税関職員
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税関職員(ぜいかんしょくいん)は関税の賦課・徴収、禁制品・規制対象品の検査や没収などを行う国の行政機関・税関(財務省の地方支分部局)に所属する国家公務員をいう。
税関職員は、関税法、関税定率法などに基づき、輸入関税の賦課・徴収を行うほか、裁判所の許可を得て海港や空港における密輸品、禁制品や規制対象品の検査及び没収など、国民生活に好ましくない影響を及ぼす物品の国内流入を水際で防ぐことも職務とする。直接の検査対象は物品のみであり、人の出入り(出入国管理)・人の健康(検疫)・輸入動植物の検疫(動物検疫・植物防疫)は担当しないため、「出入国全般を担当する行政機関」であるとまでは言えないが、例えば個人の所持品を検査する際の参考とするために行われるパスポートの確認(入国審査とは別)において、直前の入国審査で見破られなかった偽造パスポート等を発見したり、動物検疫所での申告を怠って密かに持ち込もうとした輸入禁止食品(ソーセージなど)を発見することもあるなど、「物の規制に限る」という法的な職務範囲とは別に出入国全般に関与する可能性のある職である。ただし、そのような他官庁の所管する法令違反の疑義のある事例を発見(摘発)した場合は、基礎的な事情聴取は行うものの、該当する専門行政機関(警察、海上保安庁、入国管理局、麻薬取締部)に身柄・物品を引き渡すこととなる。
関税法により小型武器(拳銃)の携帯と使用が認められているが、実際に摘発活動を行う場合は警察や海上保安官署などと合同で行うことが多くなっている。税関職員服制(昭和44年大蔵省令第50号)に基づく制服・制帽・階級章の着用などから、公安的な色合いの強い官職との印象が持たれるが、国家公務員法上は公安職でなく行政職に区分される。また、「税関職員」は総称であって、辞令での表記に用いられる「官職」ではない。官職としては財務省の他の職員と同様に「財務事務官」・「財務技官」などの辞令を受けることとなる。
税関職員は、函館、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、門司、長崎、沖縄地区の合計9税関(本関)を中心に、各地の税関支署、出張所・支署出張所、監視署・支署監視署で職務を行う。
主に、国家公務員II種・III種試験の合格者が税関の採用試験・面接を受け、採用されると財務省税関研修所で研修を行い、II種は約2か月間、III種は約6か月間の研修の後、それぞれの職場に配属される。
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[編集] 税関職員の階級
- 階級章は規定されているが、固有の階級呼称は設定されておらず、配属官署の役職・俸給表のランクにしたがって貸与される階級章を佩用する。税関職員の階級は税関長を最高位として9階級に分かれている。警察官や消防吏員の様な正式な階級ではないが、税関という治安にも関わる職務上の関係もあり、指揮系統を厳格化する意味で、階級章を定めて組織の統制が図られている。
税関職員の階級 | |||
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序列 | 階級 | ||
1 | 税関長 | ||
2 | 部長 | ||
3 | 部次長及び同相当職 | ||
4 | 本関課長及び同相当職 | ||
5 | 本関課長補佐及び同相当職 | ||
6 | 本関係長及び同相当職 | ||
7 | 一般職員(特に高度の知識又は経験を必要とする業務を行う一般職員) | ||
8 | 一般職員(相当高度の知識又は経験を必要とする業務を行う一般職員) | ||
9 | 一般職員(一般的な業務を行う一般職員) |
[編集] 入国管理局・同職員との混同
日本では人の出入国管理(パスポート写真の確認、出入国審査の許否など)は法務省の地方支分部局である地方入国管理局(入管)が担当しており、税関・入管両機関の法的根拠・位置づけ・職権・体制等は大幅に異なるが、国際空港の旅客ターミナル等において近接した場所・近似した制服等で職務を行うため、また、組織の歴史と社会的認知度において税関が事実上優位にあるため、入国管理局(入国審査官・入国警備官)を指して税関(職員)であると誤認・呼称する人は少なくない。