エフェクター
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エフェクター(effect)とは、特別な効果(エフェクト)を与えるもの、特に音響効果を与える目的で使用される機器をいう。
マイクロフォン(マイク)で集音された音、あるいは電気楽器や電子楽器など電気信号に変換された音声に対して、スピーカーまたは録音媒体に至るまでの途中に挿入して一定の効果を与え、さまざまな音に変化させる。
「効果音」もエフェクトの一種であるが、効果音を作り出す機器はエフェクターとは区別されている。またビデオや映画で映像に効果を与える機器や、舞台で煙を発生させたり雲や画像を映写する装置をエフェクターと呼ぶこともある。
原理は、オーディオテープ、スプリングなど機械的機構を利用したもの、アナログ電子回路によるもの、さらにデジタル電子回路で組まれたものやコンピュータソフトウェアで実現されたものなどがある。
形態についても、演奏家が使用する手のひら大のコンパクト・エフェクターから電気録音・PAで汎用的に使用され、規格化された幅のラックに収納するラックマウント型、ミキサーやシンセサイザーあるいはカラオケに内蔵されたものまで多様である。
デジタル化の進展により複数の機能を実装したマルチエフェクターが一般的になってきた。単機能エフェクターに比べてより少ないスペースで済む、複数の機能を組み合わせるのが容易などのメリットがあるが、単機能エフェクターに比べて操作性に劣る、あるいは要求する音質と違うなどの理由で演奏では単機能のコンパクト・エフェクターを複数組み合わせるケースが多く見られる。
いくつかの別称があり、録音ではアウトボードと呼ぶこともある。ギターなどの楽器専用のものについては、アタッチメントともいう場合も多い。
この項では、(エレキ)ギター用のエフェクターを主に説明するが、エレキギターにつなげる用途で作られたもので、オーソドックスなものには、次のものがある。(ストラトキャスターやマスタングなどといった機種のエレキギターについているアームも、「指では不可能な大きなビブラートをかけたり(指でのビブラートは実音とシャープした音の繰り返しであるのに比べ、アームを使用したビブラートは一般的には実音とフラットした音、機構に機械的負荷をかけるのを承知で行う場合には実音+シャープした音、また、それら全てを組み合わせたビブラートも可能)」、「ギター最低音域である6弦の開放弦の音よりも低い音」を出したり、「ノイズ中心の効果音を出す」などの目的を持った「アタッチメントの一種」とはいえるが、ここでの冒頭の定義の内容から、キーボードなどのベンダーやペダル等同様、除外させていただく。)
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[編集] 音を歪ませる用途のもの
「歪ませる(ひずませる)」と読む。 楽器を繋ぐアンプの種類・音量設定などにかかわらず、任意で歪んだ音色を得る。 回路方式・使用素子の種類は多種多様で、真空管、各種トランジスタ、IC(集積回路)などが用いられる。
[編集] ブースター
楽器からの信号を楽器用アンプに入力する前に電気的に増幅(ブースト boost)し、より大きな音量を得るもの。 エレキの最も初期から存在する簡素なエフェクターである。全帯域を均等に増幅するものを基本として、中音域/高域を強調するもの・低域を強調するものなど、帯域別に特化されたものもあり、音量を上げるだけでなく楽器用アンプをより歪ませる目的でも用いられる。 形態として、足元に置くタイプ・最初からギターに内蔵されているもの・後付け(加工)でギターに内蔵するもの・出力ジャックに直接取り付けするもの、などがある。現在では、後述のオーバードライブを調整することで兼用される場合が多い。 また、グラフィックイコライザーに於いても同様の使い方をすることが可能である。
[編集] ファズ
1960年代中頃に一般化した最初のエフェクターのひとつ。特に当時のロック音楽に多く用いられ、ジミ・ヘンドリックスなどが大々的に使用したことで有名。当時の楽曲に於いては、エレクトリックベースやボーカルなどにも使用された。効果は、倍音が著しく強調され、調整によって耳に刺激的、あるいは濁った音色で、ファズ(fuzz=毛羽立った)という名前もそれに由来する。より扱いやすいオーバードライブやディストーションに主流が取って代わられるまで、多種多様な製品が発売されている。
[編集] オーバードライブ
楽器用アンプにおいて、楽器入力側から過大な入力電圧を加えるか過大増幅になったとき、アンプの限界で飽和し、出力音が歪んでしまう(オーバードライブ overdrive 元は‘酷使’の意)。特にエレキギターにおいては歪むことで倍音が付加され、音が伸びやかになり整うことから、エレキギター‘らしい’音色形成の重要な要素であり、いきおい、ギターアンプはそのごく初期から歪み易いように設計されているものが多い。 特に真空管を使用した楽器用アンプでは最大限に近い音量を出したとき、あるいは前述のブースターを用い過大入力したときの歪み具合が好まれたが、アンプ自体に負担も大きかったため、改造・回路の工夫によって任意の音量下でも容易に歪みが得られるよう制御し易くなった製品が好まれた。オーバードライブはそれを主に半導体回路で模すことにより、エフェクターとしたものである。代表的なものは、BOSSの「OD-3」、Ibanezの「Tube Screamer」などがある。
[編集] ディストーション
オーバードライブ(overdrive)がアンプの状態を指した言葉なのに対し、ディストーション(distortion)は「歪み」そのものの意味の言葉である。 同じく歪みを得る目的のエフェクターである「ファズ」「オーバードライブ」との分類で明確な範囲決め・定義はあいまいで、まず旧来の粗野で原始的な音色の「ファズ」とは差別化し、その中で比較的マイルドで柔らかい音色が出せる方を「オーバードライブ」、より荒々しく硬質で深い歪みまで達することができる方を「ディストーション」と名づける傾向はあると思われるものの、いずれも既知の代表的製品の音色・イメージに影響を受けたネーミング次第であり、使用目的・効果・回路の種別などから見ても明確な定義は存在せず、一台でカバーする範囲が広い製品も多い。 製品としては、MXRの「Distortion+」、Procoの「RAT」などが古典。
[編集] その他
現在はエレクトリックベース専用のエフェクターも多く発売されている。 また、シンセサイザー開発以前のキーボードに主に使用される様々なエフェクターも製品化されている。
[編集] 音質を整えたり、音の減衰を減らす目的のもの
[編集] イコライザー
特にギターの場合はグラフィック・イコライザーを用いる。(ベースでは、周波数ごとに一度に強調したりカットしたりする「グラフィックイコライザー」よりも、目的の周波数を選んで調節する「パラメトリックイコライザー」が主。)使用法は、
- 特定の周波数を強調する。または、
- (特定の音域を)カットする。
- 全体的に音質を平均化させたり、音像を明確にする。
などの使用法があるが、まれに、前項のようにブーストして歪ませたり、他のギターの音をシミュレートするなどの音質そのものを変化させる場合にも用いるケースもある。ギターやベースギター、シンセサイザーに内蔵されている「トーン・コントロール」の多くも、元来の単なる高音・中音・低音の強弱操作レベルを超え、「イコライザー」といってもいいくらいの繊細でコントラストのある変化をつけられる機種や、簡単なグラフィックイコライザー内蔵の機種も多い。
[編集] コンプレッサー / リミッター
コンプレッサーは音量が予め設定した一定の値(スレッショルド:閾値)を超えた場合、音量の変化を設定した比率で減少させて、ピークのばらつきを一定範囲に抑える機材である。信号が大きくなる程一定の比率で増幅度が小さくなる回路を用いる。ギターでは、音の粒(1音ごとの強弱)をそろえる場合に用いるケースが多い。逆に、圧縮が始まるまでの時間(アタックタイム)を調節してピッキングの音を強調することもある。ギターだけでなく、オンマイクで行うヴォーカルの収音にも頻用される。また、音楽全体にかけて、できるだけ長時間大きな音量が維持される(ピークレベルメータが最大に張り付く)ように利用される事もある。
音量の最大と最小の差(ダイナミクス)が圧縮されるため、アンサンブルにおける音の突出を抑え、スレッショルドを低く、圧縮比を高くするとギターでは同じ音量が長時間維持されるので、減衰時間を伸ばすサスティナーに近い役割をする。ただし、あまり強く掛けすぎると、歪みがでたり、音質自体が変わったり、ピッキングの音が消えてオルガンの音のようになってしまう場合もある。
スレッショルドを超えたときの増幅度がスレッショルドと同じになるように設定された機材、言い換えるとスレッショルド以上の入力をスレッショルドと同程度の音量で出力する機材をリミッターと呼ぶ。コンプレッサーと機能が統合されていることが多い。動作からわかるようにほぼ同一の回路を用い、用途によって使い分けがされる。録音機の歪みを防ぐ目的、送信機の過変調を防ぐ目的、PA装置特にスピーカーの破損を防ぐ目的でも用いられる。
[編集] サスティナー
商品名はいろいろあるが、特に中高音域の音の減衰を抑えるもので、当初は歪みによる倍音やサスティーンを利用したりしたが、後には歪みをほとんど伴わないものも開発された。現在はあまり一般化せず、ディレイやコンプレッサーなどでその役割を果たす事が可能。
その他、ボリュームペダルを使用する方法もあるが、音自体を伸ばすわけではないので、本来の使用目的は後の項で述べる。また、単に歪ませることによってノイズ成分によって音に厚みやサスティーンを加えるだけではなく、倍音の成分を得るために歪ます場合もギタリストのタイプや目的によっては、稀にある。
[編集] 音質を変えたり、その他の効果を与えるもの
[編集] ワウペダル
ある商品名によって、「クライベイビー」とも呼ばれ、感情に最も近いエフェクトとして使用される事が多い。車のアクセルペダルのようなイメージで筐体につけられたエフェクト可変ポットを足で操作する事により、文字通りペダルを踏んだとおりに「ワウ・ワウ」と鳴る。踏み込んだペダル位置に応じて音質が変化し、ぎらついたり、こもったり、エリック・クラプトンがギターのトーン操作で多用したウーマントーンに近い音質や、フランク・ザッパ、マイケル・シェンカーが多用する鼻をつまんだ様な音も作ることが出来る。リズミカルに開閉させるように踏むと、ジミ・ヘンドリックスに代表されるパブリックなワウサウンドになる。ワウエフェクトをバイパスした状態で操作すると、ボリュームペダルとしての効果を得られる物も多くあるが、内部構造のギアの噛み合わせ+音色の兼ね合いによっては、使い難くなる事がしばしば発生する。筐体が共通又は良く似たボリュームペダル自体はジョージ・ハリスンがビートルズ時代に、(本人が意図したかどうかは別として)ストリングスとオルガンとの中間的な効果を狙って、ピッキングの音を消すのに使用したり、ROOM335で有名なラリー・カールトンが非常に細かくヴォリュームペダルを操作する事で有名。(ストラトキャスターなどのギターの場合、リッチー・ブラックモアなどのハードロック系ギタリストやジェフ・ベックなどのインスト系ギタリストがよく使用した、ピッキングの際にボリュームを下げ、その直後にボリュームを上げる方法もあり、同様の効果を得られるが、これは、エフェクターではないので除く。)
[編集] オートワウ
ギターのカッティングやベースギター演奏に於いて、入力する楽器音の音量に準じた、ペダル動作では不可能な細かくリズミカルな「ワウ」音を得られる。シンセサイザーにも似たようなエフェクトが内蔵されているものもあるが、タッチセンサー(鍵盤を弾く力で出力音量が変化する機能)のついたものは、鍵盤を弾く(押す)力ではなく、速度(力を入れて弾くと、鍵盤を押す速度が速くなり、軽く弾く場合はその逆になる原理)を反映して「ワウ」効果を得るものが主流。当然、「ワウ」音が入力状態で変化するキーボードの場合は、その原理に準ずる。「エンベロープフィルター」「タッチワウ」とも呼ばれる。
[編集] フェイザー
かつては「フェイズシフター」とも呼ばれた。ローズピアノなどのキーボードに用いられるレズリースピーカー(ロータリースピーカー:スピーカーを回転させることによって、音に聴感上の強弱や揺れを起こさせる)に、ギターの音を通した効果を想定した、軽めの「シュワー」という音を作り出す装置。(効果の深さやサイクルは操作可能。)クイーンの「キラークイーン」という曲のギターやピアノにも使用されている。
音色の変化は周期的なので、カッティング中心のギターにかける場合、周期を曲のテンポに合わせることでより深く躍動的な効果を得ることができる。そのため、一部の機種にはスイッチを数回叩くことでテンポを検出し、適切な周期に設定できる機能が備わっている。この機能は比較的単純なバッキングを行うレゲエバンドのギタリストに好まれている。
[編集] フランジャー
リアルタイムの音と、遅れた音の2つの波形の干渉を利用して「シュワー」という音を人工的に作り出す装置。フェイザーよりも強力で現代的な音がする。最近は、ヘビーメタル用に、歪み系のエフェクター同様、強力な効果の得られる商品が出てきている。まれにベースギターやキーボードばかりではなく、ドラムや音声に使用する場合もある。
その原型は富田勲氏がオープンリールテープレコーダーのヘッドフランジ(縁部分)に両面テープを貼ってテープに走行ムラを起こさせ得たものであるところから、この名前が付いている。
[編集] コーラス
12弦ギターのような音の効果から、艶やかな音を出すなど、幅広い音の装飾を得られるエフェクター。うまく使うと、ギター2本で弾いているような、一度の演奏でステレオ効果や複数演奏であるユニゾン効果の得られる機種も多い。仕組みは、「フランジャー」と基本的には同じで、2つの音の間隔の違いによる。さらに音の間隔を開けると、次のエフェクターになる。また、ベースに使用すると、フレットレスベースなどに顕著な、「ボワーン」という音も得られる。後述する「ピッチチェンジャー」でも聴感上は似たような効果が得られる。(「同じ波形を時間的に微妙にずらす」か、「同じ波形に対し周波数をわずかに平行に動かす=音階を微妙にずらす」かの違いである。)
コーラスは、フェイザーやフランジャーと同じくモジュレーション系のエフェクターとして取り扱われているが、フェイザーやフランジャーを使う際には基本的にエフェクトを目立つようにかけるように設定するが、コーラスはむしろ淡く、ほんのり効いているように設定するのが基本である。前二者が時としてどぎつい効果を求めて用いられるのに対して、コーラスは穏やかもしくは爽やかな効果を求めて用いられるのが常である。
やや高度な設定として、楽器から直接コーラスに入力するのではなく、いったんリバーブを通して残響音だけをコーラスに入力する方法がある。コーラスは原音がぼけやすくなることもあるが、残響音だけにコーラスの効果を与えることで原音はよりはっきりと、エフェクトのかかった音はより空間的な広がりを得ることができる。この方法をボーカルに対して採れば、実に幻想的な聴感を得ることができるため、音楽のみならずアニメーションなどでも時折用いられる。
[編集] ディレイ
リアルタイムの音と、それを遅延させて発音させることによって、反響音として聞こえる音を(時には複数)組み合わせ、音に厚みを加えたり、音の減衰を遅らせる装置。一般に、アナログ式はテープなどを使用したものからはじまり、遅延素子を利用したものが主流となり、最近のデジタルディレイは、短時間ながらも、原理的には実際の音声をサンプリングした音をセッティングされた時間や回数で取り出す方式がとられたが、最近は周波数や再生速度を変えたりなど、様々なシミュレーション機能を備えている。高価なものになると、1秒以上の実音を1秒以上開けてリピートさせたりもできるようになったため、かつてリッチー・ブラックモアやブライアン・メイが1970年代にテープエコー(または、実際の音響機器であるテープレコーダー)を改造して使用したとされる、「一人二重奏(時には三重奏)」や「音の追いかけっこ」のような、ハーモナイズを意識した演奏も不可能ではなくなり、高価なデジタル機種はあらゆる初期反響音や残響音のシミュレートも可能で、「エコー」や「リバーブ」にとって変わられた時代もあった(廊下からスタジアムなど、また、逆に反響時間の極端に短い架空のスペースなど)。また、音に聴感上の遠近感をつける際にも利用されることが多い(バスドラムやベースギター、リードボーカルが前方;キーボードやコーラスが後方;ギターやスネアドラムが中間など)。ギターにばかりではなく、あらゆる楽器や音声に利用される。が、「エコー」や「リバーブ」をシミュレートしてそれらの代用として使う場合も、反響音(エコー)、残響音(リバーブ)共に比較的実際の(元々の)音像の明確な音とはなるが、テープエコーに比べ人工的な音質は否めない。これも、操作次第では、ステレオ効果や、一度の演奏で同じ楽器を二台以上で演奏したユニゾンのように聞かせる効果も期待できる。
[編集] エコー / リバーブ
カラオケでお馴染みの、音を響かせる効果。1960年代は、テープエコー(テープで録音した音を時間差で再生して、その持続時間や音量や回数で反響効果を出すもので、アナログ・ディレイに近い)やルームエコー(実際に反響音を得るための部屋を利用するもの)が主体で、持ち運びが困難(ルームエコーに至っては不可能)であった。その後、ディスクなどの反響を利用したエコーチェンバーや、アンプ内蔵のリバーブや、それらを小型化した(主にギター専用の)エフェクターが1970年代以降、一般向けに量産された。しかし、エコー(反響音。跳ね返ってきた音で、持続時間や回数や強弱は操作可能。)やリバーブ(主として残響音を作る機器。初期反響音の操作の出来る機種もあるが、様々な残響音のシミュレートをする機器。)は、初期に於いては、かけすぎると原音の音像をぼかし、場合によっては実音をかき消してしまう場合もあり、逆に弱すぎると十分な効果の聞き取れない機種も多かった。持続時間を延ばすと音の劣化も激しく増々音像もぼやけるため、比較的扱いづらかった。そのためか、アナログ・ディレイが出はじめると一斉にギタリストはそれをメインに使い出したが、使用法によっては、音質の変化がみられた。さらに、様々な使用法が可能となったデジタル・ディレイが安価になってからは多くのギタリストが飛びつき、以前の製品を使う者も徐々に減り、一時期はエコーマシン(エコーチェンバー)にとって代わってしまい、「リバーブ」などもせいぜい、補助的に使う程度に変わっていった。
(ただし、「テープエコー」は、機能的にいってもルームエコーと同じ「実際に反響させるエコー」や「残響音として分類されるリバーブ」として分類すべきなのかは疑問がある。テープという性格からして原音より音が劣化したとしても、「一度原音を録音した後に音を遅延させて再生する」という機能からすると、(アナログ)ディレイに近い。「リバーブ」はカラオケ機器の「エコー」の効果に近く、カラオケ用のマイクに至っては「エコー」内蔵のものもある。ギターアンプなどにも「リバーブ」が内蔵されている場合も多い。現在もデジタル・リバーブなどは販売され続けている。ディレイ同様、音の遠近感を出したり残響のシミュレートをしたりする上で、高価な機種は欠かせないものとなっている。一方で、デジタルでは出せない自然な反響音の効果という面で、テープエコー支持者も多い。
[編集] オクターバー(オクターブマシーン)
商品名により多少名称は異なる。当初は、歪みを利用して実音の1オクターブ下の音をその実音にミックスさせる機材で、後に歪みのないものも開発された。ジェフ・ベックやジミー・ペイジも使用した形跡があるが、スタジオによるハーモナイザー(音の周波数を変える、当初は高価な機材)やギターシンセサイザーを使用してもさらにクリーンで強力な効果は得られるので、聞いただけでは区別は付けづらい。欠点は、初期には音の途切れがあったことで、現在はその点は克服されたが、オルガンのような音となってしまうために(単一的な効果が聴衆を飽きさせるという意味で)長時間は使えない。ただし、逆にいうなら、うまくエレキギターの演奏に活用する場合には、ジャズギターのオクターブ奏法やハモンドオルガン的な効果も単音弾きで得ることが可能。
かなり前から、上下1オクターブの音の出る「マルチオクターバー」が安価で出てきた。ピッチシフターをコンパクトにしたような安価な「ピッチチェンジャー」でも同様の効果は得られる。また、1オクターブ上の音をうまくミックスすると、音に艶やかさを加えるだけでなく、12弦ギター的な効果を得ることも可能。「コーラス」とは仕組みは異なるが、使用法によって聴感上での似た効果は十分得られる。ただし、あらゆる倍音を含むベースなどに強くかけた場合、位相が狂って聞こえるためか、「コーラス」をかけたような使い方はあっても、特に1オクターブ上の音を付加して使用されることはほとんどない。
[編集] エンハンサー
イコライザーが、実際の音の周波数をブーストしたりカットしたするのに対し、これは、音を歪ませることを利用して、上下各々の倍音を作り出して、実音にミックスするもの。似たようなシステムで倍音を作り出すエフェクターは、この項でもいくつかあるが、オクターバーや初期のサスティナーなどと異なる点は、音の効果よりも、イコライザーなどのような、音質を整えたり強調する目的のために用いる性格のものである。高音側の倍音を加える際は、音の抜けを加えたり、生き生きしたサウンドを作る。コンプレッサー(リミッター)や、ディレイ、「イコライザー」のように、トータルにかけるような使い方は少ない。分からない程度に、特定のトラックに限定して使う場合の「ピッチチェンジャー」などの使い方に近い。
[編集] ノイズを減らすために主に用いるもの
演奏段階では、
- 「グラフィック・イコライザー」で、雑音の多い周波数をカットする。
- 「ノイズゲート」などで、演奏音のない時の雑音をカットし(電流は流れている)、設定レベルを超えた音(演奏に必要な音)を出した際に音を出す方法
などがある。(コンピューターなどの「ノイズキャンセラー」などは、ステージ上のギター演奏では実用的ではないので除く。)
ただし、一部ハードロックやヘヴィメタルなどでは、ギターを歪ませることで音に厚みを出すことも行うため、ノイズもサウンドの一部と考えているかどうかは別として、あえて必要以上のノイズをカットしないケースもありうる。
[編集] その他のエフェクター
- 分類は難しいのだが、1970年代に一世を風靡したエフェクターで、ジェフ・ベック、ピーター・フランプトン、あるいは、初期のエアロスミス、中期ボンジョヴィ等で有名になった「トーキング・モジュレーター」がある。エレキギターの音を、アンプではなくパイプなどを通してプレイヤーの口の中に出音、共鳴させ、ボーカル用マイクで音を拾うシステムとなっており、ランダムな声や発音をそのままシンセ音に直結させ鍵盤の音階で出力させるボコーダーなどとは多少異なるが、同様に口の形に合わせてギターの音で話しているように聞こえる効果を持つ機材。原理として口の中に直接大きな音が流れ込む為、使用感がすこぶる悪く、使用を断念したと言う話も多い。初期の物は構造的にかなりトラブルが多かった様だが、現在ではある程度故障等が少ない物が多いようだ。音楽的に使いこなすのが難しく、楽器用アンプとは別ラインの機材群を併用しなければならない事から、現在では使う人が少なくなっている。
- (以下、商品名は様々だが)「フィードバックを得る機材」、「ビブラートやトレモロ効果をかける機材(機種によっては通常のギター奏法では不可能な、音階を変えずに音の強弱による本来のビブラートも可能)」、「ステレオ効果を出すための機材」、「エキスパンダー(音を歪ませたり、比較的音質を変えることなく音を持続させる、または、ダイナミクス等、コンプレッサーの逆の効果を得る機材。他の機材とセットになっていることが多く、単独で使われることは少ない。)」などがあるが、前述の個別に挙げた装置や機材ほど一般化してはいない。
実際は、細かく分類することが多いが、ここでは、より簡潔にした。
[編集] 特記
ただし、現在も多くのギタリストがステージ上でプレイする上で、ノイズが発生するリスクを知りながら、複数のデジタル・エフェクターが一体化したものを避け、古い操作形態の様々なエフェクターを複数台(ボードなどといった形式で)接続しているのには理由がある。観客のいないリハーサルやサウンドチェック時と多くの観客の入った本番では会場の反響など聞こえる音の状態が変わる時があり、その時々の他の楽器とのバランス、ギタリスト本人のコンディション、時にはエフェクターへの供給電圧の変化などといったアクシデントに応じて、操作を変える必要が出る場合がある。そういった場合に、プリセット式や順に操作機能やパラメーターを呼び出す従来のデジタル式のエフェクターでは即座に対応しきれない場合が多いからである。そうした現状から、デジタル式のエフェクターも、ステージ上での操作性を重要視した機種も開発されてきている。