ケイジャン
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ケイジャン(Cajun)とは「アカディア人」を意味する「アケイディアン」("Acadian")の訛りで、フランスのアカディア植民地に居住していたフランス語系の人々のうち現在のルイジアナ州に移住した人々とその子孫。アカディアのフランス系住民は18世紀半ばのフレンチ・インディアン戦争の際、イギリス国王に対する忠誠表明を拒否したため、英国植民地に強制追放(Great Upheaval)され、一部が元フランス植民地でスペイン領となったルイジアナに分散して移住した。ルイジアナ州のニューオリンズおよびルイジアナ州南部の「アケイディアナ」(Acadiana)と呼ばれる地域に定着した集団がよく知られている。1990年の国勢調査ではケイジャン人口はルイジアナ州で43万人、米国全土で60万人であった。
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[編集] 文化
多くは周囲から孤立したコミュニティーに住み、現在でもケイジャン・フレンチ(Cajun French)と呼ばれる独自のフランス語方言を話す。フランス語アカディア方言(Acadian French)をベースにフランス本土のフランス語、フランス語のケベック方言(Québec French)やハイチ方言、ハイチのクレオール語(Haitian Creole Language)、北米先住民の諸部族の言語やスペイン語、英語の語彙が混ざったものである。
[編集] 料理
ケイジャン料理とは、基本的に地元で手に入る食材を生かした、素朴でシンプルな庶民の料理である。タマネギ、セロリ、ピーマン(合わせて「聖なる三位一体」(Holy Trinity)と呼ばれる)を炒めたものを料理のベースとすることが多く、これはフランス料理のミルポワ Mirepoix と関係がある。パンやコーンブレッドも食べられるが、主食には米を多用する。ケイジャン料理の中では、肉や野菜などの具が入り、チリペッパーなど香辛料が効いた炊き込みご飯「ジャンバラヤ」や刻み野菜と魚介類、鶏肉、ソーセージ(特にアンドゥイユ、Andouilleなど)を煮込み、フィレパウダー(filé powder、ササフラスの葉を粉にしたもの)またはオクラでとろみをつけた「ガンボ(Gumbo)」などがよく知られている。エビや牡蠣(カキ)、蟹を中心に魚介類がふんだんに使われることが多く、またケイジャンは長い間自給自足せざるを得なかったため、ザリガニやアメリカアリゲーター、カエルといった土着の食材もよく使われる。
より都会的で洗練されたニューオリンズの伝統料理「クレオール料理」とは、基本的な素材や「聖なる三位一体」をはじめジャンバラヤやガンボなどいくつかの料理を共有するため、ルイジアナ州の外ではケイジャン料理はしばしばクレオール料理と混同されることが多い。ケイジャン料理の方がやや辛めであり、伝統的なケイジャン料理には高価な材料やフランス料理の技法が使われることはまずない。トマトの使用など、イタリア料理の影響も少ない。ケイジャン料理はだいたいにおいて庶民的であり、主菜を料理する鍋、主食(米やコーンブレッドなど)を調理する鍋、旬の野菜を調理する鍋の3つがあれば食事ができるといわれる。
外国からの移民が持ち込んだ料理以外は、バーベキューとフライドチキン、ハンバーガーぐらいしかアメリカ独自のものはなく、まともな料理はないと思われがちなアメリカだが、こと南部料理、特にケイジャン料理に関しては、美味なことで有名である。
[編集] 音楽
ルイジアナ州に定住したフランス系移民、ケイジャンによって始められたダンス音楽。主にアコーディオンとフィドル(バイオリン)を入れたバンドで演奏され、歌詞はフランス語で歌われることが多い。代表的なアーティストとしてはボーソレイユ、サヴォア・ファミリー、バルファ・ブラザーズ、スティーヴ・ライリー&ザ・マムー・プレイボーイズなどが挙げられる。一方同じルイジアナには、黒人達が演奏する、ザディコ(w: Zydeco)という音楽も存在し、これもケイジャン同様アコーディオンがメインの楽器となっているが、ザディコには通常フィドルは入らず、その代わりにパーカッションの役目を果たすラブボード(洗濯板が楽器に変化したもの)が使われる。ケイジャン・ミュージックとザディコはお互い影響を受け合いながら歩んできており、今日ではウェイン・トゥープスのように両者のクロスオーバー的なサウンドを狙うアーティストも存在する。
[編集] 関連項目
カテゴリ: 民族集団 | 北米の食文化 | アメリカ合衆国南部の食文化