通話表
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通話表(つうわひょう)とは、電話通信で通信文の聞き間違いを防ぐために制定された頭文字の規則である。
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[編集] 概要
一般的に人間の耳の可聴周波数帯域は 20 - 20,000Hz 程度であり、騒音の大きさを表わすホンと同義である音圧範囲では -20 - 140db 程度である。これに対して人間の発する音声の周波数帯域では、100 - 7,000Hz 程度、音圧範囲では 30db - 60db 程度であり可聴範囲に比べると狭い。
電話は通話先の相手が誰であるかが識別でき、会話が成立すれば用が足りることから周波数帯域は諸設備の費用の観点を併せて 200Hz - 3,500Hz 程度の範囲に設定されている。しかしながら、このような人間の生理的な機能を踏まえても雑踏や喧騒の中で通話する場合には直接相手の顔を遠くから見ているだけで話し声が識別できるカクテルパーティー効果等は期待できず、聞き漏らしや聞き取りにくい状況が起きる。加えて同音異義語や一般に使用頻度の低い語の場合は聞き間違いが生じる可能性が高くなる。
通話表は以上のような状況で無線や電話等で正しく情報を伝達する目的で生まれた。
[編集] 欧文通話表
欧文通話表(ラテン文字)は一般にフォネティックコード(phonetic code)と呼ばれる。通信に限らず多くの業種で用いられ、派生規則があるが、主なものにNATOフォネティックコードがある。例えば ALPHABET を送るときには Alfa Lima Papa Hotel Alfa Bravo Echo Tango と送る。
現行の表は、国際民間航空条約に基づき法制化され、使用が義務付けられているものである(雑音や混信などにより法定表現でも認識してもらえない場合は、地名・人名で表すなど別の表現を使ってもよいとされている)。
文字 | 使用する語 | 文字 | 使用する語 | 文字 | 使用する語 |
A | Alfa | M | Mike | Y | Yankee |
B | Bravo | N | November | Z | Zulu |
C | Charlie | O | Oscar | 0 | Zee-row |
D | Delta | P | Papa | 1 | One |
E | Echo | Q | Quebec | 2 | Two |
F | Foxtrot | R | Romeo | 3 | Tree |
G | Golf | S | Sierra | 4 | Fower |
H | Hotel | T | Tango | 5 | Five |
I | India | U | Uniform | 6 | Six |
J | Juliet | V | Victor | 7 | Seven |
K | Kilo | W | Whiskey | 8 | Eight |
L | Lima | X | X-Ray | 9 | Niner |
[編集] 和文通話表
「つうわひょう」を送る時には「つるかめのツ、上野のウ、わらびのワ、飛行機のヒ、吉野のヨ、上野のウ」と送る。濁音を送るときには「~に濁点」と送る。例えば「かんづめ」を送るときには「為替のカ、おしまいのン、つるかめのツに濁点、明治のメ」と送る。無線通信を管轄していた旧逓信省由来の用語が多く見られる。
以下は、無線局運用規則第14条の3の別表五で示されている通話表である。
- 文字
文字 | 綴り | 文字 | 綴り | 文字 | 綴り | 文字 | 綴り | 文字 | 綴り |
ア | 朝日のア | イ | いろはのイ | ウ | 上野のウ | エ | 英語のエ | オ | 大阪のオ |
カ | 為替のカ | キ | 切手のキ | ク | クラブのク | ケ | 景色のケ | コ | 子供のコ |
サ | 桜のサ | シ | 新聞のシ | ス | すずめのス | セ | 世界のセ | ソ | そろばんのソ |
タ | 煙草のタ | チ | ちどりのチ | ツ | つるかめのツ | テ | 手紙のテ | ト | 東京のト |
ナ | 名古屋のナ | ニ | 日本のニ | ヌ | 沼津のヌ | ネ | ねずみのネ | ノ | 野原のノ |
ハ | はがきのハ | ヒ | 飛行機のヒ | フ | 富士山のフ | ヘ | 平和のヘ | ホ | 保険のホ |
マ | マッチのマ | ミ | 三笠のミ | ム | 無線のム | メ | 明治のメ | モ | もみじのモ |
ヤ | 大和のヤ | ユ | 弓矢のユ | ヨ | 吉野のヨ | ||||
ラ | ラジオのラ | リ | りんごのリ | ル | るすいのル | レ | れんげのレ | ロ | ローマのロ |
ワ | わらびのワ | ヰ | ゐどのヰ | ヱ | かぎのあるヱ | ヲ | 尾張のヲ | ||
ン | おしまいのン | ゛ | 濁点 | ゜ | 半濁点 |
- 「るすい」については、留守居または留水の両説が存在する。
- 数字
文字 | 綴り | 文字 | 綴り | 文字 | 綴り | 文字 | 綴り | 文字 | 綴り |
一 | 数字のひと | 二 | 数字のに | 三 | 数字のさん | 四 | 数字のよん | 五 | 数字のご |
六 | 数字のろく | 七 | 数字のなな | 八 | 数字のはち | 九 | 数字のきゅう | 〇 | 数字のまる |
- 「いち」と「しち」、「に」と「し」の聞き違いを防ぐ為にこの読みが厳格に指定されている。
- 「二」を「数字のふた」と送る(自衛隊や鉄道事業者では行なわれている)のは誤りで、無線局運用規則別表第五号「1. 和文通話表」には「数字のに」と定められている。
- 記号
文字 | 綴り | 文字 | 綴り | 文字 | 綴り | 文字 | 綴り | 文字 | 綴り |
ー | 長音 | 、 | 区切り点 | ∟ | 段落 | ( | 下向括弧 | ) | 上向括弧 |
[編集] 関連項目
- 無線通信
- アマチュア無線
- Q符号
- 国際音声記号(国際音声字母)、国際音声記号の文字一覧
- 音声学
- NATOフォネティックコード