血液ガス分析
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血液ガス分析(けつえきガスぶんせき, blood gas analysis; BGA)とは、血液中に含まれる酸素や二酸化炭素の量、あるいはpHを測定する検査。通常は動脈血を測定する。
目次 |
[編集] 目的
主な目的は次の2つである。
ヒトを始めとする高等生物は、生命活動に必要なエネルギーを得るために体内で酸素を消費して二酸化炭素を発生させている。体内で発生した二酸化炭素は血液(静脈血)に乗って肺に運ばれる。肺では呼吸によって血液中の二酸化炭素を放出する一方、酸素を血液中に取り込んでいる。こうして肺を通過した後の血液は酸素を豊富に含み、動脈血と呼ばれる。この血液を採取して酸素と二酸化炭素の量を調べることにより、肺が正常に機能しているかどうかがわかる。
生命活動により体内では様々な有機酸が合成されるが、調節機構のはたらきにより、体内環境は常にpH7.4前後に保たれている。この調節機構が破綻して体内に酸が蓄積すると(例:腎不全など)体内の酸・アルカリのバランスが崩れ、それを代償するために呼吸回数が増えて二酸化炭素の量が減ることがある(二酸化炭素も「炭酸」という酸である)。動脈血中の二酸化炭素の量とpHを調べることにより、間接的に体内の酸・塩基平衡を知ることができる。
[編集] 検査対象
主なもののみ列挙する。
余談ではあるが、皮下静脈が細いなどの理由で採血が困難な患者に対し、動脈からの採血が行われることがある。
[編集] 採血法
大腿動脈(鼠径部)、上腕動脈(肘)もしくは橈骨動脈(手首)などから採血する。通常の採血(静脈)と違い動脈を穿刺するので、看護師ではなく医師が行う。採血管(シリンジ)には抗凝固薬が添加されており、採った血液の凝固を防ぐ。
[編集] 測定法
採血後直ちに測定を行うべきである(採血後時間が経つと値が変化するため)。血液ガス分析器にて自動測定される。また、採血シリンジ内に気泡がある場合、ヘンリーの法則に従い、pO2は大気のそれ(158mmHg)に近づき、pCO2は下がっていくので、出来るだけ検体が空気に触れないようにする。
[編集] 基準値(正常範囲)
基準値は施設により、また病状により異なるので、ここに示すのは参考値である。
- 動脈血酸素分圧(PaO2): 80~100 Torr
- 動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2): 35~45 Torr
- pH: 7.36~7.44
- 重炭酸イオン(HCO3-): 22~26 mEq/L
- 塩基余剰(BE): -2~+2 mEq/L
[編集] 結果
酸素のガス交換は肺胞壁の状態に強く影響される一方、二酸化炭素はあまり影響を受けない。すなわち、PaO2異常→肺胞障害、PaCO2異常→換気障害と考えることができる。
- PaCO2↑
- 換気障害(呼吸停止、気管内異物、気管支炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患など)
- 循環障害(心停止、肺梗塞など)
- 代謝性アルカローシス(下記参照)(pH補正のため代償性にCO2が上昇する)
- PaCO2↓
- PaO2↓
- 換気障害(上記参照)
- 循環障害(上記参照)
- 肺胞障害(肺炎など)
- pH↑
- アルカローシス(ほとんどが過換気による呼吸性アルカローシス)
- pH↓
- 呼吸性アシドーシス(二酸化炭素の排出障害によるもの)
- 代謝性アシドーシス(下記参照)
- BE↑
- BE↓