解除
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解除(かいじょ)とは、契約が有効に締結された後に、契約当事者の一方だけの意思表示(法定解除の場合)又は当事者双方の合意(約定解除の場合)によって、契約が初めから存在しなかったと同様の法律効果を生じさせることをいう。法律用語。
また、解除に類する用語として「解約」がある。これはある時期から将来に向かって契約を消滅させることを言う。解約するまでの契約は有効であることが解除と異なる。しかし、必ずしも「解除」と「解約」が使い分けられているとは限らない。
解除をなし得る権利を、解除権という。
目次 |
[編集] 解除権
[編集] 解除権の発生
解除権には、その発生原因に応じて約定解除権と法定解除権がある。
- 約定解除権は、当事者の合意により一定の場合に行使できる。手付解除(民法557条)はこの一種である。
- 法定解除権は、法律の規定により発生する。
法定解除権も、約定解除権も形成権である。
- 法定解除権
- 履行遅滞(民法第541条、定期行為の場合について民法第542条)
- 債務者が、期限が経過したにもかかわらず、自己の責に帰すべき事由(債務者に責任があること)によって債務を履行しないときは、債権者は、相当な期間を定めて履行を催告し、期間内に履行がない場合に解除権が発生する。なお、定期行為の場合は無催告解除も可能である。
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- 履行不能(民法第543条)
- 債務者の責に帰すべき事由によって、売買の目的物であった建物が焼失するなど、履行が不能になったときは、債権者に解除権が発生する。履行遅滞のケースと異なり、催告は不要である。
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- 不完全履行
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- その他
- それぞれの契約類型につき解除権の発生事由が規定されている。詳細はそれぞれの項目を参照。
[編集] 解除権の行使方法
- 相手方に対する意思表示によってする(民法第540条1項、撤回は不可(民法第540条2項))
- 当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる(解除権の不可分性、民法第544条1項)。
[編集] 解除の効果
解除されると、契約は遡及的に消滅する。その結果、まだ履行されていない債務は消滅し、既に履行された債務については、履行を受けた当事者は原状回復義務を負担する(民法545条1項、金銭の返還方法につき、民法545条2項、同時履行の抗弁権の準用につき、民法546条)。したがって、代金を支払っていたときはその返還を求めることができ、登記を相手方に移転していたときはその抹消等を求めることができる。ただし、第三者の権利を害することはできず(民法545条1項但書)、また損害賠償請求権が消滅してしまうわけではない(民法545条3項)。
[編集] 解除権の消滅
- 催告による解除権の消滅につき、民法第547条。
- 解除権者の行為による解除権の消滅の有無につき、民法第548条。
- 当事者の一方が数人ある場合の解除権の不可分性による消滅につき、民法第544条2項。
[編集] 解約
継続的な性質を持つ契約である賃貸借(民法620条)、雇用(民法630条)、委任(民法652条)については、解除の遡及効が否定され、将来に向かってのみその効力が発生する。文言上は「解除」とあるが、講学上 解約(かいやく)と呼ばれ区別される。告知(こくち)ともいう。
[編集] 合意解除
以上述べたような、一方当事者の意思表示により契約を解消する解除と異なり、両当事者の合意で、契約を解消して契約がなかったことにすることを合意解除(ごういかいじょ)という。両者を併せて広い意味で解除ということもある。
合意解除は、それ自体一種の契約であるから、その効果については、基本的に当事者間の合意内容によって決まる。民法の解除に関する規定は適用されないと解されている。