式を一まとめにしてキハ66・67系と呼ばれることもある。製造メーカーは新潟鐵工所と富士重工業の2社である。
目次 |
[編集] 概要
山陽新幹線の博多開業(1975年3月)に先立ち、筑豊・北九州地区の新幹線連絡輸送に使用する目的で開発された。両開き2ドア車体に座席間隔910mmのゆとりある転換クロスシートと冷房装置を備え、定格出力440PSのエンジンを搭載。名目は一般形であるが、従来の急行形気動車をしのぐ水準の設備を有する車両であり、実際に1980年までは急行列車にも使用された。
搭載機器が複雑で高コストなこともあって、2両編成15本計30両が1975年までに製造されたのみに終わったが、それまでの国鉄車両の固定化したデザインから一歩踏み出した意欲的な車両として評価されている。気動車としてはキハ40系に、電車では117系の設計に大きな影響を与えている。
2006年現在、30両全車が九州旅客鉄道(JR九州)で快速・普通列車に使用されている。
[編集] 構造
※ここでは製造当初の構造について述べる。
[編集] 車体・内装
キハ66形・キハ67形とも片運転台車で、全長21.3m(車体長20.8m)、車幅2.9mと、急行形気動車と同等の大型車体であり、塗色も当初は急行形気動車同様の赤とベージュのツートーンカラーであった。前頭形状は正面貫通形で前照灯はシールドビーム2灯を上部に配置し、種別表示器を設置している。これは急行形気動車のキハ58系末期形・キハ65形に類似した形態である。運転台は急行形気動車よりも更に高い位置に置かれ、踏切衝突事故に対して厳重に備えた。
側面は、それ以前の国鉄車両にはあまり例のない形態となった。車体端部からやや中央寄りの2ヶ所に、幅1.3mの両開き扉を設け、ドア間の側面窓は座席配置に合わせ、2個一組の2段式ユニット窓を4組並べた。両開き2ドアに2連窓のレイアウトは私鉄電車に類似例はあったが、国鉄では初めてであった。加えて国鉄の一般形気動車としては初採用となる電動式行先表示器も設置した。
車内にはデッキはなく、ドア両脇をロングシートとした他は転換クロスシートとなっている(ロングシート隣接部と車端部は固定式)。当時、新幹線電車以外の国鉄車両で転換クロスシートを使用している例は、特急・急行用車両も含めてほとんど存在せず、急行形気動車を凌駕する「新幹線並みの設備」は話題になった。
冷房装置は、従来の特急・急行用気動車で一般的だった分散式ユニットクーラーではなく、通勤形・近郊形電車で実績のある集中式のAU75形を採用し、車体中央部屋上に各車1基を搭載する。暖房については冷房と同一の電源で作動する電気暖房装置を備えている。多くの気動車がエンジンの廃熱を使用するのとは異なり、特急用気動車並みの設計である。冷暖房の電源は、キハ67形に搭載された4VK形ディーゼル機関でDM83A形発電機を駆動して供給する。このため常にキハ66形・キハ67形の2両でユニットを組む。
トイレはキハ66形に設置している。独立した洗面所はない。
[編集] 走行機器
急行形気動車と同等以上の性能を確保するため、大出力エンジンである水平対向12気筒の過給器付DML30HS系機関を搭載している。
この系統の500PS級エンジンは、キハ91形での試験運用を経て既に1968年から特急用のキハ181系や急行用のキハ65形に用いられており、当時の国鉄気動車用エンジンとしては最強であった。しかし、複雑な構造と過負荷によってオーバーヒートや部材破損などのエンジントラブルが絶えず、現場は非常に苦慮していた。
このため、キハ66・67には、ガスケット吹き抜け対策を施し、性能をややデチューンしたDML30HSH形(440PS/1,600rpm)を搭載し、定格出力に余裕を持たせる事によってエンジントラブルを回避した。なおかつ放熱器を連結面側屋上に搭載し、オーバーヒート防止を図っている。集中式冷房装置の搭載は、この放熱器のスペースを捻出するためでもあった。キハ67形では冷暖房用の発電用エンジンの関係でキハ66形より放熱器が長く、キハ66形の2個に対して3個グリルが並ぶ。
エンジンの騒音対策は充分ではなく、発車直後や上り勾配区間走行中の力行時には車内では普通の声では会話が成立しないくらいの騒音だったという。
液体変速機はDW9形である。キハ181系等に使われていた自動式のDW4形を手動の摩擦クラッチ仕様に変更したタイプである。大出力対応ではあるが、当時の技術的限界故に直結1段式であり、効率は良くない。
台車は2軸駆動式の空気バネ台車DT43形(付随台車はTR226形)である。
ブレーキや制御系統については、在来形気動車と併結可能な仕様となっている。
[編集] 経過
当初、直方気動車区(現・筑豊篠栗鉄道事業部直方運輸センター)に配置され、1975年3月の山陽新幹線岡山~博多間開業に伴うダイヤ改正より運用を開始した。筑豊本線・篠栗線等で快速列車等にも用いられ、優れた居住性で好評を得た。
1980年までは筑豊本線系統のローカル急行列車にも用いられ、日田彦山線等へも直通した。その後も一貫して筑豊本線を中心とした北九州の非電化区間で用いられ、国鉄民営化でJR九州に承継された後も筑豊地区に限定して運用された。なお、JR九州発足前後の1987年に塗装は急行色から白地に青帯の九州一般色に変更されている。また1999年からワンマン対応化改造が実施されているが、このときは運用路線のワンマン運転方式の関係で運賃箱および整理券発行機は設置されなかった。2000年にはミレニアム記念として第1編成が国鉄急行色に塗り直された。
2001年10月の筑豊・篠栗線電化後は、長崎地区(長崎鉄道事業部長崎運輸センター)に転属した。内外装の更新やエンジン交換等の改造を経ながらも2005年現在、30両全車が大村線等で快速列車・普通列車に用いられている。転属にあわせて運賃箱・整理券発行機が設置され、国鉄急行色の第1編成を除く全編成がキハ200系とほぼ同一の塗装に変更され、快速「シーサイドライナー」に使用されている。
JR九州の他系列の例に漏れず、このキハ66・67形でも屋根上通風器の撤去が行われた。
[編集] 機関・変速機換装
DML30HSHエンジンは重く複雑で取り扱い難く、燃費も悪いため、老朽化対策もあって1994年から新潟鐵工所製のDMF13HZA(420HP/2,000rpm)に換装した。従来の12気筒に対し、新エンジンは現代的な設計の6気筒で、整備性や信頼性の向上と軽量化を実現している。これに伴い、ラジエーターは床下のみとなり、屋根上の放熱器は撤去された。
加えて変速機も新潟コンバータ製のDW14Hとなった。この変速機は直結段が2段式となっており、エンジン性能を有効に使うことができるため、結果として走行性能は向上している。
機関・変速機の換装は2001年までに全車への施工を完了し、同時に発電機用のエンジンも換装している。
[編集] 関連商品
日本国有鉄道(鉄道省)の気動車 |
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蒸気動車 |
キハ6400形 |
鉄道省制式気動車 |
キハニ5000形・キハニ36450形・キハ40000形・キハ41000形・キハ42000形・キハ43000形 |
機械式一般形気動車 |
キハ04形・キハ07形 |
電気式一般形気動車 |
キハ44000系 |
液体式一般形気動車 |
キハ44500形・キハ10系・キハ20系・キハ31形・キハ32形・キハ54形 |
機械式レールバス |
キハ01系 |
客車改造液体式一般形気動車 |
キハ08系 |
液体式近郊形気動車 |
キハ45系・キハ66系・キハ40系II |
液体式通勤形気動車 |
キハ35系・キハ37形・キハ38形 |
液体式準急形気動車 |
キハ55系・キハ60系 |
液体式急行形気動車 |
キハ56系・キハ57系・キハ58系・キハ65形・キハ90系 |
液体式特急形気動車 |
キハ80系・キハ181系・キハ183系・キハ185系 |
試作車/事業用車/試験車 |
キワ90形・キヤ92形・キヤ191系・キハ391系 |