実証主義
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実証主義(独:Positivismus、英:positivism、仏:positivisme)とは、哲学上の学派の一つ。VerificationismとPositivismを区別するため肯定主義と訳されることもある。19世紀以降の自然科学・工学の長足の進歩と社会的成功を踏まえ、知識の形態として有効かつ知識を統一しうるものとして科学に特権的地位を見出す考え方。
「肯定」を意味するpositiveは、もともと「(神によって)置かれた」を意味するラテン語positiviusに由来する。この原義から転じて、実証主義における肯定とは、経験的に裏付けられたものを意味し、その対義語は否定的、すなわち形而上学的である。
[編集] 意味と背景
神学的・形而上学的なものに依拠せず、経験的事実にのみ認識の根拠を認める学問上の立場である。19世紀フランスの思想家・社会学者オーギュスト・コントによって唱えられた。
哲学の分野では理想主義、構成主義、方法主義などと対立した意味で使われることが多い。20世紀初頭に、哲学も自然科学同様の実証性を備えるべきであるとする主張がウィーン学団によってなされ、論理実証主義(論理的経験主義、新実証主義)と呼ばれた。
歴史学では、19世紀ドイツの歴史家ランケによって確立された。厳密な史料批判を行い、客観的な事実を確定し、事実のみに基づいた歴史記述を行うものである。マルクス主義の唯物史観、天皇中心の皇国史観など、歴史を特定の立場に都合よく利用する思想を排し、科学的・客観的に歴史を把握しようという立場から主張される。一方、実証主義を標榜する研究者が、しばしば瑣末な史料批判にこだわり、大局的な歴史認識を見失う場合もある。
科学の分野では論理実証主義の意味で用いられ、還元主義と共によく用いられる。素粒子物理学の分野ではまさに根源を探る上で重要な概念ともいえる。しかし生命、量子力学における観測問題など実証主義が適用できない場合もあり、新たな哲学を必要とする時代がきている。
法学の分野においては、道徳や自然法などの他の価値基準に拠らないで実定法のみに法体系の根拠をもとめる立場を法実証主義と呼ぶ。
[編集] 科学哲学における実証主義
特に現代の文脈で使われる実証主義は、自然科学その他で取り上げられる、科学探究に対する態度の一つとしてのそれである。この場合、実証主義は「一般法則は観察と論理によってのみ正当化される」と主張する。そこからは当然ながら独断や啓示は排除される。実証は観察と論理によるから、主に帰納法がとられる。実証主義は20世紀前半まではあまり疑われずにいた思想であった。
ところが、ここで根本的な問題が生じる。「帰納法の使用に基づく実証そのものの正当性はいかにして正当化されるのか?」ということである。「全ての正当化が帰納法によってのみ行われうる」こともまた一つの一般法則(Lとする)であろう。すると、この一般法則Lもまた実証によってのみ正当化されねばならない。ここで、実証は帰納法に基づくから、一般法則Lもまた帰納法で証明される必要がある。ところが、帰納法の正当性を帰納法で証明してはならないことは、周知の論理的事実である。従って、実証主義はその根柢において実証できないものを抱えており、いいかえれば、実証主義の根拠は独断に基づいているのである。
なお、帰納法そのものは「斉一性の原理」すなわち「他の要因がない限り、事象は今まで通り動いていく」に基づいている。これもまた、実証されるべき一般法則であるが、当然ながらこれを実証することは不可能である。
現在では、実証主義に代わって、反証主義が主流になっている。
[編集] 関連項目
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