必殺からくり人
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必殺からくり人(ひっさつからくりにん)は必殺シリーズ第8作目として、朝日放送(現ABC)と京都映画撮影所(現・松竹京都映画株式会社)の制作により、1976年7月30日から10月22日にかけてNETテレビ(現・テレビ朝日)系列で放送された。全13話。
全4作作られた「からくり人シリーズ」の第1作目。
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[編集] 作品内容
芸者置屋である「花乃屋」一家には、世間に決して言えない秘密が二つあった。それは彼らが八丈島を島抜けした罪人である事。もう一つは、彼らが弱い者の恨みを晴らす、からくり人であるという事。
からくり人のメンバーは花乃屋の女主人、仇吉と、船頭の藤兵ヱ、仇吉の娘のとんぼに、藤兵ヱの息子のへろ松、そして花火職人の天平に枕売りの時次郎。彼らを率いる元締は、表では骨董商を営む蘭兵衛。
しかし、別のからくり人組織の元締「曇り」によって、元締の蘭兵衛が殺される。「曇り」は裏で幕府と結び付いていて、格安で弱い者の依頼を請け負う彼らを快く思っていなかったのだ。仇吉は蘭兵衛の意思を引き継ぎ元締となり、弱者の涙のために恨みを晴らしていく。
時代設定は天保年間で、天保の大飢饉、蛮社の獄、老中・水野忠邦(天保の改革で知られる)などが、物語に折り込まれる。
[編集] 制作の背景
当時NHKドラマで高い評価を受けていた早坂暁をメインライターとして迎え、キャストも映画・演劇界の大物でありながらテレビでの露出がほとんどなかった山田五十鈴(その前に「必殺仕置屋稼業」第15話に被害者役でゲスト出演した)、青春スターのイメージが強かった森田健作とジュディ・オング(オングはその前に「必殺必中仕事屋稼業」第2話に被害者役でゲスト出演し、さらに必殺シリーズのスタッフが制作した「おしどり右京捕物車」に、「からくり人」の前作「必殺仕業人」で赤井剣之介役だった中村敦夫扮する神谷右京の妻・はな役で出演)、必殺シリーズの出演は三作目になる緒形拳と、大変力が入っていた。
鼠小僧など実在の人物や蛮社の獄といった実在の事件を下敷きにしたり、また現代の風景から導入が始まる基本フォーマットなど、時代劇としては挑戦的な試みが随所に見られた。また、全編を通して頼み人から金を受け取るシーンが描かれず、逆に殺しの報酬を悪人から巻き上げたり、更には殺し自体が行われない話もあり、必殺シリーズとしても、それまでのシリーズとは違ったことをやろうという意欲が伺える。
斬新なだけではなく、プロでありながら同時に家族的な濃密な人間関係を持ったからくり人たちや、主に早坂暁の手になるシナリオは、ドラマとしても高い評価を受け、第2話「津軽じょんがらに涙をどうぞ」は優れたテレビ・ラジオ番組に贈られるギャラクシー賞(放送批評懇談会)を受賞した。早坂は13話中10話を書いており、全必殺シリーズにおける執筆数で見ても、ほとんど本作が占める。早坂暁の担当数は「必殺仕掛人」を2回(全33話)、「必殺からくり人」は10回(全13話)、「新・必殺からくり人・東海道五十三次殺し旅」は3回(全13話)、「必殺からくり人・富嶽百景殺し旅」は1回(全14話)を書いた。また、上記のからくり人シリーズでは、いずれも第1話を書いている。他に、仕掛人から仕事人まで(仕留人は除く)のオープニングナレーションを手掛けている。
ちなみに、テレビスペシャル版「仕事人大集合」では山田五十鈴、緒形拳、森田健作の「からくり人トリオ」が再結集した。もっともキャラクターとして復活したのは森田健作の天平だけで、山田五十鈴は「新・必殺仕事人」の三味線屋おりく、緒形拳は「必殺必中仕事屋稼業」の半兵衛役だった。
また、映画版「必殺! THE HISSATSU」では、やはり別の役柄ながら山田五十鈴と芦屋雁之助が再共演を果たしている。
[編集] 殺し技
- 花乃屋仇吉…三味線の撥(ばち)で、悪人の首筋(喉元)を斬る。
- 八尺の藤兵ヱ…水に濡らした帯で首を絞める・短刀で急所を刺す。
- 夢屋時次郎…枕作り用の金属製の鉄べらで、悪人の首筋を斬る・刺す。尚12話では、狙撃用に銃を使っている。
- 仕掛の天平…携帯用の特製花火を相手の口の中に入れ、その体内(胃の中)で爆発させる(透視図映像付き)。余談だが、通常の森田健作扮する役柄のイメージとは異なり、寡黙な人物として描かれている。
- ※時次郎と天平は、藤兵ヱ同様に補助武器として、護身用の短刀を常に携帯。時には、悪人の急所を突き刺す事もある。
- 花乃屋とんぼ…殺しは行わないが、読唇術を使い、悪人の会話の内容を読み取る。
[編集] キャスト
- 夢屋時次郎 … 緒形拳(第1~8、10、12話)
- 仕掛の天平 … 森田健作
- 花乃屋とんぼ … ジュディ・オング
- 八尺の藤兵ヱ … 芦屋雁之助
- 八寸のへろ松 … 間寛平(第1~10、12、13話)
- 元締 蘭兵衛 … 芦田伸介(第1話)
- 元締 曇り … 須賀不二男(第1、3、12、13話)
- 花乃屋仇吉(はなのや あだきち) … 山田五十鈴
- ナレーション
- 語り … 緒形、森田、オング、雁之助、山田が交互に担当。
- 作 … 早坂暁
[編集] 主題歌
- ※この歌は、次作「必殺からくり人・血風編」でも使用された(歌詞は2番を使用)。
- ※時代劇の主題歌に、初めて「バス」という現代の歌詞が登場した。
[編集] 放映リスト
- 鼠小僧に死化粧をどうぞ
- 津軽じょんがらに涙をどうぞ - ギャラクシー賞受賞作品。
- 賭けるなら女房をどうぞ
- 息子には花婿をどうぞ
- 粗大ゴミは闇夜にどうぞ
- 秘めごとは白い素肌にどうぞ
- 佐渡からお中元をどうぞ - 殺しのない話
- 私ハ待ッテル一報ドウゾ
- 食えなければ江戸へどうぞ
- お上から賞金をどうぞ
- 私にも父親をどうぞ
- 鳩に豆鉄砲をどうぞ
- 終わりに殺陣をどうぞ
[編集] 関連項目
NET系 金曜22時台 | ||
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