消費税
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- 消費税(しょうひぜい)は、広義では物品・サービスの消費に担税力を認めて課される租税のこと。
- 狭義では消費税法に規定する消費税と地方税法に規定する地方消費税の総称。
- 税法では消費税法に規定する消費税を指す。
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[編集] 分類
消費税は消費そのものを課税対象とする直接消費税と最終的な消費の前段階で課される間接消費税に分類できる。前者にはゴルフ場利用税などが該当し、後者には酒税などが該当する。
間接消費税はさらに課税対象とする物品・サービスの消費を特定のものに限定するかどうかに応じて個別消費税と一般消費税に分類することができる。
- 消費税
- 直接消費税
- 間接消費税
- 個別消費税
- 一般消費税
以下この記事で消費税という場合には特に断りがない限り一般消費税のことをいう。
[編集] 一般消費税
消費税はフランスの官僚が考案した間接税の一種。財貨・サービスの取引により生ずる付加価値に着目して課税する仕組みであることから、欧米ではVAT(Value-Added Tax、付加価値税)、もしくはGST(Goods and Services Tax、物品税)また中国では増値税(ぞうちぜい)と呼ばれる。
[編集] 消費税の歴史
ここでは、VATや日本の消費税などいわゆる一般消費税の歴史について記述する。
[編集] 世界の消費税
[編集] 日本の消費税
- 1978年(昭和53年) 大平内閣時に、一般消費税導入案が浮上するも、総選挙に大敗し撤回。
- 1986年(昭和61年) 第3次中曽根内閣時に、売上税法構想が世論の批判を浴びる。
- 1988年(昭和63年) 竹下内閣時に、消費税法が成立、12月30日公布
- 1989年(平成元年)4月1日 消費税法施行 税率3%
- 1994年(平成6年)2月頃 深夜の細川内閣で税率を7%とする国民福祉税構想が世論の批判を浴びる。→即日白紙撤回
- 1997年(平成9年)4月1日 、村山内閣で既に内定していた地方消費税の導入と、消費税等の税率引き上げ(3%→地方消費税を合わせて5%)を橋本内閣が決行。これにより、バブル崩壊後なべ底と見られていた景気をさらに奈落に突き落とし、以後2006年まで約10年に渡る異常な不景気に突入(「失われた10年」と呼ばれることが多い)。
- 2004年(平成16年) 長年「税別」のままであった表示から、ようやく総額表示の義務づけが開始される。税金も内包することにより、見た目上の税負担感をなくし、さらなる増税をしやすくするためではないか、といううがった見方もある。
- 2007年(平成19年)頃には、さらなる消費税率引き上げ(5%→7~8%?)が予定されているといわれている。谷垣財務相は、自身の自民総裁選立候補表明と同時に、「2010年代には消費税を10%にする」と発言している。
[編集] 消費税に関する議論
[編集] 消費税そのものの是非
所得の多寡に応じて累進税率を採用する直接税との比較においては垂直的公平への配慮が乏しいという見方がある。所得を基準に消費税を評価する場合は、低所得層ほど所得に占める消費税の割合が大きくなるため、不公平感が生じるということである(逆進性)。
誰でもが行う消費に着目して課税を行う制度であるため、水平的公平を保つためには好ましいとの見方がある。消費を基準に消費税を評価すると、所得が高くても低くても同一金額の財やサービスを消費すれば同じ額の消費税を支払わなければならないため、こちらのほうが公平であるということである。
これは課税の基準を収入(所得)に置くか、支出(消費)に置くかという税金の基本原則の選択の問題でもあるが、どちらか一方のみが正しいということではなく、両者の適切なバランスをどのように取るか検討がされるべき問題である。第二次大戦後の日本の経済発展に伴い日本国内で資産の蓄積が進んだことや相続税の累進性が緩和されたことにより、多額の資産を保有するため低所得であっても高額の消費が可能な人々も増加していると考えられる。
人頭税との比較すれば、消費税であっても低所得層に手厚い税制(あくまでも「よりまし」という意味で)であると評価することもできる。
日本の場合、一般消費税導入以前には、奢侈品・贅沢品とみなされるものについて、個別消費税の一種である物品税が課されていたが、対象となる物品の範囲、指定のタイミングなどを巡って企業側から不公平感が指摘されることもあった(真に新しいカテゴリの商品のうちは対象にならず、法令の改正などを経るためにある程度普及してから課税対象になる、そのことが、可処分所得が相対的に少ない世帯にとって新商品の入手をいっそう困難にする結果となる、など)。このことは、広く財を対象にする消費税では、このような不公平感は業界からは生じにくい。
税制全体としてみれば、不正な取引を源泉とする収入で所得税で捕捉できないものであっても、消費税を負担することが期待されることから、消費税のようなタイプの税の方が脱税、租税回避行為を補完する役割を担い、課税の公平性・効率性に資するのではないか、との見解がある。
とはいえ日本の場合、医療・福祉・公教育のサービスを除く商品・サービスについて全く同じ税率であり、所得に関わらず万品一律課税による事実上の人頭税的税制となっていることは否めない。また、増税議論においてまず対象となるのがこの消費税であり、逆に、累進性が強い所得税、法人税、相続税の増税が税制論議において殆ど議題に上らないことに批判が強い。消費税が導入された1989年、法人税は40.0%であったが、1999年より30.0%に引き下げられた。したがって、日本の税収は、法人税率の引き下げによる減税分を消費税が穴埋めしている格好になっているのが実態であり、この点も指摘されている。
[編集] 消費税の増税に関する議論
日本は2006年現在で5%の消費税であるが、一方で、欧州では10%以上はザラにあり、スウェーデンにいたっては20%を超えている。多くの政治家や知識人はこの数値を取り上げ、消費税増税を正当化するが、イギリスにおいては食料品等の日用品が非課税であることや、高い消費税を取っている国は教育費が無料であるなど福祉が充実していることなど、欧州では払った分だけ国民に還元されることも多い。この点、日本では増税による国の利益が国民に還元されることは全く無く、後述するように、その目的も専ら「財政再建」のためであって、国民にとっては単純に負担だけが増えるメリットの無い増税になってしまう。現状のように、貧しい人向けに福祉を充実させるという配慮が全く為されないまま、主に貧困層を狙い撃ちするこの税の増税は「格差社会」が社会問題化している昨今野党を中心に多くの批判がある。
アメリカでは生活必需品の価格は非課税に近く、極めて廉価であり、貧困層でもきちんと食料品などを買い求めることができるように配慮されている。但し、生活必需品ではないもの、菓子類を例に挙げると、とある大手菓子メーカーのチョコレートに課せられる消費税は低いのにも関わらず、他メーカーに対しては重く課税するといった問題が指摘されている。これは、アメリカにおける課税の基準が企業によるロビー活動などの政治的な要因が大きく影響されていることを示している。
また1997年に5%に値上げした際、値上げにより消費者が消費を手控えたことで需要が狭まり、回復軌道に乗りかかっていた景気が消費の落ち込みで一気に不景気のどん底に陥った前例があり、再び景気が回復傾向に向かっている現在での大幅増税は、景気回復に水を差しかねないという意見もある(当時の首相橋本龍太郎は後に、消費税引き上げは失敗であったと語っている)。生活必需品の消費は文字通り不可避であり、格差が広がった今、奢侈品が値上がりによって需要減となることは少なく、そもそも1997年の時点でこれによって景気が悪くなったのではないともいわれる。数字上の値上げよりも、むしろ価格高騰によって消費者の間に「不要品の購入を控える」という“雰囲気”ができることが需要を抑える(→景気悪化)効果を発揮しているから、価格の多少の変化に消費者が動じなければ景気が悪化することはないとして、価格の変化と市場の雰囲気とを分けて捉える見解もある。