エアバスA330
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エアバスA330
エアバス330(Airbus A330)は欧州エアバス社によって製造されている中・長距離商業大型ジェット旅客機である。エアバスA300の後継機として開発された。A340とほぼ同時期に開発が始められた双発ワイドボディ機で、エンジン数を除いては基本的な構造はA340とほぼ同じ。A340が洋上飛行の制約を受けない、航続距離13,000km以上の4発長距離機であるのに対し、A330は航続距離13,000km以下の中・長距離機となっている。
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[編集] 操縦装置及びフライトデッキ
A320で確立されたフライ・バイ・ワイヤを用いた操縦装置は、基本的にA340と同じ、A320を改良したものである。双発と4発という違いはあるものの、相互乗員資格(CCQ)を用いることで短い訓練期間で相互の機体を操縦することができる。また操縦装置に共通性を持つ双発ナローボディのA320や、今後登場する総二階建て大型機のA380でも同様であり、各機種間を短い訓練期間で移行することが可能である。
計器はギアブレーキ温度計を除いてCRTモニターを用いたグラスコックピットで、後にモニターには液晶が使われるようになった。両席正面に、水平儀や速度、高度を表示するPFDを外側に、航法情報を表示するNDを内側に並列におき、両席中央にエンジンやシステム全体の状態を示すECAMを縦に二つ配置するなど、配置は基本的にA320と同じ。またFBWの導入と同時にエアバスの「顔」にもなったサイドスティックやスピードブレーキ、フラップ、ノーズギアの操舵ハンドルなどの配置や細かなデザインも同様である。また機体制御のシステム全体も共通性を持たせる設計になっている。
[編集] 開発
1980年代前半、エアバスは自社のA300やA310の後継となり、かつDC-10やL-1011、ボーイング767などと競争できる長距離旅客機の開発をはじめた。基本コンセプトはA300と同一の胴体断面を持ち、エンジンが双発のものと4発のものの2種を同時に開発することにあった。1987年6月に航空会社より発注が得られたために、開発が本格化し、双発型はA330、4発型はA340と命名された。初飛行は1992年11月2日、1994年1月より就航している。
[編集] 機体特徴
[編集] 各型式
A330は航続距離6650海里の標準的な-200型と、胴体を延長して座席数を増やし、航続距離が5600海里になった-300型がある。 エアバス社が示す基本的な座席数は3クラス構成で、-200型が253席、-300型が295席。
[編集] エンジン
エンジンはロールスロイス社のトレント700、プラット・アンド・ホイットニーのPW4000、ジェネラル・エレクトリック社のCF6-80Eを選択することが出来る。推力は68,000ポンドから72,000ポンドである。ほぼ同じ設計のA340が4発機であるのに対し、A330は双発であるため、やや強力なエンジンを搭載している。
[編集] 翼
A330の主翼はA340-200・-300と同じものである。翼端には翼端渦を減らして空気抵抗を減らし、揚力を効率的に生み出す為のウィングレットが装着されている。
[編集] 派生型
A330型機は2つの派生型がある:胴体延長型のA330-300型機 全長63.6 m (208フィート) 及び航続距離10,500 km (5,650マイル)。胴体短長型のA330-200型機 全長59.0 m (193フィート) 及び航続距離 12,500 km (6,750マイル)。
[編集] A330-200型機
A330-200型機はA300-600R型機の部品を代替する形で767-300ER型機と競合するよう開発された。この型は原機300型の短長型である。
3クラス構成の旅客数253名で航続距離は12,500 km (6,750マイル)である。
動力は2基のGE社製CF6-80E型、プラット・アンド・ホイットニー製PW4000型かロールスロイス製Trent700型エンジンが採用されている。最初の顧客であるILFC/Canada 3000へ引き渡されたのは1998年4月であった。
ボーイング社製の同様の航空機は767-400ER型機及び787型機になる。
A330-200型機の運行はノースウエスト航空、エアリンガス、エールフランス、エア・トランサット、オーストリア航空、エミレーツ航空、エバー航空、Gulf 航空、LTU、ルフトハンザ航空、マレーシア航空、カンタス航空、Qatar 航空、スイスインターナショナルエアライン、及びTAMが含まれる。
[編集] A330-300型機
A330-300型機はエアバス A300型機の代替のために開発された。延長したA300-600型機の胴体を基本にしているが新しい翼、安定装置及び新しいフライーバイーワイヤ・ソフトウエアが装備された。
A330-300型機は航続距離10,500 km (5,650マイル) 以上の3クラス制客室設計で乗客295名を輸送する。この型はボーイング747型機に匹敵する大きな貨物容量を持っている。いくつかの航空会社は昼間の旅客サービス後にオーバーナイト貨物運行を行っている。
2基のGE社製CF6-80E型、プラット・アンド・ホイットニー製PW4000型かロールスロイス製Trent700型エンジンを採用している。
ボーイング社製の同様の航空機は777-200型機になる。
A330-300型機の運行はエアリンガス、エア・カナダ、キャセイ・パシフィック航空、ドラゴン航空、ガルーダインドネシア航空、大韓航空、マレーシア航空、ノースウエスト航空、フィリピン航空、カンタス航空、SAS、SNブルッセル航空、タイ国際航空、及びUSエアウェイズが含まれる。
[編集] A330-200MRTT型機
A330-200型機の多目的タンカー輸送型 (Multi Role Tanker Transport) は空中給油機及び戦略輸送機として供給された。2004年1月、イギリス国防省はA330MRTT型機が次の30年間の未来の戦略空中給油機計画下でRAF用に空中給油機として採用する決定を発表した。
[編集] A330-200Lite型機
A330-200Lite型機は787-9型機と競合するよう企画された重量の軽減及び新しいエンジンを備えた型である。この概念は拡張されA350型機と名称変更された。シンガポール航空 (SIA) はいくつかの潜在的な顧客の1社であった。
[編集] A330-500型機
A330-500型機はA300やA310の代替需要を狙って、-200型の胴体をさらに短縮するという構想。航空会社の関心を得ることができず、計画段階で頓挫した。
[編集] A330-200F型機
A330-200F型機はMD-11FやDC-10F、A300-600Fの代替機を狙って、-200型の客室を貨物室にかえるフレイター型のA330。まだ発注はないが、A340-600Fとともに製作ができる段階まで持ち込んでいる。
[編集] 仕様
A330-200(括弧内は-300)
- 全長 :59m(63.6m)
- 全幅 :60.3m
- 全高 :17.89m(16.7m)
- 主翼面積 :361.6㎡
- 最大離陸重量:230t
- 最大着陸重量:180t(185t)
- 最大燃料容量:130,090ℓ(97,530ℓ)
- 基本座席数 :253席(295席)※3クラス
[編集] 事故概略
(2004年現在)
- 機体損失事故:1回、総計7人死亡。
- 他の原因:1回、総計0人死亡。
- ハイジャック:2回、総計1人死亡。
[編集] 関連ウィキペディア項目
- 相互乗員資格(CCQ)
[編集] 外部リンク
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