教員採用試験
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教員採用試験(きょういんさいようしけん)は、都道府県、及び政令指定都市がそれぞれの設置、運営する学校(公立学校)のために教員を採用するための採用候補者名簿を作成するための試験である。略称は教採。最終合格者について、得点の上位者から採用候補者名簿に登載されるが、それが直ちに採用されるということではない。採用後は、正規の教員である教諭(養護教諭等含む)となる。
教員採用試験は、他の公務員試験と異なり、都道府県及び政令指定都市の教育委員会によって行われる。 ほとんどの自治体が二段階による選考を行っている。概ね一次試験が学力試験、二次試験が人物試験となる。
なお、私立学校の場合は学校独自の選考や、自治体によっては私学適性検査が行われる。この試験の結果は本稿でいう「採用候補者名簿」とは意味合いが異なり、得点の上位者から名簿に記載されるが合否の判定をせず、各私立学校が教員採用時の「参考資料」として用いるとされる。
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[編集] 概略
公立学校の教員は、教員採用試験を経て教育公務員(正規職員)になった教諭と、年度ごとに労働契約を結ぶ(臨時職員的な)常勤講師(臨時的任用職員)とで構成されることが多い。(なお、常勤講師も教育公務員の扱いを受け、雇用期間の定めがない正規職員に近い身分の常勤講師も一部に存在する。)教諭と常勤講師の業務内容には同一部分が多いが、給与体系や福利厚生で差が見られる。 日本では、1970年代後半から教員採用試験の受験者が少しずつ増え続け、試験の倍率が上昇していた。しかし、教諭(特に団塊の世代)の定年退職の増加や少人数学級の導入などに伴い、2004年頃から規模の大きな自治体(東京都、大阪市など)では小学校教諭を中心に募集が増加しつつある。
だが中学校・高等学校については、財源たる税収に基づく予算が縮小され、また定年を迎えた教諭のうち希望者に対して2002年(平成14年)度より実施されている再任用制度の影響から、定年退職者の数より新採用の募集人数が抑えられ、その結果、臨時職員である常勤講師・非常勤講師を毎年恒常的に任用する傾向にある。
[編集] 募集について
募集される教科や出願の条件は、試験を実施する自治体により異なる。 中学校・高等学校の場合、理数系科目や英語などでは募集が多いが、その他の教科の中には募集の枠が少ないか、募集されないものもある。そのため、教科ごとに競争倍率に差が生じている。 特に社会科系は募集人数は少ないが、免許取得者は多いため応募者は多く、毎年非常に高い倍率で推移していいる。
出願の条件として、多くの自治体が受験可能な年齢の上限を定めている。年齢制限は自治体ごとに、全教科で一律同じ上限とするところ、教科や選考の種別によって上限を変えるところ、あるいは全く制限を置かないところがある。 近年は、様々な経験をした人物を採用するために、上限を緩和したり撤廃する自治体が増えている。
さらに教科によっては出願にあたり、受験する教科以外の教員免許状も取得(見込みを含む)していることを条件とする場合もある。条件が厳しい所では、他に取得している免許の教科についても指定する場合がある。この条件を定める自治体の採用試験では、条件を満たさなければ当該教科の免許を所有していても出願すら出来ない。
また、教員としての資質を早期に見極めるため、事前に自己PR文を書かせる自治体が増えてきた。その方法としては、願書に書かせるもの、出願後に受験者に送付する面接用紙に書かせるものがある。
[編集] 試験について
試験内容については各自治体で異なるのでホームページ等で確認されたい。ここでは一般的な内容について記述する。
[編集] 教職教養試験
ほとんどの自治体が一次試験で行う。全校種同一の試験であることが多い。また、一般教養試験とまとめて、一つの試験として行われることが多い。受験者が多い自治体ではマークシート方式を採用している。 教職に対する基礎知識を問う試験である。具体的には、教育法規、教育の方法や教育課程、学習指導要領、教育史、教育心理学から、道徳教育、同和教育、中央教育審議会や教育課程審議会の答申など多岐に渡る。対策には単に法律の条文や教育関係の人名を暗記するだけでなく、教育時事等を新聞、雑誌、インターネット等を通じて情報を得る必要である。
[編集] 一般教養試験
教職教養試験同様ほとんどの自治体が一次試験で行う。全校種同一の試験であることが多い。 概ね、高校入試レベルから高校で学ぶ基礎的なレベルでの出題が多い。国語、数学(算数)、理科、社会、英語からまんべんなく出される。また芸術、体育に関する問題、情報処理に関する問題、受験する自治体に関係する所謂ご当地問題など出題範囲は多岐に及ぶ。従って幅広い見識が必要になる。
[編集] 専門教養試験
ほとんどの自治体が一次試験で行う。各校種、教科に対する専門的な知識、素養を評価する試験である。また学習指導要領からの出題も多い。 小学校の試験では、小学校で指導する全教科から出題されるため、出題範囲は非常に広いが、難易度としては一般教養と同程度である場合が多い。小学校では教科担任制を採用していないため、全教科を指導できなければならないためである。 中学校、高等学校の試験は、それぞれの教科に関する出題となる。これらの校種では高い専門性が求められるため、難易度も大学入試レベルから大学の専門レベルと高度である。 盲、聾、養護学校及び養護教諭の試験は、それぞれの職種の専門性が問われる。
[編集] 論作文試験
教職への考え方、意欲及び、文章表現力、論理力等を評価する試験である。 教育に関するあるテーマについて、決められた字数、時間で解答する。 テーマについては、「いじめ、不登校への対処法」「保護者との関わり方」などの教育時事的なもの、文章を読んで、それに対する自分の意見を述べるもの、あるいは「教育とは何か」など抽象的で根本的な内容について記述するものなどである。 この試験は自治体によって実施時期はまちまちである。一次試験に実施する自治体では教職、一般、専門試験と言った学科試験の対策と並行して対策をしなければならない。
[編集] 面接試験
教職への資質能力を実際の人物を見て評価する試験である。 1次試験で実施される場合は、その段階では受験者も多いため、集団で短時間で実施されることが多い。従って学科試験の補完的な要素が大きい。 これに対して2次試験で行われる場合は、最終的な合否に大きく影響する。個人面接は必ず実施されるが、自治体によっては集団面接も同時に行ったり、集団討論、模擬授業などと組み合わせて行うこともある。 特に近年は人物試験を重視する傾向があるので、この試験が最大の関門と言えるだろう。
[編集] 模擬授業
教職において最も重要な授業力を評価する試験である。 多くの自治体が2次試験で実施しているが、実施方法は様々である。面接試験の一部として実施する場合もある。 事前に学習指導案を作成したり、テーマを決めて授業を行える場合は、目標や展開、教材観、評価法、子どもとの関わり方などを総合的にみられる。また、試験本番になってテーマが示される場合やロールプレイなどでは、それに応じた場面指導能力をみられる。 いずれにせよ、実施方法は各自治体によって異なるので、受験する自治体ごとの対策が必要である。
[編集] 集団討論・集団活動
主に2次試験で行われる。集団の中での自己表現能力を評価される試験であるが、教員採用試験では、協調性が重視される。 あるテーマについて5~6人で話し合いを行い、その中での意見の出し方、受け答えの仕方等を見られる。
[編集] 実技試験
小学校では全教科を教えるため、主にピアノの弾き語り、デッサン、水泳実技などが行われる。 しかし、この試験が最終的な合否に影響を及ぼすことは少ないようである。実際にピアノを片手で弾いたり、水泳で途中で立ってしまっても合格したという話は良く耳にする。 中学校、高等学校の音楽、美術、体育では高い技能が求められるため、重視される。また英語においてはリスニング能力が試される。 この他に自治体によってはパソコン活用能力なども試されることもある。 実施時期は2次試験に行う自治体が多いが、種目によって1次と2次に分けて行う場合もある。
[編集] その他
合否の参考に適性検査を行う自治体が多い。また、ここに上げた以外の独自の試験を行う場合もある。
[編集] 成績の開示
自治体によっては、受験者が直接主催者に申し出て成績の開示を受けることが出来る。
開示される内容は、試験全体の成績における受験者の大まかな位置情報であり、上位(A)、中位(B)、下位(C)といった簡素な内容である。したがって、科目ごとの詳細な成績は開示されない。
開示の形式として、出願時の申請により合否発表時に郵送する受験票などに記す自治体と、本人確認を経て口頭で結果を告げる自治体がある。
[編集] 関連項目
- 教員資格認定試験
- 私学適性検査