海上自衛隊の航空母艦建造構想
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海上自衛隊の航空母艦建造構想では海上自衛隊の航空母艦ならびに軽空母等の類似艦艇建造構想について述べる。
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[編集] おおすみ型輸送艦以前の航空母艦建造構想
海上自衛隊は草創期から航空母艦の保有を志向してきた。当初は米海軍に対潜空母(CVS)もしくは軽空母(CVL)の貸与ないし供与を打診したが、より低性能の護衛空母(CVE)なら可能であると回答され、断念したとされる。また大型商船(復員輸送終了後の興安丸などが候補だったという)の改装も検討したが、構想のみに終わり、以後は新造計画を模索することとなる。
第2次防衛力整備計画(2次防)直前の1960年には対潜作戦の中枢として基準排水量11,000トン、ヘリ18機搭載のヘリ空母(CVH)建造を部内で決定した。これがいわゆる「2次防ヘリ空母」である。本艦を中心に数隻の護衛艦を配し、ハンター・キラー・グループを構成する計画だったが、政治的理由に基づく内局の反対により、建造予算は要求されなかった。結局、3次防で3機搭載のヘリ護衛艦(DDH)「はるな」型2隻が建造されている。続く4次防では6機搭載の8,300トン型大型ヘリ護衛艦(DLH)2隻が計画されたがこれも実現せず、3機搭載の「しらね」型にスペックダウンされることとなる。
その後、1986年度からの「中期防衛力整備計画」の原形となった昭和59年度策定中期業務見積もり(59中業)の検討段階で、洋上防空構想が浮上。ソ連の洋上爆撃機に対抗するためイージス艦に加え、シー・ハリアー搭載の軽空母(CVVまたはDDVL)保有の可否を検討したが、またもや実現には至らなかった。その理由としては、この種の軽空母の能力的限界への疑問に加え、護衛艦整備を優先すべきだとする米海軍の反対が大きかったと伝えられている。
[編集] 海上自衛隊の軽空母建造構想
[編集] おおすみ型輸送艦
1998年に竣工したおおすみ型輸送艦の一番艦おおすみは、全通甲板をそなえた大型艦であり、自衛隊の位置づけとしては大型輸送艦(海外の一般的な分類でいう揚陸艦)である。建造当初は空母と形が似ていることがマスコミや一部世論等で批判されており、また中国(2006年3月に空母保有を目指していることを認める[1])や韓国(おおすみ型より大型の独島級揚陸艦を建造中)、北朝鮮は実質的な軽空母として使うことができるとして批判している。
政治的判断のため、建造当初のおおすみには、フィンスタビライザー(横揺れ防止装置)が装備されず、航空燃料タンク等も十分ではなかった。だが、その後スマトラ島沖地震の救援活動でヘリコプター運用能力が無いことが問題視され、フィンスタビライザーの追加と航空燃料タンクの整備等が行われた。
おおすみ型輸送艦の性格付けについては、対立する二つの見方がある。
一方は、ヘリコプターの発着艦は可能であっても、通常使われる意味でのヘリ空母ではなく、まして軽空母ではないとの見方がある。この立場では下記の点を理由としている。[2]
- ヘリコプター搭載用の格納庫を持たない。
- ヘリコプターの整備能力を持たない。
- エレベーターのサイズが小さいため、甲板のヘリコプターを艦内に移動できない。
- 甲板強度の不足や甲板がエンジン廃熱に対応できないため、ハリアー等の運用ができない。
他方、おおすみ型輸送艦はヘリ空母であり、軽空母として使用できる可能性も排除できないとの見方がある。この立場からは下記の点を理由としている。
- 全通甲板を持ちヘリコプターが発着艦したことがあるにも関わらず、ヘリ空母ではないという主張は通用しない。
- 大型艦として甲板強度十分にあり、甲板の耐熱塗装等の追加工事でハリアー等の運用も可能である。
[編集] 13500トン型護衛艦
2004年度に13500トン型護衛艦(16DDH)の予算が認められ現在建造中である。この艦は、構想発表当初は全通甲板ではなく、これまでのヘリコプター搭載護衛艦の発展版として完成予想図が公開された。予算承認時には全通甲板を備えた完成予想図が公開された。公表されている搭載機数は哨戒ヘリ3機、輸送/掃海ヘリ1機、そのほか状況に応じて各種機体を搭載する(参考として、フランスのジャンヌ・ダルクは日本来航時に陸軍のヘリコプターを搭載していた)。
この13500トン型護衛艦について、実質的な軽空母であるとする以下のような見解がある。なお、(分類上はともかく)ヘリ空母としての能力を有するという点については、否定する意見は少ない(旧ソ連の航空巡洋艦と同じ発想だと考えられている)。
- 世論の批判や周辺諸国への政治的配慮のため、これまでは保有しなかった。
- 当初公表された図は世論対策のもので、実際はヘリ/軽空母である。この艦は、ヘリコプター8機以上を搭載可能で、V/STOL機の搭載能力もあると思われる。公表されている搭載機数は、1万トンを超える船体には過小な数字であり、これは世論の反発に配慮した政治的理由によるものではないかと予想される(ヘリコプターの定数が決まっているので、はるな型から動かせないという理由もある)。[3]
- 艦首のスキージャンプは装備されない予定だが、低予算での追加工事は不可能とは言えず、V/STOL機の運用も不可能とは言い切れない。
- 自衛隊は駆逐艦を長年、護衛艦と主張してきた事実があり、軽空母として使える艦を軽空母でなくヘリコプター搭載護衛艦と主張しても、自衛隊の論理としては不自然ではない。
- 過去ヘリ空母と呼ばれた艦に全通甲板のものはなかった(ヘリ空母と呼ばれるジャンヌダルク級、モスクワ級共に艦の前方は水上戦闘艦となっている)。
13500トン型護衛艦が軽空母とはなりえないとする見解
- 甲板がF-35Bやハリアーなどが離着陸を出来るような耐熱性能を持たず損傷すると考えられる。
- 搭載する機体が開発中のF-35Bでは艦が小さく運用に支障があり、仮に搭載したとしても作戦を行う上での実用的な機数を搭載出来ないと考えられ、また、旧式化したハリアーの場合では就役時点での性能を考えると問題外と言える。
- 後から空母に改装するにはコストや性能を考えると、新規に建造するほうが合理的であり、安全性や運用効率も高い。
[編集] 空母保有に対する軍事上の議論
海上自衛隊が固定翼/V/STOL空母を保有する/すべき理由としては、以下のようなものが挙げられている。
これに対する反論や、空母を保有すべきでない理由としては以下のようなものが挙げられている。
- イージス艦を始めとするDDGでも十分な防空能力を確保できる。
- 抑止力としてだけ使うにはコストパフォーマンスが悪い。また、北朝鮮ならば距離的に空母は必要なく、中国相手では次項の理由からそれほど有益ではない。
- 米海軍のような数十機の航空機を搭載可能な大型の正規空母ならばともかく、小型の軽空母ではまともな防空戦力を有する国相手には役に立たない。また、アメリカと連携せず、日本単独で攻撃を行うというシチュエーションは、2006年現在の国際情勢では考えにくい。
- 空母を保有するイギリス・フランスは海外領土を持っており、日本とは状況が異なる。また、両国では空母維持のため、それ以外の艦艇にしわ寄せがきている。
- 空母をまともな戦力として運用するには最低3隻が必要と言われており、搭載する航空機や人件費を考慮すると、防衛費が抑えられる中では予算的に厳しい。[4]
[編集] 関連項目
- 防衛庁 / 自衛隊 / 防衛施設庁
- 海上自衛隊
- 海上自衛隊の装備品一覧 / 自衛艦 / 護衛艦
- 自衛艦隊
- 海軍 / 大日本帝国海軍
- 輸送艦
- 航空母艦
- 軽空母
- ヘリ空母
- 護衛空母
- 13500トン型護衛艦
- おおすみ型輸送艦
[編集] 外部リンク
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