日本の長期化ダム事業

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日本の長期化ダム事業（にほんのちょうきかだむじぎょう）は、ダム事業の実質的着手である「実施計画調査」の開始年から完成年・完成予定年まで25年以上経過している事業、又は現時点（2006年）で完成予定の目処が立っていないダム事業である。

[編集] 経緯

ダム事業は公共事業の中でも大規模な部類に入る。又、建設に伴って水没するコミュニティが出現する事、漁業・林業・農業・環境への影響が多大である事からそれら生活再建・既得権益に対する補償交渉が長期化するケースもある。更にダム本体工事も安全性最優先で慎重に進められる為必然的に工期が長くなる。こうした事でダム事業の着手から完成まで平均的には10年程度は費やされている。佐久間ダムの様に3年半で完成するケースは極めて稀と言える。又、藤原ダム・田子倉ダム・八ッ場ダムの様に強固な住民反対運動も起き、事業進捗が次第に遅れるダム事業も出始めた。然し高度経済成長に向かって驀進していた日本は、犠牲からの救いを願う住民の意思よりも国土開発を最優先に進めていた。

開発優先のダム事業に住民側から警鐘を鳴らした蜂の巣城紛争とその教訓から施行された水源地域対策特別措置法（1973年・昭和48年）は、それまでの"開発優位”の姿勢から"生活再建優位"への意識転換が図られ、事業者は地域住民の同意がなければダム建設は行わないという態度を明確にした。故に反対派住民に対して納得の行くまで徹底的な話し合いを行う事が恒常化する様に成り、ダム事業の長期化を現実のものとした。この頃では早明浦ダム等15年～20年程度の事業期間が費やされるダム事業が多くなっている。更に近年の公共事業見直しの機運、環境影響評価法の制定でダム事業への注目が高まり、イヌワシ営巣によって工事を一時凍結するダム事業も現れるようになった。この他ダム反対運動が第三者の介入により複雑化して一旦着工した事業が事実上凍結となるものも現れ始めた。

こうした事から現在施工されているダム事業の中には実施計画調査発表から30年～40年経過しても本体工事に着手出来ない事業もあり、建設費高騰の要因となった。これが更なるダム事業の見直しに拍車を掛け、小泉純一郎内閣の基本方針「骨太の方針」でダム事業の総点検が行われ実施計画調査開始から10年以上経過しても事業の進捗が図られないダム事業に関しては原則中止・休止の決定が下され、100近いダム事業が中止・休止・凍結となった。下記の一覧にあるダムはその総点検で「事業継続」の判断が下されたダム事業であるが、今後更に長期化する様な場合には、再び事業継続の可否が問われると言われている。

[編集] 長期化ダム事業一覧（2006年時点）

（備考）事業進捗の語句解説

実施計画調査：ダムを建設する前に行う様々な基礎的調査。この調査を元にダムの型式・高さ・貯水容量等を最終決定する。
補償交渉：水没する地域住民との補償交渉。環境保護団体や市民団体などダムに反対する第三者との折衝もこの中に入る。
環境調査：環境影響評価法で大規模公共事業に義務付けられた項目。クマタカ・イヌワシ等稀少種の生息状況や建設後の影響を調査。
本体工事準備：水没する道路・橋梁・鉄道の付け替え工事、水没代替地への宅地・公共施設造成といったインフラ整備。これが終わると本体工事が始まる。
本体工事：ダム本体の建設。
試験湛水：ダム本体は完成し、試験的に貯水を行って本体の安全性を確認する試験。ダム完成前の最後の関門。
完成：全ての工事が完成し、目的に沿って稼動している状態。

[編集] 完成済または完成予定の目処が立っている事業

期間	ダム名	水系	一次支川（本川）	二次支川	三次支川	着手年	完成年予定年	所要年数	事業・管理主体	進捗状況
50年～	八ッ場ダム	利根川	吾妻川	－	－	1952年	2010年	58年	国土交通省	本体工事準備
40年～	大滝ダム	紀の川	紀の川	－	－	1962年	2009年	47年	国土交通省	試験湛水
	設楽ダム	豊川	豊川	－	－	1978年	2020年	42年	国土交通省	環境調査
	長沼ダム	北上川	旧北上川	迫川	長沼	1971年	2012年	41年	宮城県	本体工事
	南摩ダム	利根川	渡良瀬川	思川	南摩川	1969年	2010年	41年	水資源機構	本体工事準備
	平瀬ダム	錦川	錦川	－	－	1973年	2014年	41年	山口県	本体工事準備
	内ヶ谷ダム	木曽川	長良川	亀尾島川	－	1979年	2019年	40年	岐阜県	本体工事準備
30年～	森吉山ダム	米代川	阿仁川	小又川	－	1973年	2011年	38年	国土交通省	本体工事
	滝沢ダム	荒川	中津川	－	－	1969年	2007年	38年	水資源機構	試験湛水
	嘉瀬川ダム	嘉瀬川	嘉瀬川	－	－	1973年	2011年	38年	国土交通省	本体工事準備
	徳山ダム	木曽川	揖斐川	－	－	1971年	2007年	36年	水資源機構	試験湛水
	五ヶ山ダム	那珂川	那珂川	－	－	1983年	2017年	36年	福岡県	本体工事準備
	九谷ダム	大聖寺川	大聖寺川	－	－	1970年	2005年	35年	石川県	完成
	石木ダム	川棚川	川棚川	－	－	1973年	2008年	35年	長崎県	補償交渉
	山鳥坂ダム	肱川	河辺川	－	－	1986年	2019年	33年	国土交通省	補償交渉
	当別ダム	石狩川	当別川	－	－	1980年	2012年	32年	北海道	本体工事準備
	安威川ダム	淀川	猪名川	安威川	－	1976年	2008年	32年	大阪府	本体工事
	苫田ダム	吉井川	吉井川	－	－	1972年	2004年	32年	国土交通省	完成
	灰塚ダム	江の川	馬洗川	上下川	－	1974年	2006年	32年	国土交通省	完成
	大分川ダム	大分川	七瀬川	－	－	1978年	2010年	32年	国土交通省	本体工事準備
	大山ダム	筑後川	赤石川	－	－	1983年	2012年	31年	水資源機構	本体工事
	竜門ダム	菊池川	迫間川	－	－	1970年	2001年	31年	国土交通省	完成
	胆沢ダム	北上川	胆沢川	－	－	1983年	2013年	30年	国土交通省	本体工事
	丹生ダム	淀川	姉川	高時川	－	1980年	2010年	30年	水資源機構	本体工事準備
25年～	成瀬ダム	雄物川	成瀬川	－	－	1983年	2017年	29年	国土交通省	環境調査
	湯西川ダム	利根川	鬼怒川	男鹿川	湯西川	1982年	2011年	29年	国土交通省	本体工事準備
	宮ヶ瀬ダム	相模川	中津川	－	－	1971年	2000年	29年	国土交通省	完成
	長島ダム	大井川	大井川	－	－	1972年	2001年	29年	国土交通省	完成
	津軽ダム	岩木川	岩木川	－	－	1988年	2016年	28年	国土交通省	補償交渉
	小山ダム	大北川	大北川	－	－	1977年	2005年	28年	茨城県	完成
	志津見ダム	神戸川	神戸川	－	－	1983年	2010年	27年	国土交通省	本体工事
	温井ダム	太田川	滝山川	－	－	1974年	2001年	27年	国土交通省	完成
	新宮川ダム	阿賀野川	宮川	－	－	1978年	2004年	26年	農林水産省	完成
	浦山ダム	荒川	浦山川	－	－	1972年	1998年	26年	水資源機構	完成
	日吉ダム	淀川	桂川	－	－	1971年	1997年	26年	水資源機構	完成
	殿ダム	千代川	袋川	－	－	1985年	2011年	26年	国土交通省	本体工事
	富郷ダム	吉野川	銅山川	－	－	1974年	2000年	26年	水資源機構	完成
	三春ダム	阿武隈川	大滝根川	－	－	1972年	1997年	25年	国土交通省	完成

[編集] 完成予定の目処が立っていない事業

期間	ダム名	水系	一次支川（本川）	二次支川	三次支川	着手年	経過年数	事業主体	進捗状況
30年～	川辺川ダム	球磨川	川辺川	－	－	1967年	39年	国土交通省	補償交渉
	五木ダム	球磨川	川辺川	－	－	1968年	38年	熊本県	補償交渉
	平取ダム	沙流川	額平川	－	－	1973年	33年	国土交通省	環境調査
25年～	城原川ダム	筑後川	城原川	－	－	1979年	27年	国土交通省	補償交渉
	新丸山ダム	木曽川	木曽川	－	－	1980年	26年	国土交通省	本体工事準備
	川上ダム	淀川	木津川	前深瀬川	－	1981年	25年	水資源機構	本体工事準備
	津付ダム	気仙川	気仙川	－	－	1981年	25年	岩手県	補償交渉

カテゴリ: 日本のダム | 環境保護運動

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[編集] 経緯

[編集] 長期化ダム事業一覧（2006年時点）

[編集] 完成済または完成予定の目処が立っている事業

[編集] 完成予定の目処が立っていない事業

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