ジェット機
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ジェット機(じぇっとき)とは、ジェットエンジンが発生した推力で飛行する飛行機である。
ジェットエンジンにはターボプロップエンジンも含まれるが、ターボプロップエンジンでプロペラを駆動する飛行機は一般にプロペラ機に分類される。一方、高バイパス比のターボファンエンジンは推力のほとんどを燃焼ガスによるジェット噴流ではなくエンジン前方のファンによって得るが、この場合はジェット機に分類される。
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[編集] 歴史
[編集] 黎明期
世界初のジェット機はドイツでハインケル社によって開発されたHe 178である。初飛行は、1939年8月24日に数m上昇したときだというものと、8月27日に本格周回飛行をしたときだというものの、二つの見解がある。だがこの機体は結局政治的圧力により採用されなかった。
初めて実用化されたのはメッサーシュミット社の双発戦闘機、Me 262である。この機体は1944年に実戦配備されたが、すでに劣勢にあったドイツの戦況を覆すには至らなかった。Me 262の技術は日本にも運ばれており、橘花という名前で特別攻撃機(特攻兵器)として開発され、1945年8月7日に初飛行に成功したが終戦により実用化には至らなかった。
[編集] エンジンの種類
詳しくはジェットエンジンを参照。
初期のジェット機のエンジンはバイパスの無いターボジェットエンジンがほとんどであった。2004年現在、純粋なジェットエンジン(ピュアジェット)はほぼ姿を消したが、戦闘機などの小型超音速機においては低バイパス比のターボファンエンジンを搭載している。
民間旅客機に代表される亜音速大型機は、高亜音速での効率の高さから高バイパス比のターボファンエンジンを用いるのが主流である。例外としては、2003年に運用が停止された超音速旅客機コンコルドが挙げられる。コンコルドはアフターバーナーを備えたターボジェットエンジンを4発搭載していた。
[編集] エンジン数
飛行機のエンジンは、エンジンに着目した場合に、1基、2基、3基...と数え、飛行機に着目した場合には、1発(または単発)、2発(または双発)、3発、4発...と数えることが多い。
エンジンの搭載数は、小型機(戦闘機、ビジネス機など)では単発か双発である場合が多く、長距離を飛ぶ大型旅客機では双発、3発、4発搭載のいずれかがほとんどである。
大型旅客機が3発、4発など多数のエンジンを持つ理由は、飛行中の万一のエンジン故障を想定しているためである。双発機にはエンジンが1基止まった場合60分以内に緊急着陸可能な空港がある航路のみを運行できるという規則が存在する。このため双発機では太平洋や大西洋などの広い海を横断する航路が設定できないなど、運行上の制約ができてしまう。すなわち3発以上のエンジン搭載は冗長性による信頼性確保を目的としている。しかし近年ではエンジン単体の信頼性が向上したため、双発機でも外洋を航行できるようになっている。
さらに多くのエンジンを搭載する飛行機として、アントノフ An-225 とボーイング B-47の6発や、ボーイング B-52の8発があるが、こうした場合はパイロン1つごとに小型エンジン2基をセットにしていることが多い。
[編集] エンジン配置
ジェット機において、ジェットエンジンの配置方法は主に以下の3種類に分類される。
- 主翼下パイロン懸架方式
- 胴体後部側方配置方式
- 主翼内あるいは胴体内埋め込み方式
[編集] 主翼下パイロン懸架方式
旅客機等の大型機では、偶数エンジン数の場合、主翼下パイロン懸架方式が主流となっている。MD-11 のような3発機の場合、主翼下パイロン懸架2発と胴体後部(垂直尾翼下)1発配置となる。
この方式には以下のような特徴がある:
- 利点:
- エンジンという重量の大きなものを機体重心近くに置くことができる
- 主翼に釣り下げさせることにより、飛行中に主翼に生ずる揚力によって翼付け根に加わる、曲げモーメントを緩和させることが出来る
- 欠点:
- エンジンと地上とのクリアランスを取るために、脚の長い降着装置が必要となり、重量が増加する
- 主翼に集中質量があることによる主翼のフラッタ特性の悪化
[編集] 胴体後部側方配置方式
主翼下パイロン懸架方式以外に多いのは胴体後部側方配置形態である。プロペラのないジェットエンジンのコンパクトさに着目した手法で、1955年のフランス製双発旅客機シュド カラベルが最初の例である。大型機ではイギリスのVC-10やロシア製の機体で見られるが、それ以外はコミューター機や小型ビジネスジェット機のサイズでしばしば採用される。
この方式には以下のような特徴がある:
- 利点:
- 主翼がクリアになることにより主翼の空力特性が向上する
- 短い降着装置で済むので降着装置の重量が軽減出来る
→小型機には都合がいい形態である
- 欠点:
- 重量が機体後部に集中することから、重心が後方になってしまう
- エンジンが胴体と直接的に接するためにエンジン振動及び騒音がキャビン内に伝わり易い
[編集] 主翼内あるいは胴体内埋め込み方式
また、主翼付け根にジェットエンジンを埋め込ませた方式を取る機体もわずかながら存在する(デハヴィランド コメットをベースにしたニムロッドなど)。
ステルス 爆撃機として有名な全翼機、B-2も機体内部に半分埋め込むような形になっている。
[編集] その他の配置
特殊なジェットエンジン配置方式としては、主翼上面にパイロン状のストラットで支持した方式がある。これを採用しているのは、ドイツ製の VFW 614 や、2004年に飛行試験を実施したホンダジェットなどがある。この方式の特徴として以下のようなものが挙げられる:
- 利点:
- 主翼下パイロン懸架方式と同様に、機体重心を機体中心近くに置くことができる
- 主翼上に支持させることにより、飛行中に主翼に生ずる揚力によって翼付け根に加わる、曲げモーメントを緩和させることが出来る
- 主翼下がクリアになるため、降着装置が短くて済み、降着装置重量が軽減出来る
- ウォーターラインでの重心位置近くに推力線を置くことが出来る(低翼の場合)
- 欠点:
- 主翼上面にエンジンナセルがあることにより、翼上面の圧力分布の乱れに伴う揚力分布の悪化
- 主翼に集中質量があることによる主翼のフラッタ特性の悪化
- 胴体とエンジンナセル間がチャネルフローになり、この部分の空力特性把握が難しい
- 民間機の場合、主翼近くの乗客の視野が狭まったり、近くにエンジンがあることによる心理的影響が否定出来ない(低翼の場合)
[編集] スラストリバーサ
大型のジェット機ではスラストリバーサ(thrust reverser、または逆推力装置、逆噴射装置)を装備している場合が多い。スラストリバーサはエンジンの噴気の向きを前面斜め方向に変えることにより、逆向きの推力を生み出す働きがある。主に着陸時の制動距離を短縮するために使用される。日本ではまず見られることはないが、トーイングカーのプッシュバックによらない自力での後退(パワーバックと呼ぶ)に用いられる場合がある。
ターボジェットエンジンや低バイパス比ターボファンエンジンでは、エンジンの排気を直接遮る形式、高バイパス比ターボファンエンジンにおいては、ファンを通った空気だけを遮る形式のスラストリバーサが用いられる。
なおプロペラ機におけるスラストリバーサはプロペラのピッチを逆転することにより実現されている。
[編集] エアインテイク
ジェット機においては、エアインテイク(空気取り入れ口)が重要な設計要素になる場合がある。特にエンジンを胴体に埋め込むコンフィギュレーションを採用した場合、エアインテイクの数、機体に対する配置、形状、ダクトの形状が要求される飛行機の性能を左右する。
複数発搭載の場合の機体ではふつうエンジン数とエアインテイク数は一致するが、BAC ライトニングのように双発にも関わらずエアインテイクが1つと言う例もある。また、単発機の場合ではエアインテイクが2つという形態もしばしば見られる(F-104 や JAS 39 グリペンなど)。エアインテイクの配置も、機首前方や胴体の左右に置かれる場合が多かったが、昨今の小型高性能戦闘機は、高迎え角飛行でも空気の流入が比較的得やすい胴体下に設置される場合が多くなっている(F-16など)。(2004年現在)