電力自由化
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電力自由化(でんりょくじゆうか)とは、日本の一般電気事業者(一般の電力会社)が地域毎に独占的供給を行ってきた電力を、既存の電力会社以外でも自由に売買できるようにした、規制緩和の一連の動きのこと。
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[編集] 電気事業法改正に伴う自由化の変遷
- 1995年 電力会社に卸電力を供給する発電事業者(IPP)の参入が可能に、また大型ビル群など特定の地点を対象とした小売供給が特定電気事業者に認められた。
- 2000年 2,000kW以上で受電する大需要家に対して、特定規模電気事業者(PPS)による小売が認められる。
- 2003年 電源調達の多様化を図るため、有限責任中間法人日本卸電力取引所が設立。
- 2004年 2000年に定められた基準を500kW以上に引き下げ。
- 2005年 2004年に定められた基準を50kW以上に引き下げ。
- 2005年 日本卸電力取引所の市場が開設。
[編集] 自由化に向けた問題点
[編集] アメリカにみる問題点
当初は安い電力供給の形態を模索し、アメリカ合衆国など諸外国に倣い始まった規制緩和であるが、早々に諸問題に直面することとなった。特に、2000年以降、アメリカ合衆国内では競争激化のため送電システムの管理がおろそかになり大停電が発生したこと、新興の電力供給会社であるエンロンが破綻するなど、安定的な電力供給(停電が生じた際のリスク)について大きな課題が浮き彫りになった。
ただ、これは最終的な消費者にコストが知らされないで配電会社のみにそのコストリスクを押し付けた制度設計の不備が指摘されている。ヨーロッパ北部で行われている電力自由化などでは設計を上手く行っているために社会全体から見れば適切な資源配分が行われるようになっている。
[編集] 日本の事情
新規事業者が発電事業を立ち上げても、送電は既存の電力会社の送電線を借用せねばならず、価格決定権を得ることが出来ない脆弱なビジネスモデルにしかならない現実がある。このため、新規参入業者のビジネスは、大規模な工場など極めて限定的な地域にとどまっている。これらの状況から、日本では、自由化の進展は極めて厳しいという見方をする者もいる。しかしながら、2006年2月16日付『日経産業新聞』によると、これまでに東京電力は1,100件(220万Kw)、関西電力は270件(58万Kw)、新規事業者に顧客を奪われ新規事業者は確実に顧客を掴みつつあり、既存会社は危機感を募らせている。
日本では山岳地形や過密化した都市環境の中で、送電網の整備と維持に膨大な労力を払わねばならない現実がある。経済的負担は既存の電力会社にかかるが、基盤の脆弱な新規事業者は負担しなくてもよいという利点もある。 また、電気料金に直接結びつく有効電力量については新規事業者も着目し発電力の確保や発電所の自前立ち上げなどをするが、電力系統の安定運用に必要な無効電力供給のための調相設備の設置や周波数の維持に必要な上げ余力・下げ余力の保持など、アンシラリーサービスと呼ばれる安定運用のための投資が既存の電力会社にかかっていることを考慮する必要がある。
なによりも、設備間境界での設備の維持・増強についての責任をどこが取るかを考えると、日本の安定供給は、アメリカなどのような構造規制では実現し得ないと考えられる。そこで、電気事業法でも行為規制により、託送供給部門と競争営業部門の情報遮断により自由化を阻害しない手法を取っている。
当初は、既存の電力会社の一時的な電力需要に備えた発電所の剰余電力の一部を買い取るが数社があったが、2006年現在、石油会社、ガス会社、エネルギー機器関連企業などが新規参入し自ら発電所を建設するなど売電量を増やしているが新規事業者は、京都議定書による二酸化炭素削減義務がない為、発電コストが安い石炭の需要が増え二酸化炭素排出量が増えてしまっている。
広島県広島市のジャスコ宇品店は2005年11月より九州電力の区域外電力供給を受けるために中国電力からの電力供給を取りやめるなど既存会社でも競争が激しくなっている。