CMOS
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CMOS(シーモス、Complementary Metal Oxide Semiconductor)は相補形MOS(金属酸化膜半導体)のこと。
pチャネル と nチャネル のMOSFETを、相補うように接続した集積回路の構造である。TTLなどに比べて消費電力の少ない論理回路を実現でき、また集積度を上げることが可能である。
MOSFETの動作領域における直流伝達特性は、線形領域における出力電圧が入力電圧にほぼ等しいのに対して、飽和領域における出力電圧はゲート電圧から「しきい値電圧」を引いた値となる。p-MOSFET が飽和領域のとき n-MOSFET は線形領域であり、n-MOSFET が飽和領域のとき p-MOSFET は線形領域であることより、CMOSの動作領域の殆どを線形領域とすることができる。厳密には両者の「しきい値電圧」が重なる領域が存在するため、使用しない入力端子は「しきい値電圧」領域に入らないようプルアップ、またはプルダウン処理しておく必要がある。
CMOS構造にすると、ゲート電圧に加える制御パルスを"1"から"0"に変化したときは劣化することなく直前の出力のままにでき、"0"から"1"に変化したときは劣化することなく入力信号が出力できる。
CMOS構造の論理回路は、電源電圧を低くすると消費電力が少なくなる反面、伝達遅延時間が大きくなる性質を持つ。製造プロセスの改良により、低電圧動作と高速化の両立が図られてきている。
1990年代になると、半導体メモリやマイクロプロセッサなどのロジックICはほとんどがCMOS構造となり、小容量電源回路・アナログ-デジタル変換回路・デジタル-アナログ変換回路などを含むものも製作されるようになった。
[編集] CMOS標準ロジックIC
単一電源でCMOSレベルの入出力インターフェースで統一された集積回路である。(74HCTや74ACTのように、入力ロジックレベルをTTLに合わせたタイプもある。)
型名表示 | 電源電圧範囲 (V) |
遅延 (ns) |
静止時電流 (μA/Gate) |
特徴 |
---|---|---|---|---|
4000 | 3 - 15 | 30 | 200 | 初期の標準品 |
74HC | 2 - 6 | 10 | 23 | 74シリーズとピン配置互換 |
74AC | 2 - 5.5 | 8.5 | 40 | HCを高速化したもの |
74LVX | 2 - 3.6 | 12 | 20 | 3.3V専用 |
74LCX | 2 - 3.6 | 6.5 | 10 | 3.3V専用高速版 |
74VCX | 1.8 - 3.6 | 2.5 | 20 | 2.0V対応 |
[編集] CMOS入出力レベル電圧 (V)
- Hiレベル入力電圧 : 0.7×Vcc
- Lowレベル入力電圧 : 0.2×Vcc
- Hiレベル出力電圧 : Vcc-0.8
- Lowレベル出力電圧 : 0.4
Vcc : 電源電圧
[編集] 関連項目
分類 | P型半導体 | N型半導体 | 真性半導体 | 不純物半導体 |
---|---|
種類 | 窒化物半導体 | 酸化物半導体 | アモルファス半導体 | 電界型半導体 | 磁性半導体 |
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