エルネスト・アンセルメ
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エルネスト・アンセルメ(Ernest Ansermet, 1883年11月11日 - 1969年2月20日)はスイスの指揮者。
フルトヴェングラーやクレンペラーと同時代を生きた指揮者で、この二人と同じく20世紀音楽を指揮したが、非常に独特なしきたりや演奏姿勢を貫いた。ちなみに指揮者になる前の職業は数学者だった。
スイスのヴヴェー生まれ。ロマンド地域(フランス語圏)の人である。もともとは数学教授で、地方で指揮しているにすぎなかった。フランス旅行中にドビュッシーやラヴェルの面識を得て、その作品の演奏について助言を請う。第1次世界大戦中は、スイスに亡命中のストラヴィンスキーと出逢い、これが縁となってロシア音楽をライフワークとして取り組むようになる。
1918年に自分自身のオーケストラであるスイス・ロマンド管弦楽団を創設。欧米各地を幅広く演奏旅行し、難しい現代音楽の正確な演奏により一躍名を馳せる。ストラヴィンスキーの「カプリッチョ」の世界最初の録音は、指揮者にアンセルメを、ピアニストに作曲者本人を迎えて行われた。
第2次世界大戦後、アンセルメとスイス・ロマンド管弦楽団は、デッカ・レコード社との長期間にわたる契約によって世界的名声を獲得。それからアンセルメの他界まで、アンセルメ得意のレパートリーのほとんどを録音し、しばしば同じ曲目が2~3回録音されることもあった。アンセルメの解釈は、明瞭さと堂々たる風格とから称賛に値すると広く認められたが、20世紀の他の指揮者、たとえばピエール・モントゥーやストラヴィンスキー本人の解釈とは、著しく違うものだった。またアンセルメは、ストラヴィンスキーが自作を改訂する習慣に同意せず、常に初版によって演奏した。大編成から生まれる芳醇な音色美をアンセルメはとりわけ愛していた。
オネゲルやマルタンなどの、同時代のスイス系作曲家の演奏・録音は有名だが、シェーンベルクなど新ウィーン楽派の作品はことごとく避けた。著書「人間の知覚における音楽の原理 Les Fondaments de la Musique dans la Conscience Humaine」の中で、アンセルメはシェーンベルクの音楽語法が誤っていて不合理であると証明しようと試みた。(アンセルメには反ユダヤ主義の傾向があったことが、近年になって知られるようになり、ことによるとその延長上でシェーンベルクに反感を抱いた可能性がある。)
反面、アンセルメは、初めてジャズをまじめに扱ったクラシック音楽の指揮者のひとりで、1919年には、ジャズ・ミュージシャンのシドニー・ベシェ(クラリネット奏者)を称賛する記事も書いている。
アンセルメは血の気が多く、口数もきわめて多かった。イギリスではよく知られた話だが、トーマス・ビーチャムやエイドリアン・ボールトらの楽しげな口調になじんでいたイギリスの楽団員を前にして、アンセルメは口角泡を飛ばしてリハーサルを行なった。最後の録音は、象徴的なことにロンドンにおいてニュー・フィルハーモニア管弦楽団を指揮した「火の鳥」であり、そのリハーサルやセッションの録音も、アンセルメの追悼として作られた。ちなみに「火の鳥」は、日本のNHK交響楽団に客演した際にも演奏され、そちらも現在CD化されている(キング・レコード : KICC-3026)。
ジュネーヴにて死去。
アンセルメは、近代フランス音楽やロシア5人組のスペシャリストとして知られており、厖大な録音の中でも、フォーレの「レクィエム」や、ムソルグスキーの「展覧会の絵」(ラヴェル編曲)、ドビュッシーの「牧神の午後の前奏曲」、ラヴェルの「ボレロ」の録音は、古典的な名演の一つとして余命を保っている。ほかに、ドリーブやチャイコフスキー、ファリャなどのバレエ音楽や、あまり知られていないがシベリウスの交響曲や管弦楽曲も得意としていた。また、フランクとその門下の作品も得意とし、フランスの作曲家マニャールの名誉回復に取り組んだ先覚者のひとりであった。
多くのスタジオ録音はステレオ方式で制作されたが、やはりデッカ・レコードに在籍したモントゥーの場合と同じく、CD化にあたっては音質の劣化が目立ち、遺憾なことに、現在出回っているCDは、当時のレコードが聴衆に巻き起こしたのと同じような感動や印象を、現在の聞き手に対して忠実に再現しているとは言いがたい。シャルル・ミュンシュ(RCA/リヴィング・ステレオ)やジョン・バルビローリ(EMI/art)などの例に続いて、音質の向上・改善が望まれる。
先代: - |
スイス・ロマンド管弦楽団首席指揮者 1918–1967 |
次代: パウル・クレツキ |