京成3400形電車
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京成電鉄の3400形電車(3400がたでんしゃ)は、1993年(平成5年)から導入された京成電鉄の通勤形電車である。
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[編集] 概要
1993年1月にAE形の足回りを流用し、普通鋼製の新造車体を大榮車輌で新製して登場した。1995年11月までに種車と同数の8両固定編成5本が製造されている。
車体は窓配置を含めた形状などは全て3700形と同一で、外観スタイルは3700形鋼製塗装車とも言える。なお塗装は、3200形で試験実績のあるライトグレーをベースに赤と青の帯が本格的に採用された。
編成は3700形と同様で3401~3408が3408編成、3411~3418が3418編成という順で、末尾3と6が付随車の他は両先頭車を含め電動車で、都営浅草線、京急線や北総線にも乗り入れが可能である。パンタグラフはAE形流用の下枠交差式(PT48形)を末尾2と7の両端と末尾4の片面に配置した。
MGはAE形流用のCLG-350-Cを付随車に搭載、CPもAE形から流用したC-2000-Mを末尾1・4・8に搭載した。台車は付随車がAE形先頭車時代のFS-083を、電動車にFS-383Aを流用したが、3444・3445はAE形時代に制御車から中間電動車化したAE64・AE65のものを流用したため、FS-543Bを装着している。
制御装置は、AE形時代の東洋製の永久並列界磁チョッパ制御でモーターも種車からの流用で、東洋製TDK-8500A(140kw)である。定速走行装置は撤去された。
性能上で特徴的なのは、機器を流用した元AE形が特急車であったが故に、低速域の衝動防止のために回生制動の回路を直列に切り替える機構がなく(主制御器自体に直列段がない)、京王6000系1M車と同様45km/hで失効してしまい、それ以下の速度では空気制動しか機能しないことである。このため、雨や雪の日における滑走時の運転取り扱いには技量を必要とする。
冷房装置は3700形とは異なり、3200・3300形(通称「赤電」)や3500形・3600形と同様の分散式CU-15Aを搭載した。
室内は、平天井(送風機はラインデリアを採用)や各部配色などで3700形1次車と同様である。同車との相違点は先頭車に車いすスペースを配置したことや、分散式を採用したことに伴いクーラーフィルター形状が異なる程度である。
全編成とも、落成当初は末尾4と5の中間電動車ユニットを除いた暫定6両固定編成で落成し、6連普通主体で営業運転開始したが、数か月遅れて中間電動車ユニットが落成した後に8両固定編成化された。
各編成の6連落成年月および8連化(中間電動ユニット落成後配置)は以下の通り(左は6連落成年月、右は8連化)。
- 3408編成:1993年1月/1993年3月
- 3418編成:1993年9月/1994年5月
- 3428編成:1994年3月/1994年7月
- 3438編成:1995年1月/1995年3月
- 3448編成:1995年9月/1995年11月
6両固定編成時代は千葉線や千葉急行線(→千原線)にも営業運転のために入線したことがあったが、時期的な関係上3418・3448編成以外は大森台~ちはら台間に入線したことはない。ただし、3418編成は後述の事情により1999年5~9月に暫定6両固定編成になり同区間に入線している。
3400形は製造年が比較的短い2年10か月であったが、以下のように年代別の差異がある。
- 1993年9月落成の3418編成で種別幕・方向幕を小文字併用英字併記細ゴシックタイプのものを採用した。前面貫通扉の種別幕でこのタイプを採用したのは京成で初めてであるが、後述の通り2002年10月の種別改正に伴い3500形非更新車以外の全車両で種別幕がすべて交換された。方向幕に関しては同編成が落成する前の1993年6月より3200形6M車の大半で使用されており、3600形でも交換作業が進行中だった。
- 1995年9月落成の3448編成で前面に3700形と同様のスカートを設置した他、発車予告の車外放送、カバン置き、計器盤と前面ガラスの間のゴム、乗務員室仕切り扉のルーバー、車掌台と運転台それぞれの足元の暖房などが追設された。3438編成以前の編成についてもスカート、カバン置き、計器盤と前面ガラスの間のゴムについては改造で追設されている。
[編集] 主な改造・動き
- 3448編成がスカート付きで登場してまもない1995年11月から、3418編成を皮切りに3408~3438編成の前面スカート設置工事が行われ、1996年9月の3438編成を最後に設置が完了した。
- 1998年10月に3408編成で種別幕と方向幕を小文字併用英字併記入り細ゴシックタイプに変更した。なお3418編成で1996年初頭から予備品の関係上一時的に旧タイプの幕を使用していたが、この時期に小文字併用英字併記入り細ゴシックタイプに戻された。
- 3418編成は、1999年春に行った定期検査時に中間電動ユニットの3414~3415で制御装置に不具合を発見した。修理を要することから、1999年5月上旬~9月下旬に同ユニットを除いた暫定6両固定編成で運用に入った。同編成は、暫定6両固定編成の期間が編成落成で中間電動ユニット未落成時の期間を含めると延べ12か月で、最も長い。
- 2001年3月、全車両の側面にK▼SEI GROUPロゴを貼付した。従来の筆記字体のKeiseiロゴは残したままである。
- 3408編成は2002年5月末~8月末に北総鉄道に短期リースを行った。これは同社で廃車直前の7050形8両に定期検査期限延期に伴う休車が発生したためである。短期リースのため車号や形式は変えずに外観塗装・車号・社名プレートも京成仕様のままでN運用に入った。
- 2002年7~9月に全車両の前面・側面の種別幕を10月12日の種別変更によるダイヤ改正対応のものに交換された。普通=黒、快速=ピンク、特急=赤などに各種別色分けし、前面幕は白地に種別色文字・側面幕は種別色地に白文字となった。文字体は1993年9月の3418編成以降で採用されたものと同様に細ゴシック小文字併用英字併記タイプとなった。
- 2003年9月~2004年3月に連結部に転落防止幌を設置した。
- 2003年8月~2005年10月に室内シートの生地をダークピンク色のものからラベンダー模様入りの色(3700形6次車以降・新3000形などと同色)のものに変更した。
- 客室蛍光灯破損時による事故防止のため、2004年4~6月に全車両の室内客室部蛍光灯すべてを従来の昼白色タイプから飛散防止形白色タイプに交換するとともに、多少室内の色温度が低くなりイメージが変わった。
- 2005年9月から3418編成を皮切りに室内扉部のLED案内表示器を新3000形と同タイプに交換する作業が進められている。ただし、これは装置こそ新3000形で使用しているものと同じだが、カバーは同じではない。新しいLED案内表示器は、千鳥配置に設置され、非設置の箇所には広告枠が設けられた。2005年10月に3408編成、2006年7月現在では3428編成でも交換済み。7月現在3438編成、3448編成は未施工で、この2編成も近々交換予定。
- 2005年からはパンタグラフが下枠交叉形(PT48形)からシングルアーム形に取り替えられている。
- マナー強化のため、2005年12月~2006年2月に全車両の優先席付近の吊り革を輪・皮共に黄色いタイプのものに変更するとともに、窓には優先席を表すステッカーも貼付された。
- その他、3408編成のみ他の編成とはブレーキ緩解音が異なる。
[編集] 現状
- 3700形と同様に京急線羽田空港直通の快速(エアポート快特)に使用される機会が多い。しかし、種車であるAE形の機器等も30年以上経過しているため、今後の動向が注目されている。
- 2006年4月29日から実施されている英語放送(市販のICレコーダーを用いて行う簡易的なもの)に関連して、全編成の車掌側放送機器にICレコーダー接続箱が新設されている。なお、英語放送を実施するのは京成上野~成田空港間の特急と快速の一部(8連のみ)である。
[編集] 諸元表
- 自重:電動車35.0t、付随車31.0t
- 加速度:3.3km/h/s
- 減速度:4.0km/h/s(常用最大)/4.5km/h/s(非常最大)
- 最高速度:120km/h(設計最高)
- 主電動機:東洋電機製造製複巻直流電動機「TDK-8500A」出力 140kw
- 制御方式:界磁チョッパ制御
- 制御装置:東洋電機製造製ACRF-H8140-766A 直列段無し・並列12段抵抗制御、分巻界磁チョッパ制御、定速運転(3400形流用時撤去、50km/h以上)機能
- ブレーキ方式:回生ブレーキ併用電気指令式電磁直通ブレーキ(MBS-R)
- 保安装置:京成電鉄・新京成電鉄・北総鉄道・京浜急行電鉄・芝山鉄道・都営地下鉄浅草線で使用されている1号型ATS及びC-ATS