エアポート快特
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エアポート快特(-かいとく)とは、東京都交通局・京浜急行電鉄が自者及び京成電鉄の車両を用い、主に押上駅~羽田空港駅間を都営地下鉄浅草線・京浜急行本線・空港線経由で運行する快特のうち、都営地下鉄浅草線内で通過駅を有する列車を指す列車種別である。英文種別名はLimited ExpressとAirport Limited Expressを併用している。
なお、本稿では過去に運行していた「エアポート特急」に付いても記述する。
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[編集] 概要
京急線と都営浅草線に存在する種別だが、京急線内では快特と同一の停車駅であるため、都営線内でのみ他の種別とは違い通過駅を有するという特別な意味合いを持っている。また、押上駅から先の京成押上線・京成本線にも主に快速として直通運転されている。
写真にあるとおり、種別幕・種別表示器及び路線図の案内では「エアポート」の代わりに飛行機のマーク(以下、"(飛)"と記す。)を頭に付け、「(飛)快特」と表記されている。また、京成線内では羽田空港方面行きのみ「(飛)快速」と表記して押上から種別がエアポート快特に変わることを示すが、成田方面行きではその必要が無いため単に「快速」とされる。なお、京成線内では原則的に「(飛)」は「エアポート」とは読まず、「(飛)快速」でも単に「かいそく」と読まれる。
運行当初は羽田空港~成田空港間のアクセス列車を意図して運行されていたが、2002年以降では空港間アクセス列車としての役割は弱くなり、都営地下鉄浅草線内で急行運転をする速達列車としての側面が大きくなってきている。乗り入れ先である京浜急行電鉄・京成電鉄での扱いが一律ではなくなったことから、東京都交通局独自の種別としての色合いが強くなった。
また、運行区間も当初の羽田空港駅~成田空港駅間から京成成田駅、芝山鉄道線芝山千代田駅間と変更されている。ただし羽田空港駅発の片道5本のみ成田空港駅行きが設定されている(2006年7月現在)。
エアポート快特以外にも羽田空港~成田空港間を運転する列車は存在する(2006年7月現在)。
- 羽田空港→(急行)→品川→(特急)→成田空港(平日の夜に2本)[1] [2]
- 羽田空港→(急行)→品川→(通勤特急)→成田空港(平日の夜に1本)[3]
- 羽田空港→(快特)→品川→(快速)→成田空港(土曜・休日の夜に1本)[4]
- 成田空港→(特急)→押上→(急行)→羽田空港(平日の朝に1本)[5]
- 成田空港→(特急)→押上→(快特)→羽田空港(土曜・休日の朝に1本)[6]
[編集] 運転形態
運行当初より、都営浅草線内の待避線がないことから朝夕の通勤時間帯は運行しなかったが、2005年現在ではそれが崩れており、日中時間帯以外に早朝の羽田空港行きが1本、平日夜間の成田方面行きが6本、休日夜間の成田方面行きが2本存在する(2005年現在)。
- 京急線内
- 京急線内は、快特と同一の停車駅で運転している。但し、2004年のダイヤ改正により平日夜間の成田方面行き列車は急行として運行される。
- 1999年までは、特急と同一の停車駅で運転するエアポート特急も存在した。
- 都営地下鉄線内
- 都営地下鉄浅草線内は一部の駅を通過する。停車駅の項も参照のこと。しかし、地下線内は押上駅・泉岳寺駅を除き待避線が無いため、両駅で先行列車に追いつくダイヤとなっている。通過駅では55km/h制限で通過するが、先頭車がホーム先端に達した時点で速度を上げるのでスピード感がある。停車時間が30秒と他種別より長いのが特長。
- 京成線内
- 京成線内では速達列車としての役割は持たず、快速として運転されている。前述のとおり、羽田空港方面行きのみ「(飛)快速」と表記される。
- 運転当初から2002年までは、空港間アクセスの役割を果たすため、他線と同様に京成線内でも速達運転がなされていた。京成線には"快特"という種別は無かったため特急として扱われ、両方面とも「(飛)特急」とされた。40分間隔で成田空港発着列車と青砥・高砂発着列車が交互に運転されており、成田空港発着列車は青砥で上野~高砂間を往復する特急と連絡、青砥・高砂発着列車は同じく青砥で上野~成田空港間を往復する特急と連絡していた。しかし、宣伝不足等で利用者が少ないことや、上野発着の特急との差別化を図れなかったことから、2002年に行われた京成電鉄の運転系統整理により快速と同一の停車駅で運転されるようになった。また、羽田空港駅行列車は京成成田駅発に短縮し、青砥・高砂発着列車が京成成田駅発着に延長された。このため羽田空港駅~成田空港駅の所要時間は2時間を超え、空港間連絡列車の役割は弱くなった。
- 2004年の改正で新設された夜間の成田方面行きの列車については、京成線内は特急・通勤特急として運行される。この列車は都心からの帰宅客に対して所要時間の短縮を図ったもので、これにより日本橋駅~勝田台駅間は改正前の最速49分から改正後は最速45分に短縮された。これはこの区間で競合する東京地下鉄東西線・東葉高速線への対抗策と考えられる。
- 2006年の改正で成田空港駅発羽田空港駅行の片道1本のみ空港直結の特急が復活予定である(土曜日・休日のみ)。この列車は快特であるため都営浅草線内各駅に停車するが、羽田空港駅~成田空港駅間を過去のエアポート快特とほぼ同等の1時間46分で結ぶ予定。
[編集] 使用車両
京浜急行電鉄・東京都交通局・京成電鉄の車両が使われている。当初より京急600形電車(の一部)を除いては車両座席が長距離乗車を前提としたクロスシートではなく、通例の相互乗り入れ列車に使用されるロングシート車両があてがわれている。また、ダイヤが乱れた場合を除き都営浅草線・京成線内で使用する「停車駅予報装置」(停車駅が近づくとブザーを鳴らす装置)を搭載する車両のみがこの運用に入る。
※京成3500形を除き、全編成8両固定編成のみの運行。
- なお、ダイヤ乱れで代走を走らせる場合はこの限りではない。
[編集] 停車駅
事業者名 | 路線名 | 停車駅 | 早朝・昼間時 京成線内 快速扱い |
夜間 京成線内 特急・通特扱い |
|
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平日 | 休日 | ||||
芝山鉄道 | 芝山鉄道線 | 芝山千代田駅 | ● | ||
京成電鉄 | 東成田線 | 東成田駅 | ● | ||
本線 | 成田空港駅 | ● | ● | ||
空港第2ビル駅 | ● | ● | |||
京成成田駅 | ● | ● | |||
公津の杜駅~大佐倉駅間各駅 | ● | ▲ | |||
京成佐倉駅 | ● | ● | |||
志津駅~京成臼井駅間各駅 | ● | ▲ | |||
勝田台駅 | ● | ● | |||
京成大和田駅 | ● | | | |||
八千代台駅 | ● | ● | |||
実籾駅 | ● | | | |||
京成大久保駅 | ● | | | |||
京成津田沼駅 | ● | ● | |||
船橋競馬場駅 | ● | | | |||
京成船橋駅 | ● | ● | |||
東中山駅 | ● | | | |||
京成八幡駅 | ● | ● | |||
京成小岩駅 | ● | | | |||
京成高砂駅 | ● | ● | |||
青砥駅 | ● | ● | |||
押上線 | |||||
押上駅 | ● | ||||
東京都交通局 | 浅草線 | ||||
浅草駅 | ● | ||||
東日本橋駅 | ● | ||||
日本橋駅 | ● | ||||
新橋駅 | ● | ||||
大門駅 | ● | ||||
三田駅 | ● | ||||
泉岳寺駅 | ● | ||||
京浜急行電鉄 | 本線 | ||||
品川駅 | ● | ● | ● | ||
青物横丁駅 | | | ● | | | ||
立会川駅 | | | ● | | | ||
平和島駅 | | | ● | | | ||
京急蒲田駅 | ● | ● | ● | ||
空港線 | |||||
糀谷駅~天空橋駅間各駅 | | | ● | | | ||
羽田空港駅 | ● | ● | ● |
- 凡例
- この背景色の区間(平日夜間は押上駅~泉岳寺駅間、それ以外は押上駅~羽田空港駅間)でエアポート快特と称される。
- この背景色の区間(成田空港駅~押上駅間、夜間以外)では、羽田空港方面行きのみ(飛)快速と表記される。
- ●:停車, |:通過, ▲:通勤特急のみ停車
- 停車駅駅名のこの書体は始発・終着駅
[編集] 沿革
1998年の運転開始より羽田空港~成田空港間のアクセス列車として運行されていたが、2002年以降、京成線内で利用者が少ないため、成田空港駅始発の列車は設定されていない。運転開始当初は、エアポート快速特急(かいそくとっきゅう)と名乗っていた。
- 1998年11月18日、エアポート快速特急・エアポート特急運転開始。羽田空港駅~成田空港駅間のアクセス列車として運行。両者合わせて40分間隔(単独では80分間隔)のダイヤで運行される。運行開始当日には羽田空港、成田空港両駅において一番列車の出発式と到着式を行った。また、都営浅草線新橋駅でもささやかながらイベントを開催した。
- 1999年1月15日、早朝1本ながら泉岳寺駅発羽田空港駅行きのエアポート快速特急が運行開始(2004年廃止)。
- 1999年7月31日、京浜急行電鉄の運転系統整理によりエアポート特急を吸収し昼間時に40分間隔で運行するダイヤとなる。正式名称が京急ではエアポート快特となる。
- 1999年11月18日、運転開始1周年並びにワイン「ボジョレー・ヌーボー」輸入解禁日が重なったため、成田空港駅よりエアポート快特の1本を「羽田・成田空港直通特急1周年記念 ボジョレー・リレー号」として運転する。なお成田空港、新橋、羽田空港の各駅で「ボジョレー・ヌーボー」の試飲会を実施した(新橋駅、羽田空港駅向けの「ボジョレー・ヌーボー」は成田空港駅より「ボジョレー・リレー号」を使用して搬送)。
- 2000年12月12日、都営大江戸線の開業に伴い、大門駅を停車駅に追加。
- 2002年6月、都営浅草線内の駅自動案内放送更新を機に都営線内の正式名称もエアポート快特となる。
- 2002年10月12日、京成電鉄の運転系統整理により、以下のように変更。
- 京成電鉄線内の扱いを「特急」から「快速」扱いに変更。京成本線内の停車駅が増加。
- 羽田空港駅行列車は京成成田駅発に短縮。ただし一部京成高砂駅始発も存在する。
- 京成青砥駅・京成高砂駅発着列車を一部を除き京成成田駅発着に延長。
- 2004年10月30日、都営地下鉄浅草線及び乗り入れ各社のダイヤ改正により、エアポート快特が夜間帯に運行されることとなり、扱いが以下のように変更された。
[編集] エアポート特急
京成線青砥駅・京成高砂駅発着のものについては、1998年の運転当初は「エアポート特急」と称し、別の種別として運行された。
運転形態としては、京急線内は特急と同じ停車駅(空港線内各駅停車)であるが、都営地下鉄浅草線内・京成線内についてはエアポート快速特急と同様としていた。青砥駅・京成高砂駅で京成上野駅発着の京成本線特急に連絡していた。しかし1999年7月31日に京浜急行電鉄の運転系統整理によりエアポート快特に格上げされた上で廃止され、わずか8ヶ月の短命種別となってしまった。この列車の特徴として、平和島で後続の快速特急に抜かれていたため、本線系の特急より所要時間がかかっていたことである。
[編集] 京成線の(飛)特急
エアポート快特(エアポート特急を含む)は2002年まで京成線内では特急運転され羽田空港方面・成田空港方面とも「(飛)特急」とされていたが、これ以外に京成上野~成田空港間の特急も「(飛)特急」とされており、京成線内のほとんどの特急が「(飛)特急」となっていた。単に「特急」とされたのは都営浅草線西馬込~成田空港間の特急(都営線内は各駅に停車)と京成佐倉止まりなど成田空港発着でない特急(ただしエアポート快特直通の青砥・高砂発着を除く)のみであった。なお、これらの「(飛)特急」も現在の「(飛)快速」と同様、京成線内では原則的に「(飛)」は発音しないものとされ、単に「とっきゅう」と読まれていた。